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人生やり直しゲーム
おはようございます。唐突ですが、みなさんはアルロンさんがnoteで制作したアドベンチャーゲーム「 #ラスター王国物語 」を試しましたか?
私は3〜4ページ目くらいでゲームオーバーになりましたが、とても作りが凝っていて凄いです。個人的に、任天堂さんやナムコさんなど。ゲーム会社さんからスカウト来たらいいなぁと思ったので、ここで紹介させていただきました。
さて、アルロンさんのゲームに触発されて、私も簡単なゲームを作っちゃいました。乙女ゲームならぬ「アラフィフ女子の人生やり直しゲーム」を……。
↓本ゲーム的ショートショートはこちら
シャワーを浴びても、水を弾かなくなったのはいつからだろう。Instagramを覗けば、あの頃の友人たちは自分そっちのけで子どもの写真ばかりアップしている。
自撮りばかり載せてた真澄も、投稿がほぼ娘と息子で犇きあっていた。眩しい子どもたちの笑顔に、私は面食らう。
——子どもを産みたい。
手遅れだってわかってる。だって、私はもう46歳。結婚適齢期も過ぎてるけれど、結婚もしてみたいわ。ウエディングドレスも着てみたいし。たとえ、私のドレス姿を見たいという人が現れなくても。私は、私の幸せだけにドレスを着るのよ。
でも、私が結婚して子どもを産むには。やっぱり、人生やり直しが必要だろうか。結婚だけならまだしも、妊娠には適齢期がある。ああ、もう一度。せめて20代からやり直しができたなら。
タラレバを言ってもしょうがないのはわかってる。けれど。あの日あの時、私に「付き合ってください」と告白してくれた彼の思いを受け止めていたならば……。彼は好青年だったけど、もやしのように細くてナヨナヨしてて。どうしても好みじゃなかったの。
彼、出立ちがどことなく芸人のMr.オクレに似てるから「オクレ兄さん」ってあだ名をつけられていたし。でも付き合ってみたら、案外いい人だったのかもしれない。
ぼうっと天井を見上げると、眩い光を放つ子どもがいる。幽霊にしては、妙に明るい表情だけれども。
「あなたは誰?」
「僕は天使です。人生のたらればを並べても、意味がありませんよ、そこの煩悩まみれのアラフィフ女子。
今回は、一度だけあなたにチャンスを与えます。その名も、人生やり直しゲーム!さあ、今から私の出す選択肢から選ぶのです……」
天使が話した途端、4つの選択肢が私の前にあらわれた。
人生やり直しゲームの始まりだ。あなたは今、女子高生である。先生にするなら、誰を選ぶか決めなさい。
①田原俊彦 ②山下真司 ③武田鉄矢 ④陣内孝則
選択肢が昭和である。うーん。みんな授業が無駄に熱そうだ。陣内さんが唯一、ノリが違う気もするけど。
陣内さん主演の「愛し合ってるかい?」は確かにいいドラマだったけど、実際にあんなノリノリの先生がいたら、毎日お祭りで疲れちゃうでしょうよ。できれば、熱さと軽さの中間が欲しいところ。となると、やっぱり平成かしら。
「あのう……。選ぶのが難しいので、平成のスターでお願いします」
「うーん。しょうがないなぁ。じゃあ、平成のスターをチョイスするから」
人生の選択肢は、目の前から選ぶものだ。けれど、目の前の選択肢を飛ばして「遠く」を見つめるのもひとつの手である。君は、自ら選択肢を増やしたのだ。そこに答えはあるのか。さあ、選ぶんだ。
①伊藤英明 ②木村拓哉 ③仲間由紀恵 ④阿部寛 ⑤反町隆史 ⑥竹野内豊
平成の選択肢が多いーーーーー。
そして1人、女子が混じってるじゃないの。ヤンクミを演じていた仲間由紀恵さんも、確かに捨てがたいけれど。やっぱりさぁ。女子よりイケメンがいいよねぇ。
どうしよう。ここは黙って、GTOの鬼塚先生を演じた反町さんを選ぶべきか。でも、選んだら毎週不良に絡まれるトラブル起こりそうだし。
でも、その度に鬼塚先生が助けてくれるのもアリかも。ピンチが来たら「大丈夫か?もう悪さなんてするんじゃねえぞ」といって、鬼塚先生が私をそっと抱きしめてくれて……グフフ。あー、でも冬月先生が横取りしちゃうパターンか。それとも冬月先生が本妻で、私が鬼塚を奪う側でOK?
