「ことば」に出合う
この情勢になってから、殆ど新聞を読んでいない。その時間をできる限り、本を読むことに当てている。大切にしたい“志”は、知識や情報を得ることではなく、感性溢れる「ことば」に出合い、それらをもとに自己対話することである。自分では用いたことのないことばの数々。昨年は「紡ぐ」を頻繁に使ってきたが、今年に入り直感的に「織りなす」が琴線に触れたのでたくさん使いそうな予感である。それにしても、どちらも“糸”に通ずる。前世は織物職人だったのかもしれないが、もともと内側に秘めていて、心地よい形で表現され始めている気がする。
中島みゆきさんが歌う曲『糸』は何度聴いても痺れるが、ここにもこの言葉“織りなす”が登場してくる。そして、曲の締め括りは「縦の糸はあなた、横の糸は私。逢うべき糸に出逢えることを人は仕合せと呼びます」なのだが、“幸せ”ではなく“仕合せ”であり、この言葉も好きで意図的によく使う。(因みに、織物生地では、経(タテ)糸、緯(ヨコ)糸が正式らしい。地図の経度、緯度と同じ。)
私の人生の羅針盤ともいえる書店「読書のすすめ」の清水店長は、執行草舟氏の『生くる』という本に出合ってから、「縦糸の読書」と「横糸の読書」という言い方を用いる。前者は時代が変わっても変わらない知恵であり、後者はその時代の流行であったりその時代にしか通用しない道徳であったり、時代が変わったら善であったものが簡単に悪になってしまうような知恵のことを指す。これからの時代は、すぐに答えが手に入るようなノウハウ本を読むのではなく、「縦糸の読書」をすることを強く推奨している。これは5年間本を読んできて、真に実感するし、日頃から皆さんに伝えたいことである。
人間は細胞を刻々と新しくするがゆえに、昨日の自分と今の自分とは厳密には同じとは言えない。地球の自転は体感できないが、日々速度は遅くなっている。こう考えると、単調な繰り返しで起こっている事物など存在し得ないのだろう。平坦ではなく、ゆらぎのあるリズムの中を流れているのだ。だからこそ、毎回のことが新しいものであると受け止めたらどうだろうか。言葉を発するという行為は単なる物理的現象かもしれないが、その言葉に乗せる想いや念(エネルギー)は異なり、それは受け止め方に左右する。大切だなと思って繰り返す行動としての「挨拶」は蔑ろに展開されがちだが、大事な人の名前をこころを込めて呼ぶようなあり方で発さなければ受け取り側にはきっと届かないのだろう。
センジュ出版代表取締役の方に、“大事な一人に花束を届けるような気持ちで、文章を書くこと”と教えられた。好きな人にプレゼントするときに、曖昧な形では選ばないはずだ。想いを届けようと、必死になるだろう。それと同じ気持ちで、たった一人に向けて言葉を紡ぐように書かないと、受け取り手に想いはなかなか通じない。たとえ同じ言葉を使っていたとしても。
勝海舟の観念ともいえる「読古人書、友天下士」に従い、今年も良き書物に出合えたら本望である。そして、ヘミングウェイの言葉「ただ動いているだけでは、行動とは言えない」を教えとして生かし、大事な人へ贈り物を届けるかのように、一つ一つのことを丁寧に織りなしていきたい。
♬M.M. の「哲学対話P4S」コーナー♬
〇どうしたら勉強は楽しいと思えるか。
私にとって勉強の楽しさは、好きな番組を観るのと同レベル。それくらい楽しさを見出せたらいいですが、なかなか難しいですよね。現に、高校時代で苦手な科目を殆どやらずにいた人間が偉そうには言えません(笑)何がきっかけでもいいのですが、好きな科目が一つあれば流れて、いつか花開きます。きっかけはたとえば、テストで高得点をとる、担当者に興味がある、内容が魅力的など。今、どんなことでも知ることができるのは、すごくワクワクします。
〇集中力を保つためにはどのようにすればよいか。
そのような方法はありません(笑)どんなに凄い人であっても、せいぜい15分程度です。人間の脳の性質上、仕方がないことなのです。では、なぜ集中しているように見えるのでしょう。それは、見せかけているだけなのです。そう、集中しているフリ。気分は揺らぐ流れであり波だから山あり谷あり。調子がいいときは誰でもノリノリ。調子が良くないときに、それなりにできるかどうかが鍵なのです。いくら好きなことをやっていても疲れます。因みに、入試レベルの数学を120分解くとしたら、集中という波は何度も繰り返されているのです。でも、苦手だと思うことを120分やるのはかなり苦痛でしょ。つまり、継続性とあなたに集中力があるかないかはそもそも関係ないのですよ。
〇この情勢が収まったら、何をしたいですか。
家族で旅行・外食?、書店「読書のすすめ」に行く、リアルで読書会・勉強会(知人に会いに行く)
〇生まれ変わったら何なりたいですか。
人間。もっと言うなら自分。ただ、女性になりたい憧れはあります。
〇おじいちゃんになったら何をして暮らしたいか。
『りんどう珈琲』のマスター宜しく、静謐な場所で珈琲を淹れ、のんびり本を読みたいです。
〇漫画『BLEACH』について語ってください。(其の一) 座右の銘は何ですか。
元十二番隊隊長浦原喜助の言葉「役に立つ“かも知れないと思った”んス。だから“備えた”。 千の備えで一使えれば上等。可能性あるものは全て残らず備えておく。それがアタシのやり方です。」は、今にとっては座右の銘というか、教訓としています。
〇食のこだわりは何かありますか。
どの店で買ったか、高いものとか、そういうことにはあまり拘らず、いただけることに感謝していています。だから、美味しくいただくことに拘っています。
谷川俊太郎著『しんでくれた』という絵本は、本当に大切なこころを教えてくれます。
〇なぜ学歴だけがすべてみたいな人がいるのか。
そのとおりですね。大手企業の就職を考えても、学歴が重視されているように見えます。でも、それはどうしてか考えてみましょう。有名大学に入るために、大半の人はそれ相応の努力をしたからこそ合格を勝ち取っているはずです。その人本来の努力が買われている部分もあるのに、結果的に学歴重視されているように見えますね。勿論、レッテルや肩書きに揺れ動かされているのも事実です。自分がやりたいことをやって、その道で頑張れるのが一番だとは思っています。なお、私は学歴を重視しているわけではありませんから、国公立大学合格者数は気にしていません。あしからず。
学歴社会に自らが陥らないために、物事の批判により自分を正当化するという、これと同類のスパイラルに陥らないように、どういう自分でありたいかを真に見つめ直していきたいですね。
2022.1.14