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第三章 蓮峯山の小さな楽土 ……日本の洪水伝説。 洪水伝説とは、世界中の諸伝説に多く…
「えーっとね、蓮峯山の山々の間にある湖には、竜が住んでいる。池に大蛇が住んでいる」 「い…
不老不死……。 「え? 不老不死って、あの吸血鬼とかの?」 「オレは化け物じゃないぞ」 …
聞いても楽しくないぞと、飛雨はつぶやいた。 飛雨は、戦国武将の家臣の家の出身で、生ま…
「……ここまでにしよう」 長い沈黙が続いたあと、ふいに飛雨がいった。窓にもたれていた体…
少女は中学生くらいだった。 かわいらしいという表現がぴったりの子だ。かなり華奢で、長…
飛雨が降りたのは、木々の間に点在する岩の中で、一番大きな岩だった。 彼は『重かったー』と大きく息をつき、放り込む出すように風花を岩の上に下ろす。 目眩がして立つことができず、風花は岩の上に転がった。 「だいじょうぶか?」 飛雨が面倒くさそうにいう。 「胃が痛い」 半泣きの声が出た。 「オレも肩が痛いぞ」 「背中痛い。お腹が宙に浮いたー。夏澄くんだったら、お姫さま抱っこしてくれたのに」 「はいはい。でも、こういうのに慣れてくれな。強くないと、夏澄の役に
風花たちは、森の東を目指していた。 飛雨は忍者のように、枝にぶら下がったり、幹を蹴っ…
空気が痛い……。 風花たちは、山頂に続く坂道を歩いていた。 さっきまでは、笹原や枝…
「この鳥も、引き取って欲しいってことでしょ。今回は例外ってことでいいじゃない」 スーフ…
それきり、飛雨はなにもいわなくなった。 ありがとう、と、夏澄が風のようにささやくのが…
風花は、山頂の岩場を歩きまわっていた。 岩影を覗いても、木の周りを探しても、どこにも…
眉間にしわを寄せ、飛雨は岩の上に寝転がっていた。 ずっと黙り込んで、宙を睨んている。…
……懐郷。 風花の中に、そんな言葉が浮かんでいた。 夏澄の手をすがるように握り返す。 一面に咲いていた花は、桃色しろつめ草だった。 それが校庭三つ分くらいの、広い広い野原一面に咲いている。 しろつめ草は、ぐるっと木々に囲まれている。 桜、百日紅、花海棠、木香薔薇、雪柳、つつじ、木蓮。たくさんの木々が、色とりどりの花をつけていた。 どの木も満開だ。 花びらが舞って、しろつめ草の上に落ちる。息を飲むくらいの美しさだった。 本当に、一年中春の世界