パワハラはあったのかなかったのか? 自分の目や耳で確かめる
兵庫県知事選挙が終わっても尚、いろいろ揉めてる兵庫県。あの選挙はいったい何だったのか。
いまだにXでは斉藤知事の擁護派と反対派が言い争っていて見るに耐えない。かと言って、あれをなかったことにはしたくないし、あの気持ちの悪い選挙をそのままにしてしまうのも何だか気持ち悪い。あの選挙のやり方が今後スタンダードになってほしくない。そんな思いで、県知事選挙前に気づいた百条委員会のアーカイブ動画を見ている。
6月14日から始まって、やっと9月6日まで見た。ひとつの動画が長いし、すぐに理解できなかったりもするし、楽しい気分になるものでもないから、かなり根気がいる。でも、またあんな騒動に巻き込まれないようにしたい一心で見ている。
まだ最後まで見終えていない途中段階ではあるが、私が見る限りパワハラはあった。そして百条委員会の方々はアンケート作成段階からかなりプライバシーに配慮して進めているし、この事例に関してパワハラに当たる部分の細かな確認を百条委員会は元マスコミ関係者で法律に詳しい講師を呼んで勉強会をしている。県職員の方々からの意見もしっかり聞いて、職員の方が亡くなったことを重く受け止めている。
斉藤知事はどうか? 「たぶんこの人は自分がしてきたことがパワハラだという認識がほんまに無いんと違うか?」と思う。元総務省の総務官僚というキャリアから、兵庫県の県職員のやり方が不十分に見えたりしたんだろうなという部分もあるし、嘘をつくというよりかは人の気持ちがほんまにわかってない人なんだろうと思う。自分のエゴの為というより県政をしっかりやりたい気持ちは感じるけど、その想いの強さを人に押し付けたり、自分が思った通りにならないことに強い苛立ちを感じる人なんやないかと思った。それはそれだけ県政に真剣だからということでもあるんだろうが、かなり独裁的な風土になっていたようには感じる。そして、そういうことって、多かれ少なかれどんな現場にも起こり得ることなんじゃないか。
そう思いながら、私はある人のことを思い出した。大嫌いだった上司のこと。
もう時効やと思うし、職場を特定して書いてはないから大丈夫かなと思うけど、おもくそパワハラがあった。
当時、私はアルバイトで、持ち場に正社員は居なかった。そのせいかどんなにみんなががんばっていても立場が弱く、何かミスがあれば私たちのせいになることばかり。マネージャー会議に社員の方を通じて私たちの意見を伝えても、忘れられていたり意図を汲み取ってもらえないことが多かった。
その現状をどうにかしたくて、私はリーダーに名乗り出た。その持ち場の中で職歴は浅かったけど最年長だったし、辞めていく人がたくさんいる中で文句言いながらもがんばる可愛いみんなを守りたかった。マネージャー会議にも出席して、自分たちの現状や、トラブルが起きた時に実はこういうことが起きていたという説明をして理解を深めてもらおうとした。自分たちの立場だけを主張してはダメだと思って、私たちと同じように立場が弱い駐車場管理や清掃のスタッフに何が大変で何を心がけているか等インタビューして社内報に寄稿したりもした。それを続けた結果、周年に社長にインタビューをさせてもらったこともある。
その動きを当時の上司は気に食わなかったのか、ある日同じ部署にリーダー職として採用したスタッフを雇い入れ、いきなりリーダーふたり体制にされた。しかし、そのリーダーが私と仲良くなってしまったので、上司は私を呼び出してこんなことを言った。
「お前をリーダーとして見込んで提案がある。その部署で他のスタッフがどんな言動をしているかを逐一俺に報告しるように。悪いようにはしない」
考える時間をくださいと答えて退室した。会社や上司に不満を持っている人も多かったし、賑やかな部署で仕事というより部活に近い雰囲気はあったとは思う。女の子が多くて団結力も強かった。文句を言いながらも、みんなよく笑い助け合って働いていた。そんなみんなを売るようなことはできない。そう思ってお断りの返事をすると、私に対するあたりはキツくなったし、スタッフに対する細かな注意もキツくなった。そして私はたまに呼び出された。スタッフが自分が思うように動くように指導されるが、理不尽だったり、自分たちの動きに理由があることはみんなを代弁して伝えた。そうすると「お前は人の気持ちがわからないのか!」と言われ、私は内心(どの口が言うてんねん!)と思ったりしていた。
