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探し物はなんですか~第6話:探索~

夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。

もちろんその理由が私にはわかっていた。なかなか見つからないのだ。

鍵が・・・

丸メガネをかけた男は最初は意気揚々としていたものの、この暗闇の中ではその作業がなかなか難しいということを悟り始めていた。

月明りと携帯のライトだけではあたりを完全に照らすことはできず、様々な方向を照らしながらカギを探す作業は困難を極めていた。

そしてこの時私はもしかするともっと自分が根本的な過ちを犯しているのではないかと考え始めていた。なぜならこのランニングポーチに入れて自然に落ちるはずがない。

もしかすると最初からいれてなかったのではないか・・・

実は部屋に忘れて置いてきたのではないか・・・

しかし覚えている。しっかりとこのポーチにカギを入れた記憶があった。それに会社のカバンの中や家の机の中もサッと見たがそこにはなかったのだ。
どれくらい経っただろうか。

ふと我に返って辺りを見渡してみた。

すると携帯から放たれるわずかな光によって影が生じ、その影が私の動作に合わせて右へ左へ揺れていた。それはまるで小さな妖精が城址公園を舞台に軽快にダンスを踊っているかのようだった。

カバンの中もつくえの中も探したけれど見つからないのに、まだまだ探す気ですか?それより僕と踊りませんか?

そうあざけ笑われているかの如く。。

このままないとしたら・・・・巨大な不安で心が溢れそうになる。また携帯のライトをあちらこちらに振りかざす腕に限界がきそうだった。私は思わず首を振った。

いや、どんなことがあっても見つけなければならない。たとえこの腕がへし折れようとも。

なにせアバッキオの野郎だって「鍵」のために自分の手を切断した・・・この私だって。
こォォれしきィィの事ッ!!!
こォれしきィィイイのオオ事ォォオオオ!!

かろうじてテンションを保ちながら城址公園を一周したところで、私はある決意をした。やはり朝探そう。そのほうが効率的だ。

丸メガネの男にそう伝え、私たちはやりきれない思いを胸に帰途についた。そうさ、ただ散歩していただけさ、そう言い聞かせながら。。

その時だった!

城址公園から北に延びる道の少しくすんだアスファルトの上に、丸くて先のとがっている黒い影があるのを私の眼は逃さなかった。私は叫んだ。

「これは、もしかして!!!」

つづく


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