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風花は、夏澄たちみんなと並んで、大きな大きな樹を見上げていた。 樹は力強く枝を伸ばし…
蒼天樹は水の精霊の国の中央に生えている、国で一番大きな樹だそうだ。 楡の樹に似ている…
「はい、優月さん」 風花は緑色の星水粒を数個、両手に乗せ、優月に差し出した。 優月は…
優月の心に、蘇芳色の不安がよぎった。 今日の春ヶ原はどうだろう。植物たちは、あの現象…
同時に強い風に押された。 なぜか、優月の周りで風が起きた。 風は渦のように優月の…
ふいに背後で、ドアがノックされた。 星夜が入ってくる。トレイにティーセットを乗せてい…
優月の体から、悲しみの霊力が何度も何度も、放出される。 霊力は風のように流れて、周りの全てに吹きつける。植物が全て萎れて、何度も霊力を浴びた木々の葉は枯れて落ちていく。 緑でいっぱいだった藤原の御泉公園が、朽葉色に染まる。 優月の瞳が悲しみを映す。 布団の中でうとうとしながら、風花はまたそんな想像をしてしまった。 もう嫌だと、枕に頭を押しつけて、うつ伏せになる。 時計の針は三時を差していた。 嫌な想像ばかりしてしまい、風花は全然眠れないでいた。