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水木三甫
2024年12月23日 08:06
空は細胞分裂を繰り返し冬が一回り大きくなった相対的に小さくなった僕らは寒さという波に足を取られてそのまま雪の海に引きずりこまれる太陽に戦いを挑んで負け雪にも敗れた僕らは苦しみの山を築きそこに穴を掘って時をやり過ごす神は復活し神を一度裏切った僕らは新たな神の前にひれ伏すその間も神は宇宙を広げ僕らは縮んでゆく
2024年5月2日 08:16
何もない青空を老いた風船が横切っていく人間の欲望という手から逃げ出しやっと自由になれたのも束の間今度は空気圧と対峙するはめになったしばらくすれば人間からも青空からも無視されるゴミ屑になることを風船はすでに知っている
2024年3月24日 08:25
飛行機が鉄の重りを引きずりながら低空飛行する。悲しみを失った海は、君の優しさを忘れたように、ウインドサーファーの体を飲み込んでゆく。過去をいっぱいに積み込んだトラックが、ハイウェイの境界線を飛び出して炎上する。君の悲しみは重さを失い、君は風に乗って次に根をはる場所を探す。僕は君を失ったまま、公園の砂場を掘り続ける。戻って来るはずのない君が戻って来るのを期待しながら。熱が空から降ってくる。
2024年2月20日 07:06
本当の愛とは無償の愛だと言うけれど無償の愛という言葉があること自体愛には無償の愛以外の愛がある証拠じゃない?神様の愛は無償の愛だと言うけれど献金を求めたり規律を押しつけたりするのだから神様だって見返りを求めているんじゃない?人間なんて欲望の固まりなんだから人間の愛に無償の愛を求めるなんて最初から無理なことだと思わない?私があなたを愛してるのはあなたを所有したいという欲望が
2023年11月25日 09:40
道なき道を人間の大群が押し寄せる後に残されたのは舗装された道路だけ埋葬された生物たちの死の世界
2023年11月16日 07:12
一夜にして地面は白一色に染まった雪は空中の雑音を飲み込み地上に積み重なっていく白い静寂汚れた大地を覆い隠しながら雪は人間の欲望を飲み込み徐々に高く積み重なっていく白い純潔目が覚めたとき人は白い世界を見て何を思うのだろうか白い芸術やがて積もった雪は人間に穢され雪は黒く泥まみれになる雪が溶け雑音と欲望が目を覚ます白い幻滅それでも雪は降り続ける白い平和を人間た
2023年6月25日 19:36
ものごころがついたときから他の人間とは違うと気づいていた人間の中に交じっていてもいつも私は一人ぼっちだった家庭でも学校でもいつも爪弾きにされた私なんかいてもいなくても関係ない存在だったどうすればみんなとおんなじ人間になれるのかわからなかったその頃の私の願いはひとつだけだった早く人間になりたい
2023年5月4日 06:40
もうすぐ太陽が地球に落ちてくるらしいよ神様がそう言っていたでもほんの一瞬で溶けてなくなっちゃうから痛みはないらしいよ神様は人間を試そうとしてたけど人間は全知全能の神様が思いもよらない行動をとってしまったから、もう手の出しようがないみたいだよでも、もし僕が溶けて、ガスになって、宇宙の中でいろいろなチリとくっついて、違う生き物になったとしたら、それはそれで面白いかもしれないねとにか
2022年12月28日 13:49
誰でもが人材になれる時代って、誰にでも代えられる人材ばかりいる時代ってことだよね?辞められても困らない人材ばかりいる時代ってことだよね?優秀な人のことを人材って呼ぶ時代は、とうの昔に終わったんだろね?今じゃ誰もが人材だから、逆に生き残れない時代なんだろね?会社に都合がいい人ばかりが人材なんだろね?だから、人材に個性なんていらないんだよただ、会社の命令に従って、上司の命令に従って
2022年10月27日 05:10
尖った言葉が空中を飛び交い、体中を傷つける。凹凸があるから世の中はうまくいくのに、凸ばかりでは突っつき合うのは当たり前のこと。尖った言葉が飛び交って、心の中が傷だらけになる。真綿に包んだ言葉なんて、一言だってありはしない。傷つく前に相手を傷つけてやろうなんて、いつから人間の心は狭くなったのか。尖った言葉が飛び交って、世の中が傷だらけになる。狭い心を持った人間たちが狭い心を
2022年10月12日 10:58
東京の夜には闇がない。真夜中に目覚めて気がついた。窓を照らす街灯の光が殺風景な部屋を浮かび上がらせる。幼かった頃の漆黒の闇を思い出す。夜の暗さに怯えて、泣きながら母の布団に潜り込んだ。闇はいつからか安らぎに変わった。何者をも飲み込んでしまう闇の包容力。闇は心の中の不安や焦燥も消し去ってくれる。夜の闇は心を癒やす。それなのに人間は、闇を明るくしてまで自分を傷つけている。癒し