年齢を重ねることへの不安と受容、人間ドックを終え、来年への勇気が含まれた一週間。つれづれなる肌感(12/11~17)
12月11日 え、オフィスにこたつ!?驚きの配達物
オフィスには時々、予想外のものが届く。今日もまた、若手が荷解きをしている様子に目が留まった。段ボールから姿を現したのは、まさかのこたつ。思わず足を止めて、二度見、三度見してしまう。こ、こ、こたつ。
私たちの働き方は、確実に変化している。かつて経験したベンチャー企業では、遊び心のある会議室で社員を楽しませる工夫があったけれど、こたつはさすがに初めての経験だ。以前は大量のみかんが届いたこともあった。一見すると不思議だけれど、実は重要なメッセージを運んでくる。
仕事の場所は、必ずしもデスクである必要はない。リラックスした空間だからこそ生まれるアイデアがある。ふと思い返せば、重要な決断の多くは、会議室ではなく、くつろいだ場所から生まれた。友人との何気ない会話、家族との食卓。場の力とは、不思議なもの。
オフィスのほわっとした空気を感じながら考える。働くということは、単にタスクをこなすことではない。人と人とが出会い、新しい価値を生み出していく営み。こたつがそーっと思い出させてくれているような気がした。
隣の席に座る同僚のPCに「早く寝ろ!」シールが貼られていた。ほんと、私、早く寝ろだな。万年睡眠不足。
12月12日 いちに、いちに♪ 親子で楽しむ電車ごっこ通学
「今日って<いちに、いちに>で、12月12日だね」
この何気ない親子の会話が、寒い朝の空気を温める。毎朝の登校は早く、子の口から漏れるのは文句ばかり。気をそらすためのネタを仕込んでおくのは、もはや親としての日課だ。
今朝は、家からミニ鉄道を走らせるという設定にした。歩きながらここで途中停車、あそこが終点、と紡いでいく。最初は渋々だった子の表情が、少しずつ柔らかくなっていく様子を見るのは、小さな勝利の瞬間だ。寒さで固まっていた心が、空想の列車旅で溶けていく。シュッシュ言いながら学校へ直行していった。ぷぷぷ。これぞ、子育ての醍醐味。
年内最後のヘアサロンへ向かう道すがら、考える。年を重ねるごとに、短い髪型が似合う年齢になってきた。毛先のダメージやヘアカラーの退色が気になり始め、3週間ちょっとの間隔でサロンに通うようになった自分がいる。本当は大晦日前にも行きたい衝動を抑えて、年明けすぐの予約を入れた。
年齢を重ねることは、自分との新しい付き合い方を学ぶ過程でもある。若い頃には気にならなかったことが気になり始め、そして、それを受け入れながら自分らしい解決方法を見つけていく。それは決して後ろ向きな変化ではない。
そんな中で、友人の小河園子さんが本を出版。「おうち英語」が私の心に暖かな光を灯してくれた。英語指導のプロであり、元高校教師として自らの手で生徒を海外へ送り出してきた彼女の経験は、本になる前から私の心を揺さぶっていた。企画段階から英語教育についての知見を伺える友人特権に、改めて感謝の気持ちが込み上げる。
日本の英語教育現場で常に新しいことにチャレンジし続けてきた彼女だからこそ、多角的な視点で語れる本になった。特に小学生の保護者に読んでもらいたいという思いを込めて書かれた一冊。
我が子もまた、今「英語が嫌でたまらない」と言って英語塾を退会した。正直に告白すれば、その言葉を聞いた時の失望感は大。でも、この本を読むことで子の未来に新しい光が差すかもしれない。そんな期待を胸に、園子さんの本を手に取りページを開いている。
子には“英語は楽しい”って本だよ!と見せているものの、彼にとってのハードルはまだまだ高いのかもしれない。それでも、私が読むことで楽しく、楽しく!
