詩『器としての身体』

(5.)
汗を大量にかいた日の終わり
えいやっ、と気合いを入れて
裸に一糸纏わぬ無防備な姿で
もやもやした風呂に侵攻する

(4.)
部外者はシャワーで清められ
おおきな鏡がくぐもる浴室で
羞恥心の密室殺人事件が成立
湿度が上昇気流に乗ってゆく

(3.)
風呂場を浮浪する魂の在処よ　
還るところを知らないままに
旧知のよごれを洗い流されて
迷子のたましいが赤く火照る

(2.)
泣きなさい、笑いなさい、と
湯気満ちて花は歌う風は噴く
垢を落として浴槽に苺を注ぐ
原始のいろに染め上げられて
　

(1.)
生んで熟んで生み直して、と
義理のおかあさんに懇願する
血の繋がりとやらを超越して
あたらしい身体を欲している

(……000……)

うつわうつわうつろなうつわ
うわわうわわうわきなうつわ
口移しするから器はいらない
うわうわわお役御免になるわ

うつわうつわうつろううつわ
うわわうわわうきわのうつわ
うわうわわ真ん中が空洞だわ
うつすうつわは交換可能な器

うつるうつる移ろいゆく映像
うつわうつわ器としての身体
たましいを乗せてさまよう器
歌をうたうわうつわはうたう

撃つわ撃たれるわ器と器たち
うつつうつつをぬかすうつわ
うつわうつわ撃たれても空洞
うつわうつわ器はゆめうつつ

うつわうつつに目覚めなさい
うつつうつわから脱皮したい
麻痺した四本の手足しびれて
うつわうつわうつわはうつわ

photo:1見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、500mlさん)

photo:2～4、フリー素材
design:2～4未来の味蕾
word:2～4未来の味蕾