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水の空の物語 第5章 第18話

 蒼天樹は水の精霊の国の中央に生えている、国で一番大きな樹だそうだ。

 楡の樹に似ているが、大きさはその三倍くらいある。

 天に届きそうだから蒼天樹というらしい。

 広がっている葉のところどころに、小さな光の粒が輝いていた。蛍の光に似ている。

 樹に降った雨の粒が、葉に留まり光を放っているのだ。

 雨の名は星水雨というらしい。水の精霊の国の樹だけに降る雨だ。

 星水雨は、樹を護る雨だ。

 樹の陽差しが届きにくい場所に、光を運ぶ手助けをしている。

 そうすれば日陰になっている部分の葉も、光をいっぱいに浴びて生育できるからだ。

 樹に降った雨は、ビー玉くらいの大きさになり葉に留まる。

 そして光を吸い込んで、青や緑に色を変える。それから葉に光を届ける。

 色の種類は全部で七色。

 虹の色と同じだ。

 風花は星水雨にそっと触れてみた。星水粒は、触れると葉の上で転がる。

 つまんで手のひらに乗せると、腕から肩へと移動したり、肩の上でくるくる回ったりする。

 まるで、意思を持っているようだ。

 小動物に甘えられているようで、風花はくすぐったい気持ちになった。




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