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#文学フリマで買った本(4)&文学フリマ記
#文学フリマで買った本 (4)&それにまつわる文学フリマ記の第四回目であります。どの回からでも読めます。今回もお付き合いください。
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私は冬野梅子さんのブースで参加、初出店
今回は品品(ピンポン・ex世田谷ピンポンズ)『品品喫茶譚III』
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装丁も味わいがあってお洒落。カバーをかけ損ねて少し表紙の角が折れてしまった。すみません。
世田谷ピンポンズから品品(ピンポン)さんへ改名
品品(ピンポン)さんは昨年10月に世田谷ピンポンズから名前を品品(ピンポン)に改名した。実は、私のペンネームはピンポンズさんを意識していた。漢字プラス片仮名の名前は文筆家っぽい。しかも苗字は地名。こっそり似たパターンの自分のペンネームをぼんやり名乗り始めようとした矢先、ピンポンさんは改名された。
私のペンネームの由来
ペンネームを考えた時に、お世話になっている人に相談してみたら、案というか例えとして、今のペンネームに似たものが出てきてしっくりきたから使っているのだけど、他にも『ガチミオ』というのがあった。『オザケン』みたいに名前を略される前に、先に自ら略せ、とのことだったが、ガチはなんだ…ガチンコミオか……じゃりン子チエみたいなもんか……
よくわからないがガチミオもキャッチーでインパクトがあってそれはそれで良いのではと思ったけど、名前負けするなと思ったし、第一自分の名前を名乗る時に恥ずかしさを伴うので(ガチで自分のことを文章に書こうという気概はもちろんあるけど)今の連雀ミオに落ち着いた。名前が変わると生まれ変わったような気にもなる。私もいつか『ガチミオ』に改名する日はくるだろうか。それまではこの世田谷ピンポンズ方式を勝手に踏襲した名前でがんばりたい。
品品さんの本のファン
ピンポンさんといえば、フォーク歌手であり、文筆家である。私はピンポンさんの本のファンであり、音源は聴くものの、ライブは観たことがない。本来ならどちらも好きが一番だろうけど、それは大槻ケンヂ的でもある。オーケンやら筋少のライブは行ったことはあるし、CDも出たらチェックするけど音楽より文章のファンだ。お金と時間があれば両輪揃って好きになれるのかもしれない。その辺の好きのバランスは未だによくわからない。
その分、どちらも好き!この人の何にもかもが好き!みたいな変なイリュージョンがかかっていない分(イリュージョンがかかるほどゾッコンで好きになるものから得られるものはあるけど、行動するエネルギーみたいなもので時が経つとそのものの価値自体はそれほどでもなかった、となることが多い。依存行為だ。それは宗教みたいなものでもある)その本来の良さを享受できている気もする。あとは、好きなものは取っておくクセみたいなものも影響しているかもしれない。大好きな海老フライは最後に食べる。取っておいて、やっぱり後に予感通りとてもハマってしまったものが過去にわりとあるから変な予防線を張っている。あとは昨年からストレスで耳の調子が悪いので、今は本を読んでいる時の方が落ち着くというのもある。
『都会なんて夢ばかり』(2020年)
そんなわけでピンポンさんの本のファンで、最初の出会いはピンポンさんの自伝『都会なんて夢ばかり』だった。吉祥寺のBOOKSルーエで買った。装丁を見たばかりでいかにも本が好きな人が書いて作った本だった。太宰や又吉やオーケンやみうらじゅんから受け取るものと同じにおいがして一気に読んでしまった。やっぱりピンポンさんも銀杏BOYZが好きだった。けれどちゃんとピンポンさんの世界があった。ピンポンさんの素直な文章の感じが好きで、自分もそういうものが本当は書きたいけれど、私はたぶん真似してもそうはなれない。それは銀杏BOYZを聴いて自分はなんで男の子じゃないんだろうという感覚に似ている。
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CD付き
『実家』(2024年)
前作の『実家』も良かった。私は最初の『都会なんて夢ばかり』がとても好きなので、それから時が経った地続きの話でまたぐっときた。日光の実家のお話し。この本は昨年の2024年5月の文学フリマ東京38で購入した。この時はじめて、実際にピンポンさんを見た。想像した通りの人見知りな雰囲気であったが、想像よりデーンとしていらっしゃった(別に体格も態度もどでかいわけではなく謙虚な方だったが存在感があったという意味)
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参加されていた『サイコロ』という文芸誌も良かった。
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さりげなく入っていたしおりにも感動した。
この『実家』という作品にはかなり影響を受けて、自分は同じ温度では決して表現できないけど、その影響を自分の拙著『20年後のゴーストワールド』にも込めた。それを12月の文学フリマで販売し、音楽と本の両輪揃ったファンでない自分を恥じながらも、またその時もピンポンさんのブースへ行って、感謝の気持ちを伝えた。前回の作品の感想を直接伝えられるのは文学フリマの良いところだと思った。前よりフランクにお話ししてくださった。そして、ピンポンさんの描いたゴーストワールドの絵のお話しもできて嬉しかった(良い絵なんです)そして、今回の新刊を購入させていただいた。
— 品品(ピンポン) (@SetagayaPinponZ) April 16, 2024
『実家』はドキュメンタリー映像にもなっている。
『品品喫茶譚III』(2024)
そして今回の『品品喫茶譚III』
ライブで訪れた日本各地の喫茶店を軸にした随筆集。最初の導入から引き込まれてしまったよ、奴さん。ピンポンさんもわりと、冬野梅子さんのイタリア旅行のZINEで出てきた描写「相手の出方によって動く」人のようだと思ったり。自分もそうなのですが。今は京都にお住まいとのことで、そのあたりの喫茶店も多い。めっきり旅に出ることが減ってしまった私だけど、ここで紹介された喫茶店とできれば書店もセットで行ってみたい。
怠惰に過ごしてしまった風の感じを出しながらも(時間を無駄にしてしまう描写がとてもわかりみが深い)ピンポンさんの描く一日はとても充実しているように見える。エッセイに描かれている日だから充実していないのもおかしいけれど。今さらだが、それは喫茶店のモーニングの時間から活動しているからと気づく。モーニングに間に合う時間から動いてたら一日はそれだけで、有意義に思える。
仕事で遅番の多い自分は、休みの日に早起きしてモーニングに間に合うのはなかなか至難の技だけど、やってみたい。今は耳鼻科に通うのに早起きしてへとへとだったりもするが。そのモーニングの描写で面白かったのが、ピンポンさんのお父さんがモーニングをおかわりした話。その発想はまるでなかったが、珈琲もう一杯頼めばできなくもないのか……!
