ゾンビに魔女、妖精男子が登場するファッション雑誌「CLASSY.」を全力で推す
「ファッション雑誌なんて、どうせ港区女子向けでしょ?」
「最近の雑誌はCHANEL、エルメス、ヴァンクリをプッシュし過ぎている」
「子育てにお金がかかるし、私たちの給料と貯金ではファッション雑誌のアイテムなんて無理……」
キラキラしたファッション雑誌に、面食らう女性は多いもの。
そんな中で、ぶっ飛んだ「着回しコーデ」を展開しているファッション雑誌がある。その名も「CLASSY.(クラッシィ)」だ。CLASSY.とは、光文社から刊行されている女性向けファッション雑誌である。
CLASSY.はJJのお姉様向け雑誌として1984年に創刊され、今も女性たちから絶大な支持を集めている。
CLASSY.のページを久しぶりに見て、ふと気づいたことがある。今まで「CLASSY」だと思っていたが、実は「CLASSY.」で語尾に「.」がついているのだ。
まるで、モーニング娘。みたい。この「.」に、「私たちは他と違うんだ」という強いこだわりを感じたのは、私だけだろうか。
CLASSY.が他のファッション誌と違うのは、着用コーデ特集の企画・ストーリーがあまりにも斜め上を行き過ぎている点である。
CLASSY.自身も、ストーリー性の斬新さで世間を騒がせていることにも、どうやら自覚があるらしい。
自ら「度々世間をざわつかせている」と言ってしまうところ、実に潔くて好きだ。
では、どんなぶっ飛んだストーリーを展開しているのか。
本記事では、私のお気に入り「ストーリーがぶっ飛びすぎているCLASSY.のお気に入りコーデ記事」をランキング順に紹介する。
5位 宇宙旅行に当選した女性のコーデとは?究極のミニマム!厳選10着で7月の着回しDiary
登場するのは、ひょんなことから宇宙旅行に参加することになったまどか30歳。
宇宙へ向かうために、「出発は動きやすさ重視!」と、まるで夏の沖縄へ行くかのようなこざっぱりした格好で登場する彼女。
大気圏を越えるにあたり、宇宙服ではなく普通のお出かけコーデが展開されるのだが……。
彼女は本当に、人間なのだろうか。もしかすると、ドラゴンボールと同じナメック星人では?
……なんてことを思っていたら、記事の最後に難「地上と同じ1気圧に保たれているので、宇宙服はいらない」というオチつき。
そんな時代が来るといいなぁという思いも込めて、この記事に「好きです」の一票を入れたい。
4位 ごくせん大好き!ヤンキー校の新米教師のコーデ特集
着用コーデの主人公は、県内中のワルが集まることで有名な男子校に赴任してしまった倉都志伊学院高校の英語科教師、桜井レイカである。
こちらの記事は「令和X年。とある高校県内の不良たちが集まるこの学校で、新任教師と生徒の闘いが始まろうとしていた」というストーリー設定とのこと。
すっかり「ルーキーズ・ごくせん・クローズ世代」の私は、胸を鷲掴みされてしまった。
生徒は教室で麻雀を嗜んでいるなど、ワルの中にも「昭和」を感じる。麻雀を楽しむ彼らを見て「あ〜あ、麻雀覚えておけばよかった」と感じるポジティブなレイカ、好き。
スカート派だったレイカも、やんちゃな生徒たちを追いかけるためにパンツを新調する。ファッションよりも、仕事。そんな彼女の生き様を感じつつも、ファッションコーデを展開していくのが面白かった。
パンツの紹介についても「洗えるので、忙しい人の味方」と実用的な部分についても触れられている部分に、ファッション誌のプライドを感じた。
3位 「妖精男子に出会った不倫沼女子」って、情報量が多すぎる!「今買って5月まで着られるカジュアル服で3月の着回しDiary」
3位は、先輩と不倫関係になって3年が過ぎた女性のコーデ特集。
私自身、既婚者子持ちなので不倫ネタはあまり見ないようにしている。不倫系ストーリーが、世間に需要があるのも知っているが……。やはり、誰かが不幸になるコンテンツでもあるので、つい面食らってしまう。
けれど、そんな中でも「昼顔」のドラマは好きだったし、不倫ドラマに岩田剛典さんといったイケメンが登場するとつい見入ってしまう。不倫ドラマ、本当は好きなのかも……。
けれど、公の場で「不倫ドラマ、好きです」と言うと「みくさん、本当は欲求不満なのではないか」と、誤解される恐れもある。
既婚女子における不倫ドラマの楽しみ方、実に難しい。もし「不倫」というワードがなければ、1位にしていたかも。うーん、惜しい。
さて、この不倫女子コーデの特集で気に入っているのが、「妖精男子」というパワーワードが登場する点だ。ストーリーでは、不倫男性の他に妖精男子(幽霊?)が登場する。
妖精男子というより、地縛霊かなとも思ったけれど。記事に登場する「蒼い青年」が一体何者なのか。その点について、あまり詳しく書いてないところも逆に気になってしまった。
この記事の良い点は、不倫を完全に肯定していないところかも。登場する女性は「不倫は絶対にしてはいけない」と頭で理解している中で、独身の同世代男子では満足できない葛藤を抱いている。
既婚者特有の余裕に魅力を感じると、なかなか結婚できないよね。婚活難民歴も長い私、共感ポイントも多かった。
この記事で、ひとつ気になるところがあるとすると不倫中の男性が、やや正直な点である。
