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「学力喪失」〜認知科学による回復への道筋〜から

今井むつみ先生の本は、私には難しいのですが…今回はがんばって完読しました。

“勉強ができない”
“勉強がわからない”
“学習障害”

その言葉の解像度をあげた時に気づくことがありそうです。
以下、抜粋が多くなりますがポイントをまとめてみました。

【暗黙の知識、スキーマ】

 認知科学に「スキーマ」という言葉がある。最重要の概念である。スキーマとは、学習者が(というよりすべての人が)経験から同出した暗黙の知識である。

「学力喪失」今井むつみ著

スキーマがつねに正しいとはかぎらない

すべてのスキーマが正しいわけではない。スキーマで自分の中に取り込む情報を取捨選択し、スキーマを使って情報を解釈し、そこにない情報をスキーマで足し、行間を埋める。必然的にスキーマはテキストや人が言ったことの理解にも、その記憶にも大きな影響を与える。
 では、スキーマが誤っていたら、何が起こるだろうか。

「学力喪失」今井むつみ著

コレって、認知のズレにもあてはまりそう。
今回は、学力についてのスキーマの話ですが、この【スキーマ】を理解するといろいろとクリアになりそうです。

そして、このスキーマ【基本的に人は----特に子どもは----視覚や触覚などの知覚できる経験に頼ってスキーマをつくる傾向が強い。】ということでした。

まさに、視覚刺激・感覚刺激に反応するんですね。

そして、自分のスキーマと他者のスキーマが違うことに気づかなかったら…認知のズレ、認知のゆがみとなるわけですね。

話を学力に戻すと、概念の根幹に近いところの一つの誤ったスキーマはたいてい他のスキーマとつながっていて、どんどん塊が大きくなる。
認知科学では、学習の躓きの大きな原因はスキーマの誤りであると考えられる。
学校では、スキーマを使って新たな知識を創造しながら、誤ったスキーマを修正する役割が求められるということでした。

では、子どもたちは何につまづいているのでしょうか?

【数につまづく】
「数」はモノを数えるためにあるわけではない。
1個ではない、単位としての「1」の意味がわからないと小学校高学年から先の算数・数学はひたすら「記号を操作するだけのわけのわからないもの」になる。

【読解につまづく】
・読むことは運動能力。たゆまぬ訓練が必要。
・読むことは自分のスキーマで行間をうめながら、書いてあることの「意味」を解釈すること。
・読むことは、自分の視点から離れ、他者の視点で世界を捉えること。
・読むことは、作者の視点で作者の意図を読み取り、理解し、それを超えて自分の知識と思考を拡張すること。

「読むこと」と「思考すること」はきりはなせないということです。


【思考につまづく】
子どもがつまづく原因として、「思考力そのもの」より「思考の制御の問題」が大きい。

【学校で育てなければならない力】
人間の記号接地(身体感覚や経験とつなげて理解すること)とは、記号を外界の対象に紐づけするのではなく、そこから抽象的で本質的な概念に自分で到達していく過程なのである。
その基盤をつくるために学校教育がある。

では、どのような学びが有効なのでしょうか?


【記号接地を助けるブレイフル・ラーニング】
プレイフル・ラーニング(わくわくしながら、夢中になって何かをする中で学びが得られる状態)を続けることで、学び手は単に「学びは楽しい」を超えて「学びは遊びだ」と思うようになる。

子どもの学びをサポートする大人と、安心&リラックスして「わからない」「なぜ」を質問でき、間違いや失敗をすることができる学校の環境が必要。
その環境の中に子供を順位づけ、競走させる目的のテストは不要である。

子ども達が、目をキラキラさせて学ぶ瞬間があります。
“生きた学び”をしている時です。

学習とは、経験+それを広げるイメージの力なんですね。
私達、大人ができそうなことが少しわかったような気がします。

今井むつみ先生、ありがとうございました。



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