政宗九

書店員。ミステリマニア。HKT48&STU48箱推し。

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最近の記事

最近の中公文庫の「渋いミステリセレクション」が素晴らしい

ども。政宗九です。 今日は軽いネタで、皆さんのご機嫌をうかがいます。 書店で仕事していると、日々の新刊が連日たくさん入ってくるので、すぐにはい次、ってな感じになって流れ作業になりがちなんですが、 時々立ち止まって吟味することも大事かな、と最近思っています。 特に文庫は、どこの出版社も毎月のようにたくさん出されることが多いので、一カ月経つともう次の新刊が出て流れていくものですが、ふと立ち止まって、あれ、なかなかいい本を文庫で出してたな、と感慨にふけります。 そんな中、ミステ

    • 話題の時代小説、白蔵盈太『実は、拙者は。』をミステリ的な視点で読んでみた

      ご無沙汰しております。 このnoteを「本のネタ」を書くところだと自分でハードルを上げていたためなかなか書けなかったのですが、単純に本の感想でもいいかな、と思い始めたので、これからそういった記事も書いていきますね。 今売れている話題の時代小説文庫がありまして、 白蔵盈太さんの『実は、拙者は。』(双葉文庫)です。 2024年5月の新刊ですが、重版に重版を重ねているらしくて、確かによく売れてます。 で、この本、そのタイトルや粗筋からして、これミステリでは? と思ってたので、実

      • 「新潮文庫の100冊」は今でも「想像力と数百円」なのか検証

        今年も夏の文庫フェアのシーズンがやってきた。 新潮社・KADOKAWA・集英社の今年のフェア紹介冊子がこちら。 新潮社は数年前からの謎のロボットキャラクター「キュンタ」、集英社もここ3年くらい続いている可愛らしい猫の「よまにゃ」がイメージキャラクターを務めている。 KADOKAWAは今年から新たに「カドイカさん」というキャラが出てきた。ぶっちゃけ、ス×ラトゥーンっぽい雰囲気をかなり感じるが、ここはキャラクターを論じる投稿ではない。 私はもう夏フェアからなにかを選んで読む、

        • 本屋大賞2023での私の投票まとめ

          2023年の本屋大賞が4/12に発表された。 ご存じの通りで、凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』(講談社)が選ばれた。 本屋大賞の発表式にも4年ぶりに参加できた。 本屋大賞の詳細については、「本の雑誌増刊 本屋大賞2023」にまとめられているのでぜひチェックして欲しい。昔からずっと言っているが、この誌面全てが真の本屋大賞なのである。たった一人しか投票していない作品でも、そこに載った熱いコメントを読むことが本屋大賞なのだから。 さて、この記事では、今年の本屋大賞における私の「

        • 最近の中公文庫の「渋いミステリセレクション」が素晴らしい

        • 話題の時代小説、白蔵盈太『実は、拙者は。』をミステリ的な視点で読んでみた

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        • 本屋大賞2023での私の投票まとめ

          本屋大賞20年の個人的な思い出

          本屋大賞は今年で20周年だ。 私も第1回目から投票に参加し、第2回目からは発表式にも参加している。ここ3年はコロナでそれも叶わなかったが、今年2023年は4年ぶりに参加できそうだ。 投票皆勤賞なだけで一参加者に過ぎないのだが、その視点からの思い出を簡単に残しておこうと思う。細かいことを書けばきりがないので、ざっくりとしたものだ。 第1回(2004年) 「本の雑誌」で本屋大賞の開催を知ったのだが、それは私が気づいたのではなく、確か師匠(故・児玉憲宗さん)から「こんなのが

          本屋大賞20年の個人的な思い出

          講談社ノベルス「乱歩賞SPECIAL」のまとめ

          ミステリの叢書シリーズを紹介するシリーズ。以前、第一弾として文藝春秋「本格ミステリ・マスターズ」を紹介した。 第二弾の今回は、急にマニアックになってしまうが、講談社ノベルスの「乱歩賞SPECIAL」を紹介したい。 あまりにもマニアックすぎて、Wikipediaにも紹介ページがないため、調べるのに若干苦労した。私の認識不足による間違いもあるかも知れないのでご了承いただきたい。 調べたところ、1984年9月から、1985年3月にかけて、隔月で講談社ノベルスから発売されたシリー

          講談社ノベルス「乱歩賞SPECIAL」のまとめ

          「小説丸」(小学館)の書店員コラムで紹介した作品まとめ

          2021年より、小学館のWEBサイト「小説丸」で、書店員のリレーコラムをやっている。「週末は書店へ行こう!」というタイトルだ。 8名の書店員が毎週1冊ずつ新刊を紹介するのがメインで、関連で「あわせて読みたい本」と「おすすめの小学館文庫」を、これも毎回1冊ずつ挙げている。8名がローテーションを組んでいるので、8週おき、およそ2か月に一回順番が回ってくる。 ありがたいことに、その8名の中に入れていただいていた。 このたび、9回目のコラムが掲載され、私の担当回が終了した。 お連れ

          「小説丸」(小学館)の書店員コラムで紹介した作品まとめ

          小川哲『君のクイズ』きっかけで振り返る、私のTVクイズ視聴歴(なお出演経験はない)

          小川哲さん『君のクイズ』(朝日新聞出版)を読んだ。 傑作である。 クイズ番組「Q-1グランプリ」の決勝、これで一千万円の行方が決まる、という最後の問題で、「問題ーー」と言った瞬間、ライバルの本庄絆が解答ボタンを押した。 「ママ. クリーニング小野寺よ」 で正解、本庄が優勝する。 前代未聞、驚異の「ゼロ文字解答」だ。 三島玲央は、この番組をVTRで振り返り、この問題がヤラセだったのか、本庄の実力だったのかを検証する。検証するうち、自らの人生経験がクイズの解答に活かされてい

