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アシュラ 飽食と飢餓

「母さんが作りすぎるからあかんねん。」最近太り気味の次男からクレームが入った。「もう社会人やねんから、食べる量は自己責任やろー。」と私。

我が家は、三男がスポーツ推薦で高校入学以来、更にボリューミーで栄養価を高めた料理になった。始発で登校、夜9時半に帰宅する三男は腹ペコ。麺用丼鉢のご飯に見合う、おかずの量を用意している。

…三男は細マッチョを鍛え上げ中。私と次男は確かにふっくらしてきた。盛る量を調整はしているのだが…

しかも私は毎日、庭に出てワイルドベリーにブルーベリーをつまみ食い。トマトも赤くなり始めた。ハーブを摘んではサラダやトーストにトッピング。

冷蔵庫には数日分の大量の生鮮。引き出しにはストック食品が詰まっている。これが日常。


先日、机で作業する時に、掛け流す為のプライムビデオを選んで再生した。

『アシュラ』2012年。日本のアニメ映画。ジョージ秋山の漫画原作。飢饉の為、食べ物がない時代に生まれ落ち、産んだ母にさえ食べられそうになりながら、人肉を食べて野獣の様に生きる少年が人の情けを知り、人間の心を取り戻す話。いつもは最初の設定を見て、後はチラ見で聴いていることが多いビデオだが、今回は最初から最後までガン見してしまった。

2つ。感慨深いところがあった。

1つ。よい出会いが人を良い方向に導く…それは優しさと慈しみ。物や心、人に分け与える施し。

2つ。平安時代の絵巻物に『餓鬼草子』などに書かれていた鬼は、空想の産物ではないのだと実感した。餓えは現実なのだ。

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骨に皮が張り付いた様な、細い手足にあばら骨。異常に膨らんだ腹をした鬼が、人の間にいて、何かをつけねらっている浅ましい姿が描かれている。

仏教を広める為、六道の餓鬼道の醜さを表したと言われる絵。

だけどこれは史実を描いていたんだ。空想でも、ただの教訓でもない。リアルな現実を描いたものだと気付いた。

権力抗争の上の動乱は田畑を踏み荒らす。長雨、冷気、洪水、日照りなど大凶作を呼ぶ異常気象。作物が実らず、草の根をあさるも、日照りは、草木も枯らし、川は干上がり、動物も息絶える。民衆は飲食出来ず、なすすべなく飢餓に苦しむ。

食べ物を求める人々が群れをなし、領主の米蔵を襲う。離村し、食べ物を求め都市に向かうも、飢餓で苦しむ人が押し寄せる都市は対応し切れず、破綻する都市も。飢えて痩せ細り腹だけ出た姿の民衆が町のあちこちで恵みを求め、人の糞まで狙い、行き倒れ、死体があちらこちらに野ざらしに放置される。

死体は、服を剥がされ、髪は切られ、野鳥につつかれ、肉は人に食べられることもあったと言う。地獄絵。

日本は、こうした酷い飢饉を何度も繰り返してきた。そういえば、学校の歴史で習った言葉だ。飢饉も、一揆も、離村も。酷い時は10万人以上の人々が亡くなった記録が残っているのに、お米がないなら雑草を食べたり、狩猟生活をすればいいのにと、思っていたのが恥ずかしい。


2021年現在、世界ではまだまだ、骨に皮が張り付き、お腹が異常に出っ張るまで飢える人が沢山いる。以下はWFPのHPより抜粋。

”世界には、子どもたちに栄養のある食べ物を与えられない親がたくさんいます。すべての人が食べるのに十分な食料が生産されている一方で、6億9000万人がいまだに毎晩空腹を抱えたまま眠りについています。2019年には55ヶ国1億3500万人が急性食料不良に直面しました。さらに、3人に1人が何らかの栄養不良に苦しんでいるのが現状です。
飢餓と栄養不良をなくすことは、私たちの時代に課せられた大きな課題の1つです。食事の量が足りなかったり、質が悪かったりすると、人々の健康状態が悪化するだけでなく、教育や雇用など他の多くの開発分野の進展を遅らせることにもなります。
2015年、国際社会は2030年までに人々の生活を改善するために17の目標からなる「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択しました。その2番目の「飢餓をゼロに」という目標は、飢餓を終わらせ、食料安全保障を実現し、栄養状態を改善するとともに、持続可能な農業を促進するというもので、国連WFPの優先課題です。”

更に度重なる内乱や戦争で国を出て行かざるをえなくなった難民が溢れていて、更にコロナ禍で食糧の確保が深刻な問題になっているとのこと。


普通に仕事をして収入を得て、そのお金で自分達が満足、それ以上の豊かな食生活をしている。だけど、同じ地球に住みながら、飢餓に苦しんでいる人がいる現実。悲しくなる。

日本には、7月8月になると、お施餓鬼と言う行事がある。亡くなった家族の霊を自宅に帰ってきてもらうお盆。迎えてもらえなかった霊が嫉妬して邪魔しない様に、そういった霊にも施しを捧げて癒してあげる行事とのこと。自分や身内だけでなく、他人にも分け与えることで、みんなが幸せになる様にと言う教え。多分、食べられない苦しみの中で亡くなった人々の霊をともらう行事でもあっだのだろうと思う。

私が世界の飢えた人達のために出来ることはなんだろう。とりあえず、月々の寄付にポチッとした。気休めかも知れないが、小さな貢献。みんなが力を合わせれば大きな力になるはずだから。

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みと吉 禮子 (みとよし れいこ) 絵本作家
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