下北沢トロワ・シャンブルでの思い出
東京の喫茶店もいくつか書かれている。その中で嬉しかったのが、下北沢のトロワ・シャンブル。私は店名もうろ覚えだったけど、かつて友達と行ったことのある喫茶店だった。この本でそのことを思い出せたのが良かった。
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この時は写真を撮っただけで喫茶店には別日に行っている。何気なく友達が写真を撮ってくれていたので思い出せることも多い。そしてその写真を『20年後のゴーストワールド』でも使わせてもらった。
調べたら2021年。コロナ禍、色々工夫して下北沢で月イチでワンマンライブをやっていた友達が好きなバンド、ユレニワのライブにこの頃よく一緒に行っていた。コロナ禍の心細くさみしく生きていた時に、それがとても自分にとって救いの時間だった。その時立ち寄った喫茶店だ。
そこで、その友達に教えてもらって読んでとても面白かった川端康成の『みずうみ』の感想を語り合った。私は完全にこの小説の主人公高校教師の桃井銀平さんを「ヤバいやつウォッチ」しながら読んだ。今ならコンプラ的に色々まずい感じの話である。今はどこかにその意識があるからどうしても「ヤバいおじさんウォッチ」の視点で読んでしまうが、そのやばさは嫌いになれないというか面白いヤバさなのだ。川端康成のヤバいやつの描き方が文学的に流麗で引き込まれて読んだ。
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この時わたしは江口寿史のシャツを着ていたようだ
現に私も高校生の時に銀平さんのような先生が好きだった(古典の先生だった)。そのエピソードを友達に話した。その先生から私は「シャープペンの芯、ずいぶん長く出して書くんですね」と言われたことがあった。授業の終わりに、わざわざ私の席の前まで来て。今思うと気持ち悪い限りだけど、銀平さんの芯の通ったねっとりしたヤバさと通じるものがあって、そこに私は惹かれていた。女子校だった。ヤバいやつウォッチャーの視点はこの頃から自然と鍛えられていた。この『みずうみ』の読後感、何かに似てるなと思ったら映画『ゴーストワールド』だった。『みずうみ』の愛すべきヤバさも私は盛り込んで自分のゴーストワールド、『20年後のゴーストワールド』を書いた。
あの日、トロワ・シャンブルでカゼブレンドにしたか、ニレブレンドにしたのか。たぶんカゼにしたんじゃなかったかな。また久しぶりに友達とトロワ・シャンブルに行きたいと思っていたら、その友も12月の文フリでピンポンさんのこの本を買っていたそう!この本について語りあえるのが楽しみだ。
新宿ピースへ
今、毎週のように耳鼻科に通っている。ずっとギターの6弦をDにチューニングしたくらいの音程の耳鳴りがしている。予約をしていても待ち時間が長い。受付して診察して最後薬局で薬を受け取るまで2時間はかかる。その間読書がはかどる。この本も耳鼻科の待ち時間に読んだ。面白くて耳鳴りも忘れてあっという間に読んだ。気になる喫茶店から、どこからエピソードを読みはじめても読めるのも良い。ピンポンさんの実家のばあさんの話にうるっときながら、やはり喫茶店の雰囲気が恋しくなる。
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耳鼻科の帰りに新宿のピースへ行った。新宿は外国人だらけで、最近はカフェ難民地区である。この日も月曜の昼過ぎに行ったけど、混んでいた。ブレンド珈琲と作中にも出てくるピラフを頼んだ。美味しかったし、少しの間、ほっと一息できた。日常と乖離しすぎない心地よい非日常に飛ばしてくれる喫茶店。最近あまり行くことがなかったけれど、また行ってみよう、今度はモーニングが間に合う時間に。
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今この文章を私はiPhone8で打っている。今はもうダブルスコアでiPhone16が出ている時代。充電は速攻でなくなるけれど、まだ私のホームボタンは健在だ。一度も壊れたこともない。この『品品喫茶譚III』の作中でピンポンさんはiPhone7Plusを使っていた。その長年使ったiPhoneにまつわる描写も面白かった。今はiPhone15に機種変されているそうだけど。私はまだもう少しねばって使うんのだろうな。
次回の文フリにピンポンさんも出られるのだろうか。もう次の新刊も出ているので、またブースにお邪魔して購入したい。
品品さんの通販サイト(品品堂)からも本は購入できます◎
まだこちらの #文学フリマで買った本 シリーズは続きます。またどうぞ読んでやってくださいね!
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