授業ナッジ①一斉授業をやめたワケ【行動経済学×学校教育】
「授業」のナッジについて、細かな仕組みやマインドを書きたいという欲を抑えながら、全5話でまとめていきたいと思います。
児童自立支援施設での衝撃
「児童自立支援施設」という施設をご存知でしょうか?
教師生活7年目、この児童自立支援施設内にある本校という場所に、異動を命じられました。
そこで、今まで上手くいっていた教師生活が全て打ち砕かれることになりました。
プライベートの話ができない、授業のみでの勝負の世界。素行の壁、学力の壁、認知機能の壁、生育歴の壁など、数えきれないほどの壁が立ち塞がりました。こちらが如何に教科の魅力を伝え、面白い授業をしようが、太刀打ちできない世界がそこにはありました。
まるで、それまでの全てが虚構であったかのように、自分の6年間を呪いました。
転職サイトを漁ったり、YouTuberになることを考えて機材を買い込んだり、真剣に退職を考えました。ストレスは溜まり続け、どうにかしようと毎朝5時に起き、好きな銭湯に通い、自律神経を整えるなど様々な工夫をしました。根本的な解決には至らないと自身でも分かっており、苦しい日々でした。
ナッジ・ブースト理論との出会い
壁にぶつかった私にヒントとなったのが、行動経済学の知見を活用したナッジ(nudge)、ブースト(boost)という概念でした。
ナッジとは、意思決定者に判断や意思決定を自由に行わせる余地を残しつつ、よりよいと考えられる選択を後押しするための工夫を指します。
ブーストとは、よりよい判断や意思決定を行うための力自体を高めるための工夫を指し、ナッジの後押しを意味します。
本校の生徒に「豊かに生きるため」「高校入試のため」「将来の自分のため」というよくある理由での学習の強制は一切通用しませんでした。
私なりの楽しく面白い一斉授業は、多くの子どもを学びに向かわせていたのかもしれませんが、何人かの子供を見捨てていたのかもしれないと、心から認めざるを得ませんでした。
そこで「生徒自身の学びの意志決定を尊重し、よりよい選択を後押しする」ナッジ・ブーストの理論を取り入れた授業を構成し、
「自分の人生を自分で生きるための授業」を作ることにしました。
授業ナッジの設計(1つの観と5つの手立て)
西川純氏が提唱している『学び合い』を実践されていた先生からアドバイスをいただき、ナッジ理論を活用した授業を構築しました。
「3つの力」という観をベースに、5つの手立てで生徒をナッジします。
(本記事は中学校での実践ですが、小学校低学年、高学年でも実践しています)
1つの観
5つの手立て
まとめ
児童自立支援施設での衝撃により、生ぬるかった自分中心の教育観は真正面から崩されました。今では「彼らの未来を心から応援するための授業」となり、卒業式で泣けなかった私が、算数の復習の授業で心を打たれ、泣いてしまうようになりました。
次回は実際のプリントを交えながら、それぞれの手立てについて詳しく解説していきます。
次の記事↓
そうじナッジ↓(これで掃除指導の悩みから救われました)
あいさつナッジ↓(ナッジの中で一番簡単かつ楽しいです)
サポートナッジ↓(課題のある子が自ら変わる、画期的なナッジです)
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