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日中のビジョン行政の違い:シニカルと熱狂の間にある「国の意志」
米国在住スミさんが、東京の友人コイさんと、哲学・テクノロジー・歴史などについて毎週Facetimeでトークします(第31回)。
1.デジタル産業と情報政策の歴史
(…Facetimeの呼び出し音)
ーはろー。
こんにちは。
あ、コイさんまた茅場町のカフェにいるんですね。
ーうん。緊急事態宣言で、リモートワークだからね。
ここ、適度に静かだしWeb会議もできるし、ちょうどいいんだよね。
カフェ自体はたくさんあっても、ちょっと騒がしい、席が近すぎる、コンセントが無い、とか仕事に適した場所って結構条件必要ですよね。
ーそうなんだよ。他になかなか良い場所を見つけられてない。
インスタで『リモートワークにおすすめのカフェ5選』を見つけたんで、あとで送っておきますよ。
ーおー、よろしく。
そういえば、年末年始ずっとぐだぐだしていたところに、ついにちょっと頑張ってみようと思うことが出来ました。
ーなんですか。
IT政策とデジタル産業の歴史を、私なりにちょっとまとめてみようかと。
ーおお、いいじゃない。
まだどういう軸でまとめるかは考えてるところで、とりあえず材料を勉強中なんですけどね。
ー国のプロジェクトが、なんでその時代に失敗したか気になるな。
第五世代コンピュータ(1979年)とか、シグマプロジェクト(1985年)、情報大航海プロジェクト(2007年)とか。
ですよね。
ーうん。
60年代や70年代の”ジャパン・アズ・ナンバーワン”の時代は、通産省が税金投入して、テコ入れしてきたじゃない。
調べてみると、70年代のVLSI(半導体)プロジェクトくらいまではうまく行っていたみたいなんです。
ーもちろん、プロジェクトの設計とか技術とか市場を見る目とか、色んな要因があるんだろうけど、やっぱり一番は「国の意志」だと思うな。
2.かつては流行った、国の意志
国の意志、ですか。
ーそうそう。
それこそ50-60年代って、基盤産業を繊維から自動車や家電に、国家戦略として大胆に切り替えたわけでしょ。
さっき話した半導体の国プロも、当時1600億円とかしかなかったマーケットに対して、700億円の研究投資をしたらしいんです。
よほど国として、「これを次の産業の柱にするんだ」っていう思いが無いとできないですよね。
ーそれはそうだね。
でも個人的に、このやり方は現代にはあてはまらないんじゃないかと。
ーほう。
当時は政府に、そういう次の投資を決める情報なり頭脳なり予算がある程度集まっていたのかもしれないけど、現代は全くそうじゃないでしょう。
前に読んだ報告書にそんな感じのことが書いてあって、そうだよな、と。
「今まで規制も、サービス供給も政府が請け負ってきたけど、これからは政府だけじゃなくて、”みんな”でやっていく方向を目指そう。
その方が、効率いいし、クオリティも高くできるじゃん。
ただ、丸投げしても、うまくいかない。
政府側は、”皆でやってける環境・仕組み”(情報開示のルールやら、ビジネスのコスト削減になるデジタル公共財整備やら…)を整備するよ。」
ーそうね。だからこそ、国の仕事って「本気の意志」を示すことなんだと思うよ。
うーむ。そうかなあ。
ーたとえば中国って、去年に習近平が「CO2排出量を2060年までに、実質ゼロにする」って宣言したじゃない。
環境政策って、どうもファッションっていうイメージがあるんですけど。
日本でも数年に一度もりあがるもの、って感じ。
ーいやいや、その正反対だよ。
産業政策として以上に、”環境にも配慮した「一流国」としてヨーロッパと組んで政策を進めて、世界の中国の受け止めを刷新していこう”、”これを通じてアメリカをも凌駕して世界一の国にしよう”っていう戦略が通底している。
そうなんだ。
ー習近平も本気で言ってることがわかると、その「おことば」だけで、マーケットの側では企業や投資家が、”次はここだ!”って競って頑張るわけでしょ。
3.「ビジョン」に対する日本人の自信喪失
そう言われてみれば、私の中国人のクラスメートとのやりとりを思い出した。
ーなんですか。
いや、「いろんな締め付けあって窮屈じゃない?実際のところ共産党のこと、若者的にどう思ってるの?」って。
ーほう。
そしたら、みんな「まあ不便なこともあるけどさ、その分結構政府もいろいろやってるから」って感じで。
むしろそうやって、国が戦略をもってグイグイやってることに対して、誇りがにじみだしている感じで。
ーそりゃそうだよね。
もちろん色んな問題はあるんだけど、政府に誇りを持っている人たちも多いと思うよ。
それに対して、日本人って戦略とか、ナラティブ、ビジョンに対して物凄くシニカルだよね。
「フワフワしたコンセプトはいいけど、で、何やるの?」って、会社でも詰められる。笑
ーそうだね。それは、前にアメリカ人との違いとしても一回話したよね。
でも、ビジョン行政って少し前の日本では華々しかったじゃない。
そうかな?
「○○戦略」って山ほどあって、真実味がないけど。
ーそれはやっぱり本気度と中身の問題じゃない。
それこそ、60年代には『所得倍増』、70年代には『列島改造』ってぶち上げていて、実際そのための政策もバンバン打ち出していたわけでしょ。
そういえばそうだった。
ーそれこそ、良い意味で、2021年に習近平がやっている「おことば」行政にだよね。
言われてみれば、ちょっと前も、小泉時代”自民党をぶっ壊す”みたいな熱狂もあったし。
国民が共感出来て元気が出て、なおかつ国の本気度が感じられる「意志」ってことか。
ーそうそう。
まあ、政府のコロナ対応見ていると暗くなっちゃうけど…意志が感じられない。笑
こういうときにバン!って打ち出せばいいのにね。政権でも野党でもいいけど。
ーそういうモチベーションが効かなくなってるという意味では、政治システムにも問題があると思うけどね…。
また話が膨らみそう。こんな時間ですけど大丈夫ですか?
ーあ、このあとWeb会議があるんだった。
じゃあまたこの話はまた別の日に。
ーそうだね。じゃあ、俺はそろそろ行きます。
スミさんもITの歴史まとめ、がんばってください。
ありがとうございます。この会話でいろいろインスピレーションもらいました。
ではではー。
ーはーい。
(…Facetime終了)
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