大阪はカレーに卵をぶち込んで喰らうことを教えてくれた #うちのカレー
「自由軒」という洋食屋がある。
大阪の難波のど真ん中、千日前のアーケードの中にある、気のいい洋食屋だ。高級感、というよりはよくある街の洋食屋さんって感じで、フランクな雰囲気がたまらない店だ。
私が九州の田舎からえっちらおっちら
新幹線にのって、初めて大阪に来た時。
私は、ここのカレーに胃袋を掴まれた。
その時の我が家のカレーといえば、大ぶりのじゃがいもや豚バラがゴロンゴロン入った、ボリューム満点のカレー。食べ応え十分で、私もとても好きだった。でも、なかなか辛い。複数のカレールーをブレンドしてつくってはいるものの、辛口のカレーはおこちゃまな私にはまだ早く、大量の水とカレーを摂取して何とか食べきっていた。
どうにか手軽に、この辛さをマシにしてくれる方法はないものか。私はずっと考えていた。そんな時に、私はこの自由軒の「名物カレー」を発見することになる。
大阪のガイドブックを観れば
必ずといっていいほど掲載されている
自由軒の名物カレー。
それは、ルーとごはんが完全に混ざりあった状態になって提供され、皿の真ん中に作られたくぼみに卵が浮いている。その卵を最後にスプーンで全てかき混ぜてしまうことによって、初めて完成形を目にすることが出来るのだ。
初めて頬張った時、私は目ん玉が零れ落ちるかと思うぐらい感動した覚えがある。黄身のまろやかさ、白身のとろみ。ひとつも無駄になることなくカレーを引き立てて、コーティングしてくれる。口に入れた瞬間の混然一体となった味が何とも言えず最高だった。まるで飲み物を呑むかのように、サラサラ~と皿一杯のカレーを平らげてしまった。
「これはいいアイデアだ」と思わず感動した。こんなに些細な工夫なのに、こんなにカレーを旨くしてくれるなんて。初めて考えた人は天才か?なんて、ちょっとびっくりしたりしてね。
以来、私はカレーに生卵が欠かせなくなった。大人になった今では辛口のカレーなんて余裕しゃくしゃくで平らげてしまうのだが、それでも卵インの習慣は残り続けている。ついでに、カレーを全体的に混ぜて食べる癖も付いてしまった。
たとえ行儀が悪いと思われようが、どう見られようが、私はカレーをしっかり全体に混ぜて行きわたらせて、生卵でマイルドにして食べるのが世界一美味しいと思っているし、それを認めてくれる寛容な女子以外とは絶対に結婚しないと心に誓っている。
だって、どんぶりだって掻き込むように食べるのが一番おいしいし、ラーメンだろうがそばだろうがパスタだろうが、すすって食べるのが一番いい。結局人間は、お上品にモノを食べるなんてことはできない人間、ワイルドに混ぜて、マイルドなカレーを食べるのが一番幸せなのである。
何一つ綺麗にオチてませんが、今夜はこの辺で。
おしまい。
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