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カスハラ対策はなぜ人事の仕事なのか?


<執筆者紹介>

宮中 大介。はたらく人の健康づくりの研究者、株式会社ベターオプションズ代表取締役。行動科学とデータサイエンスを活用した人事・健康経営コンサルティング、メンタルヘルス関連サービスの開発支援に従事。大学にてワーク・エンゲイジメント、ウェルビーイングに関する研究教育にも携わっている。MPH(公衆衛生学修士)、慶應義塾大学総合政策学部特任助教、日本カスタマ―ハラスメント対応協会顧問、東京大学大学院医学系研究科(公共健康医学専攻)修了。

はじめに

近年、対人業務を担う従業員の採用がますます難しくなっています。特に、営業やコールセンターなどの顧客対応部門では、求職者が「この会社で安心して働けるか?」を重視する傾向が強まっています。その鍵を握るのが、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策です。

「カスハラ対策は営業やカスタマーサポート部門の管轄」と考えがちですが、人事部門が積極的に関与しなければ、採用競争力の低下や離職率の上昇につながる可能性があります。では、具体的にどのような点が人事の課題となるのでしょうか?


1. カスハラ対策は採用力を左右する

求職者は企業を選ぶ際、給与や福利厚生だけでなく、「働きやすさ」や「安心して業務に取り組める環境」を重視します。特に、顧客対応の仕事を希望する人にとって、会社がどのようなカスハラ対策をしているかは、重要な判断基準となります。

例えば、貴社では以下のような情報を採用候補者に伝えられますか?

  • カスハラ対応基本方針があるか?

  • 顧客対応マニュアルが整備されているか?

  • 管理職がカスハラ対応について適切に教育されているか?

これらの情報を明確にし、採用の場面で伝えることで、安心して応募できる環境をアピールできます。そのためには、人事部門としても、自社のカスハラ対策について理解しておき、採用候補者目線で理解しておく必要があります。


2. 管理職の適切な対応がセカンドハラスメントを防ぐ

カスハラを受けた従業員が、上司や会社に適切に対応されないと、それ自体が「セカンドハラスメント」となり、深刻な離職リスクを生みます。
たとえば、パーソル総合研究所の調査結果においても、一定の割合の従業員はカスタマ―ハラスメントに対して会社や上司が適切に対処してくれなかったと回答しています。


出所)パーソル総合研究所「カスタマーハラスメントに関する定量調査」


出所)パーソル総合研究所「カスタマーハラスメントに関する定量調査」


さらに、ハラスメント全般として、直接被害を受けた従業員だけでなく、その対応を見聞きした同僚に影響することが、さまざまな研究でも明らかになっています。カスハラにおいても、その影響範囲は直接の被害者に留まるものではないと考えられます。

カスハラ発生時のセカンドハラスメントを防ぐために、人事部門としては、現場のマネージャーや管理職に対して以下のような内容を含む研修の実施が望まれます。

  • カスハラ対応の基本

  • カスハラに遭った部下への適切な対応

  • 自社のカスハラ対応方針の理解

  • 管理職自身のメンタルヘルスケア

特に、対人業務を担う部門では、管理職の対応が組織全体の士気や職場環境に大きな影響を与えるため、体系的な研修が欠かせません。


3. 従業員の感情負担を軽減する取り組み

カスハラに限らず、顧客対応業務では日々の対人折衝・クレーム対応などで従業員の心理的負担が蓄積します。その結果、メンタルヘルス不調やバーンアウト(燃え尽き症候群)につながるケースも少なくありません。現在企業では、従業員対象のメンタルヘルス研修を実施されていることが多くなりましたが、営業部門・顧客対応部門に対しては、特に感情ケアに特化した取り組みが求められます。

感情負担の軽減策として、以下のような取り組みが考えられます。

  • リフレッシュ可能な休憩場所の物理的環境整備

  • 従業員同士が感情を吐き出せて、労い合えるような時間の確保

  • 感情労働の負担を軽減する研修の実施(ストレスマネジメント技法の習得)

  • 保健師や外部相談窓口の周知

これらの施策を講じることで、従業員が長く安心して働ける環境を整えることができます。


まとめ

カスタマーハラスメント対策は、顧客対応部門だけの課題ではなく、企業全体の人事戦略として取り組むべき重要なテーマです。人事部門が主導し、採用時の情報提供や管理職教育、感情負担のケアを強化することで、採用力の向上、離職防止、ひいては企業ブランドの向上につながるでしょう。

弊社では、人事分野のデータ分析支援、コンサルティング、カスハラ対策の専門家として、貴社の課題解決をサポートしています。具体的な対策を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

以 上


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