それにしても伊藤英明って、先生を演じていたっけ?上半身裸で腹筋してるイメージしかないけど。(by海猿)
ああ、そうか。悪の教典があったか。
これはすぐにゲームオーバーになっちゃうじゃないの。
木村拓哉は教場。竹野内豊はヤンキー母校に帰るで、阿部寛は「お前は東大へ行け!」のドラマか。今から勉強やり直すのは、きついかも。阿部寛は好きだけど。
阿部寛なら、せめてVIVANTのノリで来て欲しい。でもそれはそれで、私が別班に間違われる可能性もあるし、ラクダに乗って砂漠を横断させられる恐れもある。どうせなら、平和なドラマがいい。
「あのう。『おいしい給食』の市原隼人はダメですか?」
おいしい給食とは、市原隼人が給食をただひたすら楽しみにしている先生を演じているドラマである。生徒がどんな状況であれ、イッチー演じる先生は終始給食のことで頭がいっぱい。単純だけれど、実に新しくて面白いのだ。
「市原隼人は、君より若いだろうが!!だからダメだ!」
なるほど。納得。そういうシステムだったのか。ここにきて、自分の年齢をあらためて痛感する。
「すいません。先生はもういいんで、恋人を選ばせてください」
「これだけスターを揃えたというのに、先生を選べない人が恋人なんて選べる訳ないだろう!いいかい?君はとっても、優柔不断なんだ!!結婚は決断が大切。わかったかい?」
「いや、そんなこと言われても……」
「目の前にある選択肢から、ちゃんと選ぶんだよ。そして、その人達のいいところに目を向けるんだ。現実に出会う人たちは、僕が提案したスターのような人たちなんてほぼいない。いいところを探す方が難しいはず。でも、探すんだよ。幸せになるために」
そんな……。そんなこと言われても。私は今、46歳。どうせ今更婚活したって、阿部寛や伊藤英明のようなイケメンは絶対来ないはず。なら、ケンティーをスクリーン越しで応援してる方がずっと幸せじゃないの。
確かに私、今崖っぷち。貯金はあるけど、彼氏はいない。セクシーサンキュー言ってる場合じゃない。現実を見つめなきゃ。
「足元を見てごらん。本当のゲームは、君が今から一歩踏み出すんだ」
天使はそう言って、すっと消えた。結局私は何も変わってないけれど。心構えは以前と違うかも。
——もう一回、マッチングアプリ試してみよう。
緑のアプリをクリックして、画面をスクロールする。私のプロフは、5年前と変わっていない。相変わらず「中島健人くんが好きです」と書いたままだ。
プロフィールの写真は、セクシーゾーンのコンサートに行った時のものを載せている。ケンティーのうちわを持って、着ている服には「健人、愛死天流!」と刺繍もしたっけ。こう見えても私、元レディースだからさ。応援する時は気合を入れちゃうよ?
5年前は、確かにノリノリでプロフを書いちゃったけど。今自分のプロフを見て、猛烈に恥ずかしいと感じている。若いイケメンが好きって、バレバレじゃないの。
やれやれと肩を落とすと、男性から「いいね」が届く。
「ヘイ、ハニー。セクシーサンキュー。50歳の営業マンです」
プロフィールを見ると、スポーツカーに乗ったサングラス姿の中年男性がニイッと笑みを浮かべていた。
——私の婚活ゲームは、まだ始まったばかりである。
【完】
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