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人材採用・定着のカギは感情ケアにあり!
<執筆者紹介>
宮中 大介。はたらく人の健康づくりの研究者、株式会社ベターオプションズ代表取締役。行動科学とデータサイエンスを活用した人事・健康経営コンサルティング、メンタルヘルス関連サービスの開発支援に従事。大学にてワーク・エンゲイジメント、ウェルビーイングに関する研究教育にも携わっている。MPH(公衆衛生学修士)、慶應義塾大学総合政策学部特任助教、日本カスタマ―ハラスメント対応協会顧問、東京大学大学院医学系研究科(公共健康医学専攻)修了。
はじめに
近年「感情ケア」の重要性が増しています。感情ケアとは、日々の感情的な負担を蓄積させることなくなるべく良い気持ちで毎日を過ごすスキルを指します。今回はこの感情ケアの重要性について解説したいと思います。
今なぜ感情ケアか?
これまで、働く人の感情ケアは重視されてきませんでした。その背景には、「お客様は神様」という意識や、接客業におけるプロ意識の強調があります。そのため、対人サービス業においては、接客技術の研修はあっても、感情ケアは個人の領域とされ、業務上での研修はほとんど行われてきませんでした。
さらに、対人サービスの分野では中小企業が多く、感情ケアに投資する余裕がなく、業務委託やパートといった雇用形態が多いため、人的投資の対象にされてこなかったという事情もあります。
それではなぜ今「感情ケア」なのでしょうか?
その理由として、次のような社会的変化が挙げられます。
外国人居住者や観光客の増加 都市部を中心に外国人対応の機会が増えています。日本人同士なら「阿吽の呼吸」で通じることも、異文化間では伝わらないケースが多く、対応する側の精神的負担が大きくなっています。
高齢者の増加による対応の複雑化 高齢化が進む中で、視聴覚機能の衰えに配慮したコミュニケーションが求められています。例えば、高齢者に対してゆっくり話す、聞き返しにも丁寧に対応するといった工夫が必要ですが、それが対応者のストレスにつながることもあります。
こうした要因によって、対人サービス業に従事する人々の精神的負担が増しており、感情ケアの必要性がかつてないほど高まっているのです。
感情ケアに取り組むメリット
感情ケアに取り組むメリットが最も大きいのは、現在人手不足が深刻化している対人サービス業だと言えます。特にインバウンド対応の職種では時給の上昇が話題になるほど、労働力の確保が難しくなっています。
その中で、感情ケアに投資することは 採用の面で有利 になる可能性があります。求職者にとって、給与や福利厚生だけでなく、働きやすい環境やメンタルヘルスへの配慮が企業選びの重要な要素になっているからです。
また、感情ケアに投資することで 人材の定着率を向上 させることができます。実際に、離職率が高いのは対人サービス業であり、厚生労働省の統計でもサービス業の離職率の高さが示されています。
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対人サービス業の離職率の高さの背景には待遇の低さも考えられますが、それだけでなく、カスタマーハラスメント(カスハラ)や感情ケアの不足による バーンアウト(燃え尽き症候群) も原因となっている可能性があるのです。
まとめ
これまで、対人サービス業では感情ケアが軽視されてきました。しかし、人手不足が深刻化する中で、 人材採用・定着の観点から感情ケアへの投資が重要性を増しています 。
従業員の感情ケアに取り組むことは、企業の競争力を高め、持続可能な成長を実現するための鍵となるでしょう。当サービスでは、企業向けに実践的な感情ケアプログラムを提供しています。従業員のメンタルヘルスを守り、離職率を下げる施策についてご興味のある方は、ぜひご相談ください!
以 上