トドメを刺して〜ロング・バージョン

　都合のいい女っていうのは私の事なんだろう。

　素肌にシーツを巻きつけて寝そべる私に背中を向けてタバコを吸う彼の後ろ姿を見ている。TVの明かりに照らされた彼の背中は細いのに程よい筋肉が付いていて、いい身体だなぁとしみじみ思う。

　いつもなら、ちょっと小洒落たホテルできっちり２回セックスする。そして、その後はバタバタと身支度を整えてそれぞれの家に帰る。けれど、今日は珍しくお泊まりだ。少し時間に余裕があるので、私は今まで聞けなかった事を思い切って聞いてみる。

　「ねえ。私との事どうしようと思ってるの？私ってあなたの何？」

　彼はゆっくりと私の方に振り返り、どちらとも取れる表情で私の髪をくしゃっとすると、そのまま立ち上がってシャワーを浴びに行ってしまった。

　一体、私は彼のなんなのだろう。

　彼は、私との未来を考えているのだろうか。

　本当は、私は分かっている。彼は私を愛していないって事を。私と離れたがっているって事を。

　そんな事を思っていたら、泣きたくなんてないのに涙が出てくる。彼に会う時は絶対に泣かないって誓ったのに。反対側を向いて丸くなっていたら、ちょっとウトウトしてしまった。

　しばらくして、彼がシャワーを浴びて出てきた。彼は、私が拗ねて寝ていると思ったのか、いつものように長いキスをする。ねっとりとした、舌の絡まるキス。そして、彼の手や指や唇は私が悦ぶであろう所に的確に触れてくる。

　もう、止めて。
　そんな手には乗らないんだから。
　いつもそうやって曖昧のままにしてしまうんだから。
　絶対に、感じないんだから。
　そうやって私をイカそうと思ってもそうはいかないんだから。

　ああ、それなのに。私の身体の情けない事よ。
　彼の手や指や唇で意識が朦朧となり、さらに彼に深く突かれて私はもうどうなってもいいやと思ってしまう。
　もう、行きつく所まで行くのだろう。

　愛されていないのに、こういう関係で繋がるのって意味があるのだろうか。私だけが愛している歪な関係に意味があるのだろうか。

　始まりは遊びでいいと思っていた。一晩だけの関係でよかったのに。思いがけなく長く続く関係に私はいつしか夢を見てしまった。

　だけど、もういい。

　彼は私にトドメを刺してくれないだろうか。私からは断ち切れないこの思いをもう繋がらないように切ってはくれないだろうか。

　彼はすやすやと寝息を立てている。

　今、彼の首をぎゅうっと締めあげたなら、私はこの苦しみから解放されるのかな。なんて事を思いながらベッドから出て窓の外の景色を見た。窓の外は夜中でもビルには明かりが灯り、たくさんの車がヘッドライトを光らせて走っていた。

　私達は、これからどうなっていくのだろう……

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最近、ふと聞きたいなぁと思った曲があります。
稲垣潤一さんのロング・バージョンです。

この曲は男性目線なんですが、逆に女性目線で創作してみました。
なぜかオトナな文章になってしまいました。なので、投稿時間もいつものお昼ではなく夜にしましたw

私は稲垣潤一さんを聴き始めたのは、高3の終わり頃からなんです。
最初はMind Noteから入って、過去作品を遡って聴いたりしました。その時に知った曲でした。

この曲を初めて聴いた時、いいなと思いました。まず、曲がいいです。そして、歌詞がまたなんとも。大人な歌詞は、当時はよく意味が分かりませんでした。
でも、分からないなりに、この恋愛関係はあまりいいものじゃないんだなぁとは思っていましたがw

意味が分かるようになると、なんかオトコずるくなーい？と思ってみたり。
最初はワンナイトのつもりだったのに、なぜかズルズルと続く関係。こういうのって、どうなんでしょうか。

女性もこの時だけと思って「遊びでいいから」って関係を持ったと思うんですよ。
なのに、続く関係。でも、オトコの方からは何も言ってくれなくって。これって女性はなかなか辛いと思うんですよね。

身体だけが目的なのか。都合のいいオンナなのかって。

これが女性側も好きな気持ちが無いのだったら、割り切った大人の関係でいいと思うんですが。この曲の場合は二人の愛情のバランスが取れてなさそうですし。

いっその事、オトコの方からトドメを刺してあげた方が親切なのかもしれませんよね。できれば、うんと嫌われるように仕向けたらなお良しですね。

ところで。

ロング・バージョンが入ったアルバム、めちゃいいです！
私、これはレンタルしてカセットにダビングして済ませたので、現物を持っていないんですよねぇ。中古で買おうかなぁ。
リマスター版だとシーサイドショット（夏のクラクションのＢ面）が入っているんです。私、シーサイドショット好きなんですよね。シーサイドショットは今までベスト盤にしか入っていなくて、ベスト盤で聴いていました。

あと、これも好き。

これはこのアルバムでは外せませんね！

今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