その一点を忘れずに進んでいこう。
12月13日 パリの香りに誘われ~スパイスと香水のキラキラ時間
朝から予定がパツパツの一日。家を出るまでに、自分で設定したタスクがどれだけこなせるか、内心焦りながら時計と睨めっこ。以前から始めたエクセルでの時間管理が、いつの間にかどこかへ行き、滞っていることに気づく。
新しい習慣を作ることの難しさを、身をもって実感する朝だ。でも、いったん離脱しても、また始めれば良い。離脱自体が失敗なのではなく、再開しないことこそが本当の失敗なのだと、自分に言い聞かせる。
黙々と執筆とメールの返信に没頭する時間。集中すると時間の流れが変わったように感じる。待ち合わせにはギリギリだったが、友人と訪れたのは高砂香料工業。「パリと香水-歴史を彩る香水瓶(フラコン)の世界展」の会場だ。
高砂香料工業株式会社「パリと香水-歴史を彩る香水瓶(フラコン)の世界展」
スパイスと香り。この二つの関係性を考えると、興味は尽きない。精油成分が香りの源となり、その香りが人の行動を大きく変える。思考をつかさどり、食欲に影響し、生活習慣すら変えていく。
パリはファッションと並んで香水の都でもある。展示されているパリの香水メーカー、ファッションデザイナー、宝石店の香水瓶やポスターが、時代を超えて物語を紡ぐ。実際に香水の香りを嗅げるコーナーもあり、嗅覚と脳、視覚と脳が刺激される贅沢な時間。
もともと香りにかかわる仕事への憧れがあった私には、香料会社への興味は尽きない。以前、長谷川香料での紅茶のフレーバー講義を受けた経験を思い出す。香りには深い探求の可能性がある。鼻から入って脳や耳、舌までに働きかけ、想像力を広げていく、その無限の可能性に魅了される。
スパイスもまた、香りという点で嗅覚に刺激を与えてくれる存在。香りの世界は、五感すべてを使って体験する豊かな領域なのだと、改めて気づかされた一日となった。
12月14日 スマホお休みの土曜。両親との小さなイベント
早朝テニスを終えて帰宅した子と、土曜日の過ごし方を相談する。自由になる時間が多い週末。今月から土日のSNS遮断を始めた私の決断は、家族だけの世界へ浸ろうとする小さな挑戦だ。
スマートフォンが生活の一部となった今、意識的に情報の流れを止めることは、予想以上に難しい。まだ無意識のうちに手が伸びてしまう。その度に、私たちがいかにデジタル依存しているかを実感する。でも、その気づきが、少しずつ新しい日常を作っていく。デジタルデトックスは、失うものではなく、得るものを増やす選択なのかもしれない。家族との会話が増え、子の表情の変化にも敏感になる。時間の使い方が変わることで、見える景色も変わってくる。
ふと、親に我が子の姿を見せることも大切な親孝行の一つだと気づく。最近疎かになっていた訪問を思い出し、連絡を入れる。「天気も良いから出てきて」という誘いに、快く応じてくれた両親。娘より孫が気になる様子に、複雑な思いと愛おしさが入り混じる。
世代を超えた愛情の形の違いを、今なら理解できる。私も親となって初めて、親の気持ちが分かるようになってきた。子はクリスマスプレゼントをせがみ、父母は本7冊を選んでくれた。物語の世界への招待状のような贈り物。大切に読んでほしいという願いが、その厚みに込められている。
本には両親の願いが詰まっている。知識、想像力、そして心の養分となるものを、本を通じて伝えたいという思い。デジタル全盛の時代だからこそ、紙の本が持つ特別な価値を感じる土曜日となった。
12月15日 新発見!?買い物大好き小学生と市場調査
早朝テニスレッスンを終えた子の帰宅で、家族が勢揃い。朝食を囲みながら、それぞれの日常を語り合う。食卓は家族の物語が交差する特別な場所だ。一人一人の小さな発見や失敗、喜びが共有される空間。
