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万華鏡/カレイドスコープといえば・・・書評: ルシア・ベルリン『楽園の夕べ――ルシア・ベルリン作品集』(岸本佐知子訳、講談社)
「図書新聞」No.3665(2024年11月30日号)に、ルシア・ベルリン『楽園の夕べ――ルシア・ベルリン作品集』(岸本佐知子訳、講談社)の書評が掲載されました(書評へのリンクは最下行にあります)。
本書は、『掃除婦のための手引き書』、『すべての月、すべての年』に続く、ルシア・ベルリン作品集の第三弾です。ベルリンはすでに日本でも多くの読者を虜にし、熱心なファンが増え続けています。みなさんの中にも、新作を心待ちにしていた方も多いのではないでしょうか。
と言いつつ、実は話題になっていたにもかかわらず、わたしはベルリン作品を未読のままでした。今回、書評を書く機会をいただき、3冊を一気に読もうとしたときには「これはちょっと大変かも…」と思いました。ところが、とんでもない! ページを開いた途端、ぐいぐい引き込まれ、あっという間に熱心なファンの仲間入り。どうしてもっと早く読まなかったのかと後悔しました。
第一印象は万華鏡――クリシェのような言葉はなるべく避けたかったのですが、これほどベルリン作品にぴったりな言葉はないと思います。万華鏡=kaleidoscope という単語から、サイケデリックなイメージを読み取る人もいるかもしれません。わたしの頭の中ではビートルズの "Lucy in the Sky with Diamonds" が流れます("The girl with kaleidoscope eyes"という歌詞があります)。歌のもとになったのはジョン・レノンの息子ジュリアンが描いたというこちらの絵。空に万華鏡が浮かんでいるようです。
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スージー・アンド・ザ・バンシーズ(Siouxsie and The Banshees)の "Kaleidoscope"というアルバムもあります。そこに収録された "Christine"という曲は不思議な歌詞なのですが、実は、解離性同一性障害に苦しむ女性を描いており、そこにもkaleidoscope という語が出てきます。万華鏡という日本語のイメージとは重ならない部分も大きいように感じます。
話が少し脱線しましたが、ベルリン作品には、クラシック、ロック、ジャズと、ジャンルを問わず音楽がたっぷりと流れています。人工的な音楽だけでなく、大自然が奏でる音に耳を澄ます瞬間も、ベルリンの持ち味のひとつです。
ベルリン作品を読むと、まぶしい陽光を浴びているような感覚に包まれることが多いのですが、この3作目ではその光が徐々に収束し、最後の作品では穏やかな月の光に包まれるような静けさが広がります。また、本作ではこれまで以上にスペイン語が多く使われており、異国情緒が強く感じられます。
ぜひベルリンの世界に誘われ、万華鏡の中を漂うような不思議な感覚を体験してみてください。
「図書新聞」編集部の許可を得て、投稿いたします。
https://toshoshimbun.com/
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