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映画の話

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プレイリストも見る/シビル・ウォー アメリカ最後の日

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(以下『シビル・ウォー』)を見て、音楽が浮いていると思った。  映画でかかる音楽いわゆる劇伴には、二つの種類がある。  一つはその映画のために書き下ろされるオリジナルスコア。たとえば『スターウォーズ』における「帝国のテーマ」、『ゾンビーバー』における「ゾンビーバーのテーマ」などがこちらに当たる。  対するもう一つの形は、その映画のために作られたわけではない既存の楽曲を転用するという手法。宇宙を旅するスペースオペラでありながら地球のポップソ

スプレッドシートから映画はしごスケジュール提案ページを作るぞ!

 作りました。  正確な仕様はJR川崎駅周辺の三劇場における毎週水曜日の上映スケジュールからはしご可能な映画を提案、もしくは選択した二本の映画ではしご可能な上映回の組み合わせを提案するページになりました。諸々の制限は労力の問題です。  さもチャット風に表示していますがタイトルの通りスプレッドシートから入力したデータであり、全通りの組み合わせから該当のセルを呼び出しているだけです。会話どころかここでは計算すらしていない。ごっこ遊びの実用に支障はないでしょう。  以下に製作

全国共通箱男ランキング

 箱、被りたいですよね。被りたい、被りたい、被りたいなあ。  2024年8月、安部公房(1924-1993)による同名小説を原作とした映画『箱男』(監督:石井岳龍)の全国劇場でのロードショーが始まりました。WOW!  安部公房といえば国語便覧にも載っている近代文学の代表作家であり「ノーベル文学賞に最も近い人物、と評されながら急死」「代表作『砂の女』はソ連でもヒット。インテリ層は読む用と並べる用で二冊買った」「日本人として最初期にワープロNWP-10Nでの執筆を行った一人」

雑記:新宿って映画館が多すぎるかも2024

新宿武蔵野館 開館:1920年(2016年まで複数回の移転・リニューアル) スクリーン数:3 総座席数:301 運営:武蔵野興業 傾向:国内外のややマイナー作品が並ぶ。上映作ごとに変わる内装とアクアリウムが爆イケ。リバイバルや監督特集などイベント上映も多い。 新宿シネマカリテ 開館:2012年 スクリーン数:2 総座席数:174 運営:武蔵野興業 傾向:武蔵野館の姉妹館。内容も内装も近い。おそらくJR新宿から最駅近(徒歩2分、走れば30秒)。カリテ・ファンタスティック

夏2023身に余る

記2305

オリジナルTVアニメ「Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふー」SPECIAL EVENT ~でっかい・いべんと・やってみよう!~  オリジナルTVアニメ「Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふー」SPECIAL EVENT ~でっかい・いべんと・やってみよう!~ 夜の部 を観覧しました。最高のタイトル。一番良いアニメイベント。  イベント本編の構成はライブパート→DIYしながらのトーク→生アフレコ(収録時は全員揃うことがな

ストーリー・オブ・ザ・イヤー 2021

 そういうものをやる記事です。規定は緩く、創作物として発表された物であれば何でもあり。範囲は前年分の翌日2020年12月30日から記事投稿の前日2021年12月30日までに、私自身が触れた作品とします。よろしくお願いします。 ストーリー・オブ・ザ・イヤー2021  ベイビーわるきゅーれ (映画/監督:阪元裕吾/劇場鑑賞)  まず明記しておきますが、本稿の半分は映画の話です。興味を向けることが習慣化しているというか、基本姿勢として映画館で見る行為が好きなんだと思います。仕方

だけど、らら、ラグナロク/史上最高の映画『ベイビーわるきゅーれ』

こんにちは。完璧なものは無いですね。どれほど素晴らしい物事・現象にも瑕疵の一面があり、人間にいたっては自前の昼食選びすらままならない有様。夏は最高の季節ですが生きるには暑すぎるし、冬は服の可愛さ以外に何も良いことがない。春と秋は一年で二週間ぐらいしかない。不完全にこそ美が見えることもありますが、そんなのしゃらくせえときもあります。 どうしても欠点が嫌なら意識から排除して良いところに集中するか……別の不全の個で補うしかない。そして個と個を合わせるのなら、補い合う関係が望ましい。