最近の出来事を話しながら、子の言葉の端々に成長を感じる。以前より自分の考えを言葉にできるようになり、大人の会話に積極的に参加してくる。そんな変化を見守りながら、親としての喜びを噛みしめる。
諸々片付け、近場の散策へ。子はスーパーマーケット巡りに夢中になっている。「ここは初めて行くね」と目を輝かせる姿に、新しい発見の喜びを見る。私たち親が調べ連れて行くのだけれど、その期待に応えられる喜びもまたある。かつては約束なしのお菓子を買い物かごに入れようとしていた時期もあったけれど、最近は違う興味が芽生えてきた。新商品のパッケージを眺めたり、値段を比較したり。消費者として芽生え始めた判断力を見るのは楽しい。子の成長は、こんな些細な変化の積み重ねなのかもしれない。振り返れば、一つ一つは小さな変化でも、それらが積み重なって大きな成長となっていく。その過程に立ち会える幸せを、改めて感じる休日となった。
12月16日 早く帰れる~!短縮授業で輝く、子のいたずらな目
今日から小学校の短縮授業が始まった。普段は早朝から機嫌の悪い我が子が、ウキウキとしている。早く帰れることへの期待らしい(何を企んでいるのか?)。子どもの心の動きを観察していると、純粋な喜びの表現に心が温かくなる。
文芸評論家「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」の著者でもある三宅香帆さんと都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家の谷頭和希さんによる「プロ育成ゼミ」一期生としての経験は、私の人生に新たな光となる。家庭の事情で全オンライン受講となったものの、画面越しだからこそ、客観的に自分と向き合える時間が増えた。オンラインという形態が、自分のペースで深く考えることを可能にしてくれた。講義の合間に自分の考えをまとめ、それを記録に残す習慣もついた。そして今、学びモードから発信モードへと意識を切り替えつつある。共に学んだの仲間たちと来年に向けた新しいプロジェクトも始動する。ちょっと私だけが興奮ぎみだったけれど初回の打ち合わせが終了した。画面越しだからこそ、言葉を選び、想いを丁寧に伝えられた気がする。
「がんばるぞ!」という素直な意気込みが、新しい挑戦への活力となりそうな予感。この気持ちを大切に、一歩一歩前に進んでいきたい。
12月17日 「はい、深呼吸」人間ドックと私の対話日記
一年で最も気が重い人間ドックの日が、またやってきた。年々オプション検査項目が増え、心身ともに負荷を感じる。これが歳を重ねるということなのだろう。受診前の不安は、毎年増すばかり。健康であることが当たり前ではなくなってきた年齢を、身をもって実感する。
早くやってほしいと身内に言われながらも、“予約の取りにくさ”と“希望時間の少なさ”に阻まれ、先延ばしにしてきた。今後年末はやめてくれと言われ続け(なにやら内々の手続き関係が面倒なのだとか)、今年もまた謝罪の言葉を口にする。でも、この面倒くささえも、誰かが私の健康を気にかけてくれている証なのかもしれない。
朝早くから夕方まで、半日以上を病院で過ごす。途中おむすびを食べた!
次々と行われる検査の合間に、人生を振り返る時間が自然と生まれる。自分の体と向き合うことは、そのまま人生と向き合うことでもある。帰宅後は完全な思考停止状態。体のあちこちが痛み、だるさが残る。健康診断で消費したカロリーも、きっと相当なものだろうと苦笑する。表示されないのか?してくれよと思っている。それでも、この疲れと引き換えに得られる安心感は、かけがえのないものだ。
年を重ねるということは、こうして少しずつ自分の体と真摯に向き合っていくということなのだろう。面倒で億劫な健康診断も、実は自分を大切にするための儀式。その気づきと共に、疲れた体を休める一日の終わりを迎えた。今日こそ、早く寝るぞ!