プリンス・ロジャーズ・ネルソン 『The Beautiful Ones: プリンス回顧録』
(2020年の39冊目)プリンスが生前自伝を出版しようとしていたのはニュースで知っていたが、わずかな遺稿を遺して本人は急死。本書はその遺稿と、自伝出版のパートナーに選ばれたライター(編者)の手によってこの自伝プロジェクトがどのような経緯をたどって進められ、そしてどのように突如として中断されたのかを明らかにする文章、それからプリンスの自宅兼スタジオ兼ライヴハウス兼倉庫「ペイズリー・パーク」に眠っていた貴重な写真やメモをバインドして一冊にしたもの。
一言でいうと、コアなファン・アイテムであって、これがプリンスの音楽の入門的なものになるか、というとまったくならないだろう。とくに冒頭から続く編者による文章は、晩年のプリンスの人となりが垣間見れる回想であるものの正直ダルい。幸い、プリンスの遺稿部分はかなり読みごたえがあり、幼少期からハイスクール時代のプリンスがどんなだったかを自身の筆によってかなり赤裸々に語られているのは面白い。ガールフレンドはどんなで、とかめちゃくちゃ細かく書いてあるし、中学生のときの成績表まで挿入されている(そんなものまで倉庫にしまってあったらしい)。とはいえ、無理くりなんとか出版できる形にまとめた感は脱ぐえず。ちゃんと完成していれば……という残念な気持ちがより高まる。
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プリンス関連の書籍・雑誌についてこれだけ書いていたが、やはり西寺郷太の『プリンス論』が金字塔だ。
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