狭くて深かった読書範囲を広げてくれた「本屋大賞」という存在について
(2022年註:これは私が2012年にfacebookで投稿していた文章を転載したものだ。転載にあたり、一部構成を改め、不自然な箇所を修正した。また、新たに註を追加している。
ちょうど十年前の今日投稿されていたため「思い出」として流れたものだが、今読んでも全く考えに変わりないと思ったので、転載する次第である)
自分は昔も今もミステリマニアだが、ほんの10年ほど前までは、「ミステリしか読まないマニア」だった。一般的な小説(純文学や恋愛小説、青春小説など、どこまでどうか分からないけどとにかくミステリではないもの)は全く、本当に一切読まなかった。
村上春樹は読んだことなかったし、村上龍はいくつか読んだが、ミステリ色のある作品だけだった。
井上ひさしで読んだのは『四捨五入殺人事件』と『十二人の手紙』(大傑作!)だけ。
(2022年註:それから約8年後に、自分のコメントがきっかけとなって『十二人の手紙』が大ヒットすることになろうとは思わなかった)
「十二人の手紙」(中公文庫)、40年の歳月を経てブレイク
福永武彦は知らないくせに、加田怜太郎は読んでいた。
坂口安吾といえば『不連続殺人事件』の人だし、谷崎潤一郎といえば『途上』の人だった。
そんな狭くて深い読書傾向を広げてくれたのは、もう絶対に間違いなく、「本屋大賞」なのだった。
投票には第一回目から参加しているが、よしもとばななも角田光代も小川洋子も、本屋大賞がなければまず読んでいない作家だと思う。そして、こんな素晴らしい作品があるのか、と新たな発見をもたらしてくれた。
今や大きくなりすぎて、やたらと批判に晒される本屋大賞だが、私の読書人生に革命を起こした企画こそが本屋大賞だったと確信している。
今でも私のように「ミステリしか読まない読者」「SFしか読まない読者」「恋愛小説しか読まない読者」は意外と多いのではないかと思う。本屋大賞やノミネート作、または「本屋大賞」別冊に掲載されている作品を基準にしていけば、読書生活がさらに充実するだろうことを保証したい。
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