水の空の物語 第5章 第21話
優月の心に、蘇芳色の不安がよぎった。
今日の春ヶ原はどうだろう。植物たちは、あの現象に傷つけられはしないだろうか。
立貴の霊力で治せるとは思うが、やはり不安だ。いつまでも、彼の力で納められるとは限らない。
優月は、霊泉に視線を移した。
この霊泉は、精霊が宿っているわけではないのに、意志を持って、夏澄たちを護っている。
どうしたら、そんなことが起こるのだろう。
優月がここに来たのは、春ヶ原を護る霊力を、増やす方法を探すためだ。
春ヶ原の霊泉も意志を持てば、春ヶ原を護るのに協力してくれるかもしれない。
理由が分からないまま、荒れる春ヶ原。
今はまだ修復できるが、これから先も護れるとは限らない。
立貴に頼りっぱなしでなく、自分の力でも護りたい。
そう思って、優月はここに来た。
霊泉の件は無理でも、見聞が広い水の精霊を頼れば、知恵を借りられるかもしれない。
優月は、なにか答えが出るまで、帰らないくらいのつもりでいた。
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