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本の感想

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2020年に読んだ本の感想です。
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#音楽

菊地成孔 大谷能生 『アフロ・ディズニー2: MJ没後の世界』

(2020年の41冊目)2010年に刊行された菊地成孔・大谷能生のコンビによる講義録。『アフロ・ディズニー』のほうは刊行後すぐに読んだ記憶があるが、『2』はだいぶ寝かしてしまった。でも、そのおかげで内容は熟成してまた読みごろになっており、アフロ・ディズニー、つまりは黒人カルチャーとオタクカルチャーの接近をテーマに掲げた本書は、Flying LotusやThundercatの大ブレイクを予言するかの

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プリンス・ロジャーズ・ネルソン 『The Beautiful Ones: プリンス回顧録』

(2020年の39冊目)プリンスが生前自伝を出版しようとしていたのはニュースで知っていたが、わずかな遺稿を遺して本人は急死。本書はその遺稿と、自伝出版のパートナーに選ばれたライター(編者)の手によってこの自伝プロジェクトがどのような経緯をたどって進められ、そしてどのように突如として中断されたのかを明らかにする文章、それからプリンスの自宅兼スタジオ兼ライヴハウス兼倉庫「ペイズリー・パーク」に眠ってい

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吉田秀和 『世界のピアニスト』

(2020年の34冊目)恐れ多くもわたしを「現代の吉田秀和」と(なかばふざけて)呼ぶ友人がいるのだが、実は吉田秀和の文章に触れたことがないまま過ごしてきたのだった(本棚にあるクラシック音楽の評論家の本といえば、宇野功芳ぐらいなもので、ここ15年ぐらいはほとんど批評とか評論に触れていなかった)。このまま読まずに過ごすかな、とも思っていたのだが、ここ最近20世紀の前半に活躍した演奏家の録音をレコードで

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『めかくしジュークボックス: 32人の音楽家たちへのリスニング・テスト』

(2020年の28冊目)松山晋也による名著『めかくしプレイ』の元ネタになった本。『The Wire』での「ミュージシャンにブラインドで音楽を聞かせて、なにかを当ててもらったり、その音楽の感想をいってもらったりする」という連載をまとめたもの。選出されているミュージシャンは、オルタナとか、アヴァンギャルドとか『The Wire』好みのセレクトといえるだろう。

邦訳がでたのは20年以上も前だ。だいぶそ

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大滝詠一による大滝詠一研究書 『大滝詠一 Talks About Niagara』

(2020年の1冊目)2011年、『A LONG VACATION』の30周年記念リマスターが出る前に出版されていた大滝詠一のインタビューや過去に音楽誌に寄稿した原稿をまとめたもの。インタビューは過去に大滝がてがけた作品のリマスター再発などをきっかけにしたものとなっており、制作時の事情や大滝が楽曲に込めた意味や意図を自身の口から解題するような内容となっている。

70年代初頭の作品やナイアガラ・レ

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