読書記録)山口祐加 星野概念(対話に参加) 『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』
本の情報
著者 山口祐加 星野概念(対話に参加)
書名 『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』
出版社 晶文社
出版年 2023年
出会い
大木春菜ちゃんの紹介
ここ数年は「だれかのフィルター」と「わたしのフィルター」のふたつ以上を通してピンと来たものを読むことが多い。
購入場所
自宅から徒歩圏内の書店
「積ん読ゼロ」が友人との話題に何度か上がったので書いておく。「わざわざ買いに行きたいか」も本を読むか否かのわたしの指標。在庫検索をして見込みのある書店に行くことが多い。書店があってほしいのでなるべく利用している側面もある。
内容
オンラインでの料理教室とインタビューの記録。自分のために料理が作れないと悩むひとたちと山口祐加さん(自炊料理家)、星野概念さん(精神科医など)が向き合う。料理の技術や知識、家族構成、そういうこと以前の「問題」を深掘り。一筋の光を投げかける一冊。
勧めたいひと
「自分のために料理を作りたい」と思っているひと。そのまんまかもしれない。著者のストレートな気持ちや取り組みの直球をぜひ受けとってほしいので、あえてひねりなく書く。「自分だけではない」「仲間が見つかった」と感じるみたい。料理のヒントが見つかるかも!
感想
本を読んでわかること。著者の主張。
もうひとつわかること。自分の主張。
そんな風に感じた。
山口さんの料理教室は自分のために料理をしたいひとにとって理想的だろう。言葉に行動にすべて筋が通っていて伝わるものは大きいと想像する。料理に関わる者として尊敬する。
山口さんの主張を否定するわけではない。わたし自身、自分のために料理するひとりだ。しかし「自分のために料理を作ろう」と一緒に主張したいわけではない。いちばんの主張はそこにない。
「ただつくろう」
そう主張したいと確認した。
自分のためもしくはだれかのために料理をする。思っても思わなくてもいい。どちらでも料理はできあがる。
「一汁一菜」と聞けばひとによっていろいろな印象を持つらしい。「丁寧な暮らし」「シンプルな暮らし」「質素な暮らし」など。どれも目指してない!
「丁寧」「シンプル」「質素」などなにか形容することでご本人がごきげんになるならそれもいい。ただ望んでいないのに目指すのはなにか違う。主観的なことに振り回される必要はない。
毎日の具沢山味噌汁は淡々とつくっている。料理するという意気込みはない。鍋に入れるだけだから。お風呂や洗濯、子どもの宿題の確認など夜の一連の流れのひとつだから。
本当に淡々とつくっている。やや誇張かもしれないけれど「無」に近い。毎日同じ順番で手を動かして、ほかのことも同時並行している間に、晩ごはんができていく。料理する中で五感であれこれ感じはするけれど深く味わってはいない。まさに流れ。
食べるために生きているわけではない。料理するために生きているわけでもない。あれこれ考えたり言ったりしているうちに、具沢山味噌汁とごはんならできてしまう。
ただ、つくろう。
ただ、食べよう。
料理できることに、食べられることに感謝して。
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