ある日、私が上司に呼び出されてくどくど説教されてたところ、もうひとりのリーダーが駐車場のトラブルについて上司に相談に来た。上司は現場には行かず口頭でその対応を伝えた、私への指導をし続けた。しかしその後、系列店の支配人が駐車場のトラブルについて「どんな対応してるんだ!」と怒鳴り込んできた。もうひとりのリーダーが「上司に確認して…」と説明した上で上司を呼ぶと、「俺は何も言ってない。コイツらが勝手に判断した」と説明した。もうひとりのリーダーはバックヤードで泣いていた。
他にもいろいろあったが、それが引き金になって上司への不信感が募り、マネージャークラスの方にこの上司について相談した。そのマネージャーは少し考えて「パワハラと思うことがあった日時や内容を詳細に書いて置いて、本当に無理だと思った時に全員辞めるつもりで社長に提出するしかないかな」と答えてくれたので、私たちは上司のパワハラノートをこっそり用意して、何かある度に書き込んでいった。
書き込むだけ書き込んで、徐々にみんな辞めて行った。私はリーダーを辞めた。リーダーを辞めて、後輩がリーダーになった時に、上司は私にしてきたことと同じことを後輩にしていたらしく、後輩はイライラしていた。そして上司のやり方について文句を言っていたのを聞かれたのか、ある日別室に呼び出されて2時間ひたすらパワハラを受けたらしい。「お前、俺に逆らったらどうなるかわかってるんだろうな」「言うことを聞け」そんな内容の話を40代男性の上司が、20代女性の後輩を個室に閉じ込めてずっと言い続けられたらしい。私はその子が居ないことに気づいて社内を探し回っていたけど見つけられず、他のスタッフに心配してることを伝えて帰った。メールを送っても返信がなく、翌日、事の真相を知り、悩んだ末に私は上司のパワハラノートを持って社長に直談判をした。
「リーダーを退いた今、しゃしゃり出ることは間違ってるかも知れませんが、彼女は怖いしもう辞めると言ってます。以前も、私たちの部署のスタッフは悩んだ挙げ句に万が一の時の為にこのノートを作成していました。私の立場としては彼女を守りたいと思います」そう社長に伝えた。社長は「気持ちはわかるが、僕の立場としてはどちらかに偏ってはいけないし、どちらかの肩を持つ訳にはいけない。だけど吉田さんの気持ちはわかったからノートは預かっておくね」と言った。結局、社長・上司・後輩の三者で話し合うことになったが後輩は退職した。話し合う前も、「どうせ自分には不利な条件しかないし、上司は口がうまくて平気で嘘をつくから自分の話は信じてもらえる訳がない」と言っていた。私は無力だなと思った。
コレは私が体験したひとつの出来事。
だけど、パワハラはこれだけじゃない。全部の現場ではないけど何度かパワハラを体験してる。だからと言ってパワハラを容認しろとは思わないし、斉藤知事の件をよくあることなんて言いたくはない。
人にはいろんな面があるし完璧ではない。斉藤知事に完璧を求めてもいないし、たくさんの人の上に立つ人はある程度は無情じゃないとできないこともある。だけど、ひとりの人間が亡くなったことの重みは感じてほしい。何にもなかったことにしないでほしい。再選したから許されてる訳じゃないことは感じてるだろうけど忘れないでほしい。
そして、「斉藤知事はハメられてただけだ!」「斉藤知事は本当はいい人だったんだ!」「真実はコレだ!」と言って騒いだ人たちは、亡くなった方の命についてどう思っているのだろう。パワハラ受けたことがない人たちなのかも知れないね。
百条委員会はまだ続いている。私は最後まで見届けるつもり。それが私にできることだと思う。もうひとりのリーダーや後輩を救えずに無力感を感じた私だからこそ、できることなのかもしれない。