リアルでファンタジー
読書で現実逃避をしたい時、突飛な設定のファンタジーを読むより、自分の生活に重ねられそうなリアルさの中にファンタジー要素が入ってきた方が移入できると思ったことはないだろうか。
私はこの所謂"リアルでファンタジー"派だ。
共感できる!と思った方、もしくは読んで逃避チャレンジ?してみたいと思った方は下記選書をチェックしてみてほしい。
そのあとに改めて、このnoteに戻ってきた時、私の感想メモと意見交換していただけたら本望です。
🪴裏庭
:まさに大人のためのお伽話
秘密の花園のようでSF小説のようだった。加えて教訓ともとれる、御伽噺的な要素もあった。例えば、"傷に自分を乗っ取られてはいけない"というところが心に残った。
大人になる過程で必ず傷を受けるし、それと向き合わねばならない。でも傷がある自分も、傷がなかった自分と変わらない。傷ができて弱みを持ったことを理由に自分を見失ってはいけないと思った。
タイトルでもある"裏庭"は見えない人の心を表していると思う。自分自身を見つめ直して、大切にすることを顧みるきっかけになった。
🪞丸の内魔法少女ミラクリーナ
:疲れた時は秘めたる魔法を信じて
表紙とタイトルで手に取った本。大人の象徴とも言える"丸の内"と"魔法少女"があまりにも相反するワード、更にはキュートな絵が気になりすぎた。
読んでみると、オムニバス形式のどの話もパワフルで、魔法少女を信じている年頃の純真かつエネルギッシュな気持ちを盛り返せる気がしてきた。
表の自分だけが本当の自分とは限らず、裏の自分がいるからこそ生きていけるんだろうなと思う。つきたくなくても表の自分では自分の本当の気持ちに嘘をつかねばならないことがあるかも。
🥞パンケーキ2.0
:理性と野性は紙一重かもしれない
本谷さんはヤバい人を書くのに本当に長けている。グロテスクだけど美しいものをイソギンチャクで表すのがすごい。
どこからが想像の中か分かりづらくて不可思議な感じが怖くて良かった。
新潮2023/6より
✒️東京會舘とわたし(上下巻)
:自分の1章もいつか加わりたい
上巻では戦時中の結婚式の話が印象的。
お見合いで結婚することとなったため、新婦の静子は当初、新郎の水川さんに全く親しみを持っておらず、結婚に泣きそうになっていた。しかし式の日だけでも、水川さんがこと細やかで嫌味なく静子をリードしてくれる姿が素敵だった。実際、静子が水川さんとの結婚に前向きになるシーンに応援したくなった。
また戦時中の大変な最中に、式を演出するスタッフ、例えばメイクの遠藤さんは静子の緊張を和らげたり応援してくれたりと優しさに感動した。
他の物語に関してもミルクフィズやクッキー缶開発の奇跡など、歴史や人生の節目を過ごす場所としてホテルはあった。
下巻では涙腺が緩みっぱなしだった。
ホテルスタッフたちの、ちょうど良くて温かいおもてなしは長い時間をかけ、多くの人々によって引き継がれてきたものだった。
テーブルマナーも気になるし、料理教室などにも参加してみたい。
個人的には東京會舘といえば、足の沈みを感じるほどのふわっふわな絨毯のイメージがある。特別なひと時も過ごしてみたい。
最後になるが、本書は東京會舘の社史として、ホテルの社員に配布されているらしい。
フィクションが含まれているとしてもそれに値する本だと思った。
🥤ビボう六
:京都の掴めなさにわくわく
諸事情でプレゼントいただいた本。第3回京都文学賞を受賞し刊行されたことから、物語の舞台は京都だった。
なんといっても作者の知識量と文章力に感服せざるを得ず、ファンタジーだけど純文学のような重みもあってバランスが良かった。
またそれぞれのキャラクターが持つ二面性も魅力的で、絶望感やピュアさといった昼の京都からは彷彿できない感情が夜の京都にあることを知れた。