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FBI交渉官とタモリは喋らない:トーク市場のミスマッチ
米国在住スミさんが、東京の友人コイさんと、哲学・テクノロジー・歴史などについて毎週Facetimeでトークします(第19回)。
1.PodcastのまずいMC(とスミさん)
(…Facetimeの呼び出し音)
ーもしもし。
こんにちはー。
おお、コワーキングスペースですか?
ーそうだよ。飲み物もフリーで落ち着いてて、良いよ。
料金もリーズナブル。
お洒落な所ですね~。しゃべってもいいんですか?
ーうん。ここは談話スペースだから大丈夫。
それは良かった。
最近、私のほうはべらべら喋り過ぎだなって反省してて。
ーどういうこと?笑
いや、コイさんの話を聞いてると、すぐ関連すること思いついて私が話しちゃうというか。
もっと話を聞こうと思ったのにって、いつも電話切ってから反省してる。
ー笑。
たまにちゃんと口をつぐむと、話を盛り上げられず難しいですねえ。
コイさんって話を私から引き出すのが上手いよね?
ーそう?まあ、どちらかといえば話すより聞く方が好きだね。
ふむむむ。
最近聞いたPodcastでね、トピックは面白いのにイマイチだなーって思うのがあって。
ーほう。どんな。
ゲストが歴史学者とかで、すごく面白いイキイキした話をしてくれるんだけど、MCがよく「それってつまり、○○っていうことですか?」って返すのよ。
ーふむふむ。
一見、知的な返しに聞こえるんだけどさ。
せっかく学者先生が面白い話してるのに、そのMCの考え方の枠に整理しちゃうから、話の可能性が半減してる感じがして。
ーなるほどね。
しかも、そう言われたら大抵は、否定せずに「そうですね」って返すよね。
そうなの。
”ん~、ちょっとニュアンス的には違うけど、まあそう言えなくもないか…”みたいな。
ー相手の話を引き出すんじゃなくて、整理しちゃってるうよね。
既存の枠にカテゴライズしちゃうと、それ以上話も広がらない。
2.FBIもタモリも松本人志も、喋らない
逆に、最近、なるほど思ったこともあるんですよ。
元FBI交渉官のChris Vossのオンライン授業を受けたんですけどね。
ーほう?
Chris Voss:アメリカの実業家、作家、学者。元FBI人質交渉人、ブラック・スワン・グループ・リミテッドのCEOであり、『Never Split the Difference(邦訳:逆転交渉術 まずは「ノー」を引き出せ)』の共著者。ジョージタウン大学MBAの非常勤教授、南カリフォルニア大学MBAの講師を務める。(Wikipediaより筆者和訳)
いわく、相手の話の「最後の3 words」をおうむ返しに聞くと、相手が自然に喋ってくれるって。
3wordsってのは英語だから、日本語だと相手の「文章の目的語」になるかな。
ーどういうこと?
たとえば極端に言うと、こんな感じ。
<例>
Aさん「昨日、駅前のカフェに行ってきたんだけどめっちゃ良かったよ。」
B君 「おー。あの駅前のカフェ?」
Aさん「そうそう、カロリー半分で栄養はめっちゃ摂れるっていうケーキが目玉なの。わたし健康生活続かないから、ここなら続けられるかも笑」
B君 「そんなケーキがあるのか笑。健康生活、続けるの難しいよねー。」
Aさん「そうだよー。最近Youtubeのワークアウト動画見てたんだけど、全然続かなくてさー…」
B君 「へえ。Youtubeの動画?」
・・・続く
ーなるほどね。
「と、言いますと?」みたいな効果に近いね。相手の話を引き出す。
そうかもしれない。
コイさんよく「ほう?」とか言うし笑。
ー俺も20代の時、お笑いのMCについて研究したなあ。
タモリとか松本人志とか明石家さんまとか、相手の話を引き出すのが上手いんだよね。
みんな、自分で面白い話なんていくらでもできるだろうに。
ーこの「喋らない」ってのが人間、意外に難しい。
こんなこと知ってる、こういう話がある、って「自分が自分が」とマウントしたり自己顕示してしまう。
やっぱり無意識に、”相手に認めてもらいたい”っていう感情が先立っちゃうもん。
ーそうだよね。
聞き上手な人が話すときって、自分の話のためじゃなくて、相手の話を引き出すために、別の視点やインサイトを「添える」くらいだよね。
うん。確かに、コイさんが「こんな話もあるよ」って言ってくれると、私もそれにインスパイアされる。
ーそれで、もっとぺらぺら喋ってしまうと。笑
そういうことだあ。笑
独白じゃなくて対談の良いところって、お互いのフュージョン(※)だもんね。私も喋ってばっかじゃなくて、そうなりたい。笑
3.トーク市場、需給のミスマッチ
ーしかしそう考えると、現代はなかなか、自分の話を聞いてもらう機会がないね。
そうですねえ。
仕事だと「簡潔にポイントを話せ!」って言われるばっかりだし。
ー友達でも、「自分の話つまんなくないか?」とか思ったりするもんね。
圧倒的に信頼できて、しかも自分に興味持ってくれる相手じゃないと、安心して話が出来ない。
それ、私の最初の話はそれですよ!
私がコイさんに対して抱いた反省です。
ー笑。
根本的には、やっぱり人間、自分の話を聞いてもらいたいニーズが圧倒的に大きいと思うんですよ。
ーそれはそうだね。
話を聞いてくれる人がいないから、どうにもマーケットがバランスしない。笑
カウンセラーさんとか心理士さんって一見そういう職業だけど、本質的にはまたちょっと目的が違うんだよね。
一回カウンセリング受けたことあるんだけど、「広げてくれる」というより「整理してくれる」という感じ。
ーそうなんだ。
確かに、”私の考えを聞いて、パフォーマンスを見て!”っていうのは受け皿がなかなか無いかも。
noteとかSNSとか、”発信する方”のプラットフォームは結構整備されてきたけど、言いっぱなしじゃなくて”聞いてもらう方”は、場があればいいわけじゃないか。
テクノロジーにはなかなか頼れないなあ笑
ーそうだね。
まあ結局、聞き上手で相手に面白いインサイトを与えられる人は、話が聞いてもらえるんじゃない。笑
ぐぬぬ。やっぱり精進しよう。
まずはコイさんと話すスタイルを意識しよう。
ースミさん聞き上手だとは思うけど、はい。笑
じゃあ今日はこのへんで!今日も楽しかったです。
そろそろ寝ます!
ーはーい。俺はおやつ買ってこよ。
いいな~!ではでは、また。
(…Facetime終了)
★参考文献★
『Chris Voss Teaches The Art of Negotiation』(Masterclass) https://www.masterclass.com/
『タモリと明石家さんまの神がかった会話術の裏には1つの共通点があった!』https://u-note.me/note/47486456
※「話のフュージョン」については、6月のFacetimeで関連したトークをしていますので、こちらもよければどうぞ!
参考:対話型メディアの優位:書道とパネルディスカッション
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![スミさんとコイさんのFacetime](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/23675354/profile_88e5484f7d1e97d4090faae7e43c1798.jpg?width=600&crop=1:1,smart)