- 運営しているクリエイター
記事一覧
探し物はなんですか~前書き編~
基本的には私はいろんな文章に感銘を受けやすいタイプの人間でなので、基本的にどこから引用することが多いのだ。
というわけでこちら。2018年7月に起きた実際の事件である。結構ガチで困ったのだけど、これもいいネタだと思いとりあえずFBに書いてみたのだ。
とりあえずご紹介がてら。
探し物はなんですか~第1話:序章~
暑いなぁ。ひどく暑い。こんな日にこそスイカが食べたいのに。仕事終わりのジョギングを終えた私は製造途中のアルコールスイカを恨めしそうにみつめながらそう思っていた。あぁ早く食べたい・・・
そう、そうなのだ。なかなか減らないのだ。
アルコールスイカとはアメリカではやっているパーティー料理であり、ネット上で見つけてこれは面白そうだからぜひ作ってみようと喜び勇んで買ってきたのだった。しかしスイカに突っ込ん
探し物はなんですか~第2話:散歩~
「きんぐ、ぼく散歩ついでに見てくるよ」
丸メガネをかけたシュッとした恰好の男は気軽にそう言った。
しかし私はそれがついでではないことを知っていた。こんな真夏の暑い夜に気軽にいきたい場所ではないことぐらいわかっていたのだ。そしておそらくその試みが成功する可能性が極端に低いことも。※ちなみにきんぐというのはシェアハウスでの私の俗称である。どうやらみさきんぐからきているらしい。
「いや、でももう見
探し物はなんですか~第3話:過重~
2018年6月、私は太っていた。いや太った私がそこには存在していた。
健康診断の結果、太り気味と診断された私は自身の生活習慣を顧みていた。筋肉の分だよ、というのはただの言い訳であることも知っていた。なぜなら昔はもっと軽かったのである。
175 ㎝の標準体重が67キロであるというところからすると、それをはるかに上回っていることになる。確実に飲みすぎてカロリーオーバーに陥ったのだ。
しかし7月末
探し物はなんですか~第4話:愕然~
私がそれに気づいたのは8キロ走ったあとの達成感に浸っていた時であった。
私は歩きながらランニングポーチから携帯電話を取り出し、その中にあるであろうそれを探していた。しかしいくら指でひっかきまわしてそれらしき感触にぶつからない。私の指先がポーチの中で何度も宙を舞う。
焦った私は乱暴にランニングポーチをひっくり返してみた。しかし、ない。逆さに振ってみても、たたきつけても、そこにあるであろうそれがも
探し物はなんですか~第5話:説明~
あまてらす太陽が沈み闇が迫る中、キョロキョロという擬態語を見事に体現するかの如く首を左右に動かしている男がそこにはいた。
私だった。
数時間前に走ったであろう場所を懸命に思い出しながら私は必死に探していた。
もしそれが落ちていたら路上でキラリと光るはずだ。自転車のライトで辺りを照らしながらゆっくりと進んでいた。
しかしいくら探してもでてこない。もしかして車が撥ねてあっち側にいってしまったので
探し物はなんですか~第6話:探索~
夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。もちろんその理由が私にはわかっていた。なかなか見つからないのだ。
鍵が・・・
丸メガネをかけた男は最初は意気揚々としていたものの、この暗闇の中ではその作業がなかなか難しいということを悟り始めていた。
月明りと携帯のライトだけではあたりを完全に照らすことはできず、様々な方向を照らしながらカギを探す作業は困難を極めていた。
そし
探し物はなんですか~第7話:落胆~
ぬか。ぬか漬け、米ぬか。
穀物を精白した際に出る果皮、種皮、胚芽などの部分のことであるが、私はそのぬかに対していいイメージがなかった。
栄養があるのかもしれないけども、単に食わず嫌いなだけかもしれないけども、どうしてもあの単語しか思い浮かばないからである。
そう、喜びだ。
最近ではワールドカップで格上チームに対して後半に2点を奪取し、これは勝っただろうと確信した瞬間に怒涛のように失点し逆転負
探し物はなんですか~第8話:不眠~
その日はまるで熱帯雨林の中にでもいるかと思うほどだった。
今夜ほど寝苦しいという言葉が似合う夜はない。
そう思いながら私はまとわりつくような暑さを少しでも紛らわそうとベッドの上で何度も寝返りを打っていた。
しかし私は寝苦しい理由が気温だけによるものではないこともわかっていた。なぜならここ最近日本列島を襲ったこの勢力の強い高気圧は先週からいすわっていたし、熱帯夜もここ最近ずっと続いていたからだ
探し物はなんですか~最終話:早朝~
私がそれをカギと認識したのにそう時間はかからなかった。
しかしここで喜ぶのはまだ早い。だいたい太古の昔からカギというのはほぼ形を変えていない。違うカギの可能性も捨てきれないぞ。
またしても穀物を精白した際に出る果皮、種皮、胚芽などのえじきになってなるものか。
私はゆっくりとそれをつかんだ。表面が少し傷つきリングが歪んでいるが紛れもなくカギである。
しかしまだ浮かれてはいけない。私は家のドア