          小川哲『君のクイズ』きっかけで振り返る、私のTVクイズ視聴歴(なお出演経験はない)

          文藝春秋「本格ミステリ・マスターズ」のまとめ

          昔から「叢書・シリーズ」が大好きだ。 単発の単行本ではなく、テーマ性やジャンルを統一させて、同じレーベルで出版されるものだ。装丁・デザインが統一されているので、本棚に並べると綺麗で実にカッコいい。 ミステリのジャンルで言うと、1980年代あたりから、ミステリの叢書レーベルがたくさん出てきた。そういうのをまとめたページを作ってみたいと、かねてより思っていた。Wikipediaにまとめられているものも多いのだが(実際、このシリーズではまずWikipediaを参考にしていくつもりだ

          文藝春秋「本格ミステリ・マスターズ」のまとめ

          ミステリマニアにこそお薦めしたいQuizKnock動画7選(2022年8月現在)

          2021年に突然、QuizKnock動画にハマって、およそ1年。今では毎日、何度でも繰り返し観ているチャンネルのひとつだ。 QuizKnockそのものは、かなり以前から知っていたのだが、それは「東大クイズ王・伊沢拓司さんがやっているクイズ専門のチャンネル」くらいの知識しかなかった。他のメンバーのことはもちろん、どういう動画をアップされているのか、全く知らなかった。 2020年の年末に、角川文庫が「カドキング」という年末年始フェアを開催した。 私は書店員であり、文庫も担当し

          ミステリマニアにこそお薦めしたいQuizKnock動画7選(2022年8月現在)

          政宗九セレクト「西村京太郎トラベルミステリーベスト5」

          2022年3月に91歳で亡くなられた西村京太郎さん。 列車を舞台にした「トラベルミステリー」を中心に多くの読者に親しまれたことは有名です。 また、ミステリファンにとっても、特にトラベルミステリー発表前に発表された作品に名作が多いことでも知られています。 西村京太郎さんの作品世界をまとめたムック『西村京太郎の推理世界』が文藝春秋から発売されており、西村さんの作品についてや、貴重な記事がたくさん収録されています。全作品647作品の完全リストなど資料もすごいです。 『(文春ムッ

          政宗九セレクト「西村京太郎トラベルミステリーベスト5」

          政宗九セレクト 2022年上半期この10冊

          早くも2022年の後半に入った。 最近は自分で読書記録をきちんと残さなくなってしまった(単にズボラだから、bookmeterとかもやってるのについスルーしてしまうのだ)ので、時々、自分の読書を振り返って、面白かったものをピックアップしておかなければと思う。 というわけで、2022年上半期に読んだ本から、ベスト10をランキング形式で挙げていこう。 第10位 真下みこと『茜さす日に嘘を隠して』/青羽悠『青く滲んだ月の行方』講談社 2冊セットで第10位。同じ小説世界を女性の視

          政宗九セレクト 2022年上半期この10冊

          昔書いていた「読書ノート」が文章訓練になった話

          昔、読書ノートを書いていたことがある。 1988年ごろから始めていたはずだ。 はず、というのは、最初に感想を書いた作品を明確に覚えているからだ。 コーネル・ウールリッチの絶筆にローレンス・ブロックが続きを書いて完成させた『夜の闇の中へ』だった。早川書房の「ミステリアス・プレス」レーベルの第一弾だった。もちろんハードカバーの方だ。 綾辻行人さんは『水車館の殺人』か『迷路館の殺人』から感想を書いていたと思う。 偉そうに「文章」「プロット」などの項目でポイントを付け、5項目1

          昔書いていた「読書ノート」が文章訓練になった話

          狭くて深かった読書範囲を広げてくれた「本屋大賞」という存在について

          (2022年註:これは私が2012年にfacebookで投稿していた文章を転載したものだ。転載にあたり、一部構成を改め、不自然な箇所を修正した。また、新たに註を追加している。 ちょうど十年前の今日投稿されていたため「思い出」として流れたものだが、今読んでも全く考えに変わりないと思ったので、転載する次第である) 自分は昔も今もミステリマニアだが、ほんの10年ほど前までは、「ミステリしか読まないマニア」だった。一般的な小説(純文学や恋愛小説、青春小説など、どこまでどうか分からな

          狭くて深かった読書範囲を広げてくれた「本屋大賞」という存在について

          本屋大賞2022、私の一次投票

          2022年4月6日(水)、本屋大賞が発表された。 逢坂冬馬さんの『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)である。おめでとうございます。 昨今の国際情勢に絡めた紹介もされており、今、全国の書店で恐ろしいほど売れている。 著者の逢坂さんの心境はいかがなのだろう、と思っていたが、本屋大賞発表式のスピーチでその思いを述べられた。本当に素晴らしいスピーチなのでぜひ触れてみて欲しい。今なら全文が読める。 本屋大賞の投票結果をまとめた本の雑誌増刊の「本屋大賞2022」(本の雑誌社)によると、

          本屋大賞2022、私の一次投票

          【再録】中川右介『国家と音楽家』レビュー

          中川右介さんの『国家と音楽家』が集英社から文庫版で出た。 中川右介『国家と音楽家』(集英社文庫)※HonyaClub商品ページ 親本は2013年に七ツ森書館から出た作品だが、親本発売当時に、私は本書のレビューを「図書新聞」に寄稿していた。 ここでは、そのレビューを再録する。 これがきっかけで、『国家と音楽家』に興味を持っていただけると、とても嬉しい。 ======================= 戦争と革命を生きた音楽家たち/『国家と音楽家』中川右介(七つ森書館)

          【再録】中川右介『国家と音楽家』レビュー