映画雑記(2021年上半期):去る者と残るもの

本稿は以下の映画作品のネタバレ(予告編やあらすじ以上の内容言及)をする可能性があります。ご注意ください。 該当タイトル:『ノマドランド』『ヤクザと家族 The Family』『砕け散るところを見せてあげる』『佐々木、イン、マイマイン』『くれなずめ』 劇場で新作映画を見る楽しみの一つに、無関係な作品から共通する要素を見出す遊びがあります。遊びです。公開時期が近いとはいえ個々の作品は製作期間が違うため、流行などを探れるわけでもありません。思い出作りですね。 たとえば2019年

極道はここに果てるか。『ヤクザと家族 The Family』

ヤクザ。フィクションではお馴染みの存在です。 国内では男気の象徴から時代遅れで滑稽な集団まで、時代とニーズに合わせて活躍。海外に目を向ければ、悪役・切られ役のジャパニーズ・ヤクザはアクション映画の定番です。細身のスーツ、こけた頬、薄いサングラス。ドスにチャカにダイナマイト。屋敷に置いて良し高層ビルに立たせて良し廃墟に転がして良し、ヤクを打ったりキメたり嫌ったり、人を襲って人を守って、警察と揉めて癒着して。サイバーパンクでもクローンでもどんと来い。実に勝手が良い。クラシックな日

ストーリー・オブ・ザ・イヤー 2020

2020年1月1日から12月29日までに触れた作品で、特に心に残った10選を記録する記事です。 過去二年はその年に見た映画を振り返っていたのですが、今年はまとめて遊べるほど映画を見に行かず(2019:84本→2020:41本)、といって総括無しというのも落ち着かないので、趣向を変えて広くストーリー=創作物でやることにしました。こちらの記事の真似です。 間口を広げつつ本数を絞ることで書きやすくなるという寸法だ。レギュレーションも丸パクリしつつ、何でもありな感じでやります。

美しい接続/おまえは『レヴュースタァライト』でキラめきを再生産する

お前には夢がある。目を落とすな。「でも……」でもではない。それは常にある。お前がどこでどう生まれようと、どう育って今どうしていようと全く関係ない。お前の瞳の奥、赤い血の通う体の中心には夢という光が必ずある。人によって違うとすれば、その光が強いか弱いか、いまキラめいているかどうか。つまり……『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト 再生産総集編 ロンド・ロンド・ロンド』によって、キラめきを取り戻す前か後かだけだ。 あらすじ 『舞台少女』――それは未来の舞台女優を目指す、キラ

2019映画鑑賞ログ

 時期です。2019年に劇場で観た映画83本から、特にめちゃくちゃ死ぬほど生きるほど刺さった作品の話をします。  多分に漏れず俺はまあまあすごい量の映画を観ているが、やはり多分に漏れず誰にも感想を伝えるつもりはない。が、人様のそういう記事を読むのは好きなので、やることにした。内容に頷いたり間抜けを見る顔で肩を竦めたり、心のウォッチリストに加えたりしていただければと思います。 とにかくオススメスパイダーマン:スパイダーバース  迷うことなく2019年ベスト。別格。むしろオー

なつやすみ自由研究:3つの逆手から読み解く『ナラーバーニンフ』

はじめに 本記事は映画の感想文ではなく、オススメ作品として紹介するものでもありません。独自研究です。記事内すべての情報に正確性の保証はなく、映画本編を鑑賞することでお前が受ける精神的・肉体的負荷に対して一切の責任を負いません。自由研究だからです。 2019年夏、一人の勇敢な戦士が無限の荒野から探り当てたホラー・コメディ映画『ナラーバーニンフ』。みなさんはご覧になられましたか? もう見た方、お疲れさまでした。荒野の66分を生き延びた同胞として、本稿が作品鑑賞をより良い思い出