『障がい者雇用の新たなフロンティア』を読んで(読書録)


私は、自分や家族や身近な友人が "障がい者" であったとしても/なったとしても、いきいきと暮らせる社会であってほしいと願っています。
障がい者雇用のパイオニアであるNPO法人代表が、「障がい者福祉のあるべき姿を多くの人に知ってもらいたい」との決意で書いた本書。賛否両論のある「雇用代行ビジネス」にも踏み込んでいます。
一人でも多くの方に読んでいただけると嬉しいです。
※発売から1か月間はKindleで99円とお求め安くなっています。


概要

タイトル:障がい者雇用の新たなフロンティア:「障がい者と共に働く」社会課題解決の実践
著者:那部智史

kindle版表紙

本書の「はじめに」に著者の決意が述べられています。

障がい者福祉行政と障がい者雇用行政のミスマッチや障がい者福祉事業を錬金術のごとく考える事業者の存在が、日本の障がい者福祉を長年にわたり停滞させているのである。障がい者福祉のあるべき姿を多くの人に知ってもらいたいと多くの障がい当事者やその家族を代表して本書を書くことを決意した。

はじめに より

本書は、2部構成です。

第1部 経済的自立を目指す障がい者を取り巻く福祉の実情 障がい者福祉
第2部 障がい者雇用のあるべき姿と実践

目次 より


第1部は、障がい者雇用の実態をデータを用いながら概観し、障がい者雇用や農福連携における課題を指摘するとともに、著者が運営するNPO法人AlonAlonでの取り組みを紹介しています。
第2部は、「社会課題をビジネスで解決する」取り組みを障がい分野で実践している方たちとの対談形式となっています。

対談者
NPO法人AlonAlon 理事長 那部智史氏
ぜんち共済株式会社 代表取締役社長 榎本重秋氏
久遠チョコレート 代表 夏目浩次氏
株式会社リンクライン 代表取締役 神原薫氏

第2部 障がい者雇用のあるべき姿と実践 より

気づきと感想

長年解決できていない社会課題として「低収入(低工賃)」と「低就職率」の2つの問題がある。就B(筆者注:就労継続支援B型事業所の略称)で働く障がい者の月額平均工賃は1万6507円(2021年度)。成人となると給付される障害者年金を合算しても、生活保護の受給額に満たない。

第1部 経済的自立を目指す障がい者を取り巻く福祉の実情 障がい者福祉 より

全国で平均したときに生活保護の受給額に満たない状況は、人間らしい生活を送ることが困難ということだと思います。この状況が長年変わっていないことに暗澹たる思いがします。

事業で使わない野菜の収穫に人件費をかけるなどは、その最たるものである。そのような環境では、障がい者は誇りある人生を歩むことはできないと考える。よって「障がい者社員が会社に利益貢献する(またはするような)仕事をしているか」が大きな判断材料になるのではないだろうか」。

第1部 経済的自立を目指す障がい者を取り巻く福祉の実情 障がい者福祉 より

私は、誰かの役に立つことは生きる上での喜びになると考えているので、たとえ販売目的の商品ではなく、社員に配布されたり食堂で消費されたりする野菜であったとしても、それほど批判する必要はないのではと考えていました。
ただ、「事業で使わない野菜の収穫に人件費をかける」という切り口で捉えると確かに社員同士、同じ仕事仲間だという意識を醸成するのは難しくなるというのも納得です。やはりビジネス面で会社に貢献する仕事であることの意義は大切なのだなと考えが変わりました。

第2部では、私自身が大好きでよく購入している「久遠チョコレート」の夏目代表、ぜんち共済という障害のある方向けの生命保険を提供する会社の代表、特例子会社の社長という様々な立場の方の理念と実践を知ることができました。
このような素晴らしい活動をしている会社がもっと増えると、誰しもが安心して自分らしく生きられる社会に近づくのではないかと思います。

参考サイト

ではでは。

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