女性のところに、男性から「今週末、妻と子供が旅行に行くから箱根にでも行く?」とメッセージが届くシーンをみて、「不倫中の人は、証拠を残さないはず。LINEなど、見られる可能性がありそうなものに『妻と子供が旅行に行くから』とは、言わないのではないか?」と、余計な心配をしてしまった。
それにしても、不倫男子の心情になぜ私がこんなに詳しいのか。その点については、どうか深く追求しないでいただきたいものである。
2位 人間界に迷い込んだ、ちょっぴりドジな新米魔女のコーデって?主人公は150歳の新米魔女!「パリシックな着回しDiary」
着用コーデに登場するのは、新米魔女チエミ・150歳。
なんとファッション雑誌に、アラフォーやアラフィフどころか、金さん・銀さんもびっくりの高齢女子が登場する。
チエミは、お婆ちゃんより厳しく育てられた反動で外の世界(人間界)に興味を持ち始める。
人間界に訪れて出会った男性には、「あなた、人間?私、チエミ。魔女よ。よろしくね!」と、唐突にアプローチ。魔女の積極性が、凄い。恋愛マニュアルも真っ青になるほど、混じり気のない透明なブルー。真っ直ぐで、潔くて。良い。
おまけに、翌日には一目惚れした彼と急接近している。そこでサラッと「今日から同じ課で働けるように魔法をかけたの。よろしくね」と、アプローチする魔女のチエミ。もはや、ナンパ師も真っ青になるほどの小悪魔ぶりである。魔女の恋愛テクニックが強過ぎて、コーデが全く頭に入ってこない。
コーデ特集では、魔女が着用していたワンピースについても紹介されている。魔女が着ている服って、市販のものなんだ。
1位 ゾンビ大量発生しているのに、コーデを気にしている場合か?「グレーとベージュで生き延びる!1月の着回しDiary」
1位に輝いたのは、ある朝ゾンビが大量発生し、生き残りをかけたサバイバルに巻き込まれた女の子の着用コーデ特集。
ストーリーの中では、彼がゾンビに襲われたものの、助けようと訪れた博士の助手にイケメンセンサーが働くというジェットコースター展開。
その後はなぜか、ロバート秋山さん風の博士と激辛やきそばを食べながら談笑したり、ゾンビとの共存を目指そうとしたり……。
ストーリーの中では、主人公がゾンビの心を理解するために「ウォーム・デイズ」を見るシーンも。
ゾンビになっても、きっと人の心を捨て去ることはできないはず。自分の命が狙われてもなお、ゾンビと仲良くしようとする主人公に優しさを感じ、胸が熱くなる。
ゾンビを恐れるのではなく、人間のいい部分を信じようとする、その主人公のいじらしさ。最後まで目が離せなかった。
◇
CLASSY.の着用コーデの魅力は、ストーリー・メッセージ性の高さもさることながら、テンポの良さも魅力のひとつ。テンポが良いので、飽きることなく「コーデ」を楽しみながら学べるところだと感じている。
翌日には気になる人と急接近するなど、ドラマや小説ではあり得ない部分も多いが、そこにストーリーの新しさも。
そのテンポの良さに、既視感を覚える。どこか今大人気の漫画・アニメの「チ。」に近いものを感じた。
「チ。」には、あっという間に話が進むところに、今までにない作品の魅力があった。「チ。」ほどではないかもしれないけれども、CLASSY.の着用コーデも1コマごとに「驚きの展開」が進むので、最後まで目が離せない。
CLASSY.の着用コーデは、ただ展開が目まぐるしく変わるだけではなく、時にはメッセージ性の高いシーンも少なくない。
たとえばゾンビコーデの記事では、半ゾンビ経験をもつ同僚に彼氏について相談すると「ゾンビになっても、本質は変わらないよ」と返答が届く。ゾンビに限らず、人間も同じなのかも。
先天的なもの、育ってきた環境や、これまで受けてきた教育、取り組んできた仕事などなど。生きていく上で、人間はいろんな出会いから学びを得て、育っていく。その中で、少しずつ自分の奥にある「本質」が培われていく。
その本質は一度根づくと、変えるのが難しい。けれど変えづらいものだからこそ、変化できるように意識して、日々を過ごしていきたいと思った。
CLASSY.の着用コーデは、オシャレなファッションがただ並べられていたり、ブランドアイテムがずらりと陳列している訳でも、オシャレ女子がキラキラと瞬いているものでもない。
魔女の世界から人間界に舞い降りたり。ゾンビに襲われて身の危険を感じたり。時には、怪しい男性に振り回されたりしながらも。
ただその場所で、いろんな状況の女性たちが懸命に生きる中で、オシャレを健気に楽しもうとしているのだ。その中で、きらきらとした笑顔を振り撒く彼女たちがとても尊いのである。
登場人物たちは辛い状況の中で人と触れ合い、そこから学びも得ていく。彼女たちは、どんな時も明るく前向き。地球がたとえ滅びかけても、オシャレを楽しもうとイキイキしている。そして、自分らしく、人生を謳歌していく。その潔さに、私はパワーをもらう。
オシャレだけでなく、懸命に生きる登場人物たちからのメッセージを楽しめる「CLASSY.の着用コーデ」を、キラキラ雑誌に疲れた女性たちにぜひ楽しんでいただきたい。
【完】
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