ロブ・デサール イアン・タッターソル 『ビールの自然誌』

(2020年の42冊目)アメリカの分子系統学者と古生物学者がタッグを組んで、ビールの歴史から文化、ビール造りに重要な材料(水・大麦・酵母、そしてホップ)、発酵のプロセスや人体への影響、それからマーケットに関して……など超多分野にわたってまとめたすごい本。

ビール関連の本は面白いものが多い。もちろんそれは自分がビール飲みだからなのだが、たとえばサントリーで長年ビール製造に携わっていた人が書いた『ビール世界史紀行』や『自分でビールを造る本』などの名前をあげておこう。

こうした本に比べて本書の存在感が際立っているのは、分子や遺伝子、あるいは生物学的な記述にかなりのページを割いているところ。さすが科学者が書いた本、って感じ。

科学に対する素養がゼロなもんで科学的記述も読み飛ばしてしまった部分が多いのだが(もったいない)、それでもアメリカのクラフトビールの市場がどんな感じなのか紹介している最終章なんかは興味深いし、全体として面白く読んだ(クラフトビールの世界も大手資本や投資マネーがガンガン入ってて、小さい醸造所を買収しまくったりしているらしい。そのへんはフランスのブドウ畑や醸造所にチャイナマネーが入りまくっている状況にも似ている)。また、節を分ける部分にビールの王冠のイラストがあしらってあったり本の作りも凝っている。

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