【中東歴史・文化の本紹介その2】学習漫画 世界の歴史(5) ムハンマドとイスラム世界の広がり イスラム教の誕生と発展
こんにちは、みかさのです。
サラディンとその周りを描くのに読み始めた、中東歴史・文化の本の紹介記事です。
第2回目は高校時代から読んでいたこちら。
学習漫画 世界の歴史 5 ムハンマドとイスラム世界の広がり イスラム教の誕生と発展
後藤 明/監修 芳村 梨絵/イラスト
集英社
出版年2002.11
世界史の学習漫画シリーズの1冊なので、図書館などで読まれた方もいるのではないでしょうか。
こちらはまるまる一冊が中東イスラム圏の歴史について描かれており、預言者ムハンマドがイスラム教を興してから、アッバース朝のカリフ、ハールーン・アッラシードの治世下でのイスラム王朝の繁栄、アイユーブ朝のサラディンと十字軍勢力との戦い、オスマン帝国のスレイマン大帝のヨーロッパ諸国の攻略を取り上げています。
預言者ムハンマドを除く各章のメイン人物がオリジナルのキャラとやりとりをして、親しみやすく描かれており、7世紀から16世紀にかけての各時代のイスラム王朝をまとめて把握するのに役立ちます。
漫画も芳本梨絵先生の描くキャラクターたちがとても美麗でカッコよく、中東の雰囲気がよく出ていますね。
史実との整合性は、サラディン編でリチャード獅子心王がサラディンよりずっと年下なのに老齢に描かれていたりと、史実を知ると引っかかってしまう所もありますが。
中世ヨーロッパの歴史を取り上げた同じシリーズの第6巻と合わせた文庫版もあります。
ヨーロッパ側の視点も一緒にどうぞ。
監修を担当した東洋大学教授の後藤明先生の言葉で「日本人にとってイスラム教がなぜ不思議な宗教なのかというと、よく知らないからです」とありますが、そのような不理解は今でもあり、この本を読んでイスラーム世界の発展によってもたらされた繁栄と交流を知れば「イスラム教って、けっこう自由な宗教なのです」と締めるのも理解できるのではないかと思います。
この本が2001年の911同時多発テロ直後に出版されたことと、2023年の10月現在に起こっているイスラエルとパレスチナ、ガザ地区の紛争を思い起こしながら。
ここからは自分語りも含めた感想です。
本紹介記事の第一回目
で少し語った、サラディンを知るきっかけになった世界史の学習漫画というのがこれでした。サラディンは表紙のセンターと背表紙を飾っています。
すみませんこれでサラディンを好きになったので、サラディン編ばかり語ってしまいます。
高校生だった私は当時、古代オリエントの歴史や中国史が好きだったのですが「そういえば歴史が好きだけど中東の歴史ってよく知らないな」と思いこの本を手に取ったら、高潔で勇ましく寛容な英雄サラディンに落ちてしまいました…。サラディンを好きになりたい人はみんなこれを読んでほしい。
お陰で世界史の授業で中東の歴史を習う前にとても詳しくなってました。
サラディンがオリキャラのユースフくんの前で見せる寛容な君主の顔が良いんですよね〜。
十字軍としてやってきたイギリスのリチャード獅子心王との戦いを終えた晩年のサラディンの疲れた姿も切なかったりします。ちなみに獅子心王にはお見舞いとしてフルーツを贈ったりしてます。
私の描くサラディンは髪型などがこのサラディンのオマージュになってしまっているという、早めの告白をしておきます。サイドに布を出すターバンの巻き方とか…。すみません。
もちろんムハンマド編や、ハールーン編でのハールーンの千一夜物語でのキャラを髣髴とさせる奔放さや、スレイマン大帝のオスマン帝国を繁栄させたいというお話も読み応えがあります。スレイマン編ではイスタンブールのモスクを多く建てた建築家、ミマール・シナンも出てきます。
この本のお陰でアラビアンというイメージから抜けて、実際の中東から歴史を見る視点が出来たのかなと思います。
ここまで読んで下さってありがとうございました。