平均購入価格の違いから見る総合ECモールの使い分け
こんにちは。データストラテジストの難波です。
以前、古谷が書いた記事で、複数のECサイトを利用しているユーザは全体LTV、ECサイト個別LTVともに高いことが明らかになりました。しかし、ユーザがECサイトを利用する上で、同じ商品を複数のECサイトで購入することはあまりないのではないでしょうか。そのため、ECサイトに商品を出品する事業者としては次のことに留意する必要があります。
購入する商品によってECサイトを使い分ける要因は価格、商品ジャンル、送料など様々なものが考えられるが、その中でも価格はどのように影響しているのか
価格の影響はどの程度存在し、出品戦略にどう活用すればいいのか
そこで、今回の記事では、複数のECサイトを併用しているユーザに対して、ECサイト間で購入する商品の平均購入価格や価格帯にどのような違いがあるのかを分析します。
分析要件
疑問①:複数のECサイトを使い分けているユーザーの平均購入単価はECサイト間でどれほどの差があるのか?
まず複数のECサイトを利用しているユーザーにおいて各ECサイト間の平均購入単価の違いはどのようになっているのかを調査します。
それを分析するための評価指標として、ECサイトごとの平均購入単価の比率を示す指標を使用します。例えば、楽天市場とAmazonを利用しているユーザuについては
$$
割合指標^u\,_{Amazon}=平均単価^u\,_{Amazon}/(平均単価^u\,_{Amazon}+平均単価^u\,_{楽天市場})
\\
割合指標^u\,_{楽天市場}=平均単価^u\,_{楽天市場}/(平均単価^u\,_{Amazon}+平均単価^u\,_{楽天市場})
$$
を用います。
以下の図は、横軸を割合指標の値、縦軸をユーザ数としたヒストグラムを2サイト分ずつ重ねたものです。平均購入単価は2サイト間の相対的なものなのでヒストグラムは必ず左右対称になりますが、真ん中の重なっている部分が少なければ平均購入単価の分布差が大きいということになります。
まず、上図のようにLOHACOについては、Amazon、Yahoo!ショッピング、楽天市場の全てに対してLOHACOの方が平均購入単価が低いことが分かります。
また、Amazonと楽天市場の比較では、Amazonの方が平均購入単価が低いことが分かります。
一方で、Yahoo!ショッピングと楽天市場については分布の差がほとんどなく、Yahoo!ショッピングとAmazonについては若干Amazonが低い程度です。ここでは価格による使い分けは発生していないと言えます。
以上のことから、サイトによって同じような平均購入単価になるケースとそうではないケースのどちらもあることが分かりました。
疑問②:購入されている商品の価格帯の差はどのようになっているか?
疑問①では平均購入単価の差を調査しましたが、その中で実際に購入されている商品の価格帯はどのように分布しているのでしょうか。それを調べるため、疑問①ではヒストグラムを重ねて表示していましたが、ここではECサイトごとにヒストグラムを分け、さらに購入商品の価格帯で色を分けました。
それぞれの最頻値付近を見てみます。
LOHACOと他サイトの比較においては、LOHACOは常に0円〜2000円の価格帯が最も多くなっている一方で、楽天市場やYahoo!ショッピングでは2000円〜4000円の価格帯が多くなっています。
また、Amazonと楽天市場の比較においては、平均の低いAmazonでさえ2000円〜4000円の価格帯が多くを占めていて、楽天市場では半数近くが4000円以上の価格帯になっています。
このように、平均購入価格だけではなく、購入されている商品の価格帯も大きく異なることが分かります。
結論
この記事では、複数のECサイトを併用しているユーザに対して、ECサイト間で購入する商品の平均購入価格や価格帯にどのような違いがあるのかを分析しました。
その結果、LOHACOは他ECサイトに比べて平均購入単価が低く、また、Amazonは楽天市場と比較して若干平均購入単価が低いということが分かりました。
その要因としては、LOHACOは日用品を多く取り扱っていることから購入されている商品の価格帯が低くなっていることや、楽天市場は多角的な事業を展開していることからポイントを貯めたいユーザが高価格帯の商品を購入していることなどが考えられます。
また、購入商品の価格帯の分布はECサイトによって大きく異なるので、自社の商品が受け入れられやすいECサイトを見極めて出品戦略を立てることが重要です。
最後に
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