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本の感想

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2020年に読んだ本の感想です。
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2020年10月の記事一覧

ロブ・デサール イアン・タッターソル 『ビールの自然誌』

(2020年の42冊目)アメリカの分子系統学者と古生物学者がタッグを組んで、ビールの歴史から文化、ビール造りに重要な材料(水・大麦・酵母、そしてホップ)、発酵のプロセスや人体への影響、それからマーケットに関して……など超多分野にわたってまとめたすごい本。

ビール関連の本は面白いものが多い。もちろんそれは自分がビール飲みだからなのだが、たとえばサントリーで長年ビール製造に携わっていた人が書いた『ビ

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菊地成孔 大谷能生 『アフロ・ディズニー2: MJ没後の世界』

(2020年の41冊目)2010年に刊行された菊地成孔・大谷能生のコンビによる講義録。『アフロ・ディズニー』のほうは刊行後すぐに読んだ記憶があるが、『2』はだいぶ寝かしてしまった。でも、そのおかげで内容は熟成してまた読みごろになっており、アフロ・ディズニー、つまりは黒人カルチャーとオタクカルチャーの接近をテーマに掲げた本書は、Flying LotusやThundercatの大ブレイクを予言するかの

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ルネ・セロー 『ヘーゲル哲学』

(2020年の40冊目)最近ヘーゲルの『精神現象学』を新訳でシコシコと読み進めているのだが、昔に樫山訳で挫折したときとあんまりレベルが変わってないのでほとんどわからないまま雰囲気でページをめくっている感じなのだった。そんなんで上巻は読み終えてしまってあいだに少し入門書を挟んでみる。このルネ・セローの入門書は、ヘーゲルの哲学を哲学史の文脈上なかで位置付けつつ、そのエッセンスを解説し、さらには後世への

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プリンス・ロジャーズ・ネルソン 『The Beautiful Ones: プリンス回顧録』

(2020年の39冊目)プリンスが生前自伝を出版しようとしていたのはニュースで知っていたが、わずかな遺稿を遺して本人は急死。本書はその遺稿と、自伝出版のパートナーに選ばれたライター(編者)の手によってこの自伝プロジェクトがどのような経緯をたどって進められ、そしてどのように突如として中断されたのかを明らかにする文章、それからプリンスの自宅兼スタジオ兼ライヴハウス兼倉庫「ペイズリー・パーク」に眠ってい

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