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医療用麻薬の誤解と真実 〜痛みと向き合う選択〜
あなたは麻薬と聞くとどんなイメージですか?
覚せい剤や不正麻薬の所持や使用によって 有名人が逮捕される報道もあって一般的にイメージが悪いのが現状です。
そういったこともあり、医療用麻薬に関する誤解や偏見を持っている方も少なくありません。
「麻薬を使うくらいなら痛みを我慢する」といわれる、がん患者さんもいます。
がんの痛みに対して、医療用麻薬は効果が期待できるのです。
よく患者さんやご家族から次のような質問を受けることがあります。
例えば
・麻薬を使い始めるということは、がんの末期と
いうことでしょう?
•これ使い始めたら、死ぬまで使い続けないといけないんでしょう?
•寿命が縮まるんでしょう?
実際は、がん性疼痛がある時点で使うので、治療し始めの人も使用することがあります。
医療用麻薬を使いながら、痛みをコントロールして社会復帰して仕事をされている方もいたり、治療で腫瘍が小さくなり痛みがなくなったため、徐々に減量して中止していく場合もあります。
だから、必ずしも一度使い始めたら止めれないものではありません。そして、がんの末期の人だけが使うものでもありません。
寿命に関しては、麻薬を使用した場合とそうでない場合の大きな差はないとされています。
医療用麻薬の3大副作用は主に便秘、吐き気、眠気です。
便秘に対しては、医療用麻薬を定期的に使用している患者さんの約80%が便秘の経験をします。下剤を上手に使うことで対応できます。
吐き気に関しては、医療用麻薬の開始時・増量時に生じやすい副作用のひとつです。多くの場合、1〜2週間程度で体が慣れてくると、自然に吐き気は改善します。
眠気に対しても、必ず生じるわけではありませんが、医療用麻薬を始めたときや増やすときに生じることのある副作用のひとつです。こちらも1〜2週間程度で体が慣れてくると自然に改善してきます。
剤形も、錠剤、坐薬、貼付剤、注射などがあります。
その人の状態に合わせて、錠剤を使うのか、貼付剤を使うのか、注射にするのか検討していきます。
呼吸困難感に対しても、医療用麻薬を使うことがあります。息苦しさを和らげる効果も期待できます。
ある夜勤の日、巡室するとその日に入院したばかりの患者さんがベッドにうずくまっており、痛みで動けない状態になっていました。
人って「痛み」が続くと死の恐怖を感じるのです。
入院前から、痛みでずっと眠れない状態が続いていました。
あまり薬を使うことに前向きではなかったけれど、
あまりの痛さに耐えられない状態で、その日は「飲んでみます」と言われたのです。
薬を飲んだ後も、しばらく付き添っていました。
ちょうど薬が効いてくる時間になり、「やっとラクになってきました。」と険しい表情から安堵の表情に変わったのです。
その夜、初めて朝までぐっすり眠れたそうです。
しばらく経って、痛みのコントロールも良く、
退院されていきました。
その時に患者さんが、「麻薬だけは使いたくないと思っていましたが痛みがラクになるのなら、あんなに我慢しなくて良かったのにと、今となっては思います。あの薬を使う時は、いよいよ最期の時と思っていたけど、そうではないんですね。」と話されていました。
このように思っている方は少なくありません。
色んな誤解が少しでも、解けたらと思い今日はnoteに書きました。
必要な人に届けばと願っています。