孤独問題と公共性:福祉国家も、愛情は保障できない、けども。
1.日本人もアメリカ人も「孤独化」
(…Facetimeの呼び出し音)
ーはろー。
こんにちは。あら、美味しそう。
ーケールスムージー引き続き飲んでますよ。
結局忙しい日が続いてるもんね。最近はどうですか?
ー今日は気心の知れる二人と、ウェルネスから文化産業の未来まで、いろんな話したよ。我ながら、Podcastに配信したいくらい良い話したなあ。
笑。
ー話の中で、ギグワーカーは孤独だっていう話題にもなったよ。
ああ。私の最大の関心、孤独問題。
ーうん。
話してた相手の一人はフリーランスだから、
アメリカの方がギグエコノミーが進んでそうだから、調べてみました。
2020年版の調査で、より孤独感を感じる人の割合は増えてるみたいですね。
ーアメリカ人も寂しいんだなあ。
会社組織って面倒に感じることはたくさんあるけど、でもその分コミュニティとしては相当、盤石な基盤だよね。
ーコロナで部署の飲み会が無くなって俺は嬉しいけど、自由になった時間は自分でつながらないといけないもんなあ。
もちろん多くの人は職場以外のコミュニティもありますけど、そういうのって常に自然とつながってるわけじゃないもんね。
ー複数の中で泳ぐ自由がある分、泳ぐのは大変。
個人的に、一番の拠り所となる共同体って、やっぱり家族だと思うんです。自らアクションし続けなくても関係性が保たれるし、お互い影響しあえる、という意味で。
ーそうだね。
ライフスタイルの方も独身でい続ける人も増えてるし、①家族と②職場っていう二大基盤を失っちゃう。まだ結婚してない私の将来も暗い。笑
ーでもさたとえ夫婦でも、いずれはどちらかが先に死んじゃうわけでしょ?子供がいない夫婦だって多いし。
少なくとも二人に一人は、寂しく人生を終えるリスクにさらされてるってことだよね。
これが解決されるなら私全力で取り組むわ。
自分の将来に関わる。
ーその意味では、孤独問題って、環境問題とかより余程自分事として捉えられる社会問題だよね。
代替も効かないし、自分が生きてるうちに経験するであろう「今そこにある危機」だもんね。
2.公共性との線引き -孤独は私的な問題か?
関連して、今日ちょうど面白い本を読んでたんですけど。
「公共性」について考えさせられる本で。
ーほう。
「公共性」って、以下のように三つ定義できるよねっていうところから始まるんですけど。
ーなるほど。
それで、「公共的なもの」と位置づけられると、それを福祉国家から、権利として保障される。
ー逆に言えば、公共に整理されないものは、排除されるよね。
と言いますと?
ーたとえば死にかけた人に対して、定義された医療サービスは医者から与えられる。
はい。
ー医療じゃないけど「ベッド脇で話を聞いてくれる」とか「手を握ってくれる」とかって、本当はとても大事なことじゃない。
でも今、こういうことは、公共性として定義されるものの、間隙にある。
そうですね。
定義したらしたで、どうしてもその間に落ちることがある。
ーそれもそうだよね。
で、こういう医療を超えたところまでケアしてくれる看護師さんや家族に恵まれるかは、はっきりいって運次第。国家に何ら保障されてるわけでもない。
確かに。
公共的な問題かどうかって、こういう整理に基づくじゃないですか。
ーそうね。
「公共的な問題」と整理された結果、国家から国民皆保険とか生活保護が提供される。
でも、愛情や尊厳、思いやりみたいな、人間が生きる上で一番大切なことは、「個人の責任」や、「個人の運」に帰責されてる。よく考えたら、相当シビアです。
ー孤独の問題も同じで、今は実質的に、全てのリスクが個人に寄せられてるよね。
自分の責任で何等かのコミュニティや人とのつながりを持たなきゃいけないけど、性格とか機会によっては、うまく出来ないこともあるじゃん。
3.孤独問題への公共のアプローチ
難しいのは、逆に言えば、愛情や思いやり、尊厳を、福祉「国家」が直接給付できるわけでもない、ってことですよね。
ーそうね。
突き詰めて言えば、愛情というか「人との相互の関わり」ということになるんだろうけど。
イギリスが2016年に孤独担当大臣を設置して注目されたけど、実際のところ今現在それほど成果はあがってないみたいです。
大臣も2年間で3人も代わってる。
ー”still lonely”って…かなしい。。。笑
私はどうやって孤独を回避したらいいんでしょうか?笑
ーうーん。
習い事を始めてみるとか。笑
習い事は何かを習うためであって、人とネットワークする下心が先行したら続きませんよ!笑
ー笑。
ああ、でもポイントは多分そこだよね。
ん?
ー基本的に、人とつながるために何かするんじゃなくて、何かやりたいことがあってそれに付随して人との関わりが生まれる。
確かに。
ー国や社会が孤独問題で担える役割って、そういう機会に簡単にアクセスできるようにするってことなんじゃないかな?
あー、なるほど。
孤独問題を孤独問題として対処するんじゃなくて、「新しいビジネスを簡単に始められる」「NPOの活動しやすい」みたいになやりたいことを、もっとやりやすいような環境整備として取り組む、ってことか。
ーそうそう。この話(※)のアナロジーだと思うけどね。
国家の役割は、「公共サービスを直接給付する」ことから、「皆が公共サービスを担えるような基盤を作る」ことにシフトしていく、っていう。
面白い。
国がダイレクトに何かやるわけでも、手を放すわけでもない、小さくて大きいガバメントってことか。
ーうん。今の菅政権のキーワードの一つは、「自助・共助」だったりするけど、それって政府は何もやらないということにはならないよね。
自助・共助がやりやすい環境づくり。
デジタル時代の公共インフラは、孤独対策にもなる。
面白い。笑
ーあとは、せめて身体的には死ぬまで健康に生きられるように、医療の発達を願う。笑
そうですね。
30代や40代に独り身で自由を謳歌できても、80代のおばあちゃんになって、自分で自由に活動できないと、孤独もつのりそう。
ーそうそう。
帰国したら、自分の将来の孤独対策のために、職業人生を賭けようかなあ。笑
ーいいじゃない。がんばれ。笑
じゃあ、そろそろ寝ます。明日授業朝早いんで。
ーおー。頑張ってください。
はーい、ではでは。
(…Facetime終了)
※関連note①
デジタル時代の、規制と給付についての政府の役割がどう変わるか?
政府の報告書を見ながら未来予測をします↓
※関連note②
では、実際にどんな社会基盤がありうるのでしょうか?インドの事例を見てみます。