中国留学記|発音勝手に日韓戦〜母音編〜
北京留学が始まって一週間が経った頃。拼音と発音を習っていたある日、それは突然始まりました。
日本人と韓国人どっちが中国語の発音上手いんだ論争!絶対に負けられない戦いがそこにはありました。
第1試合 母音編
まずはこちらをご覧ください。
これは中国語の母音の一覧表です。
一行目が「単母音」で、アルファベットひと文字で表される音。
発音はどれも日本語のローマ字と同じようなもんだと思っていいです。詳しく知りたい方はYouTubeなどで探してください。
二行目、三行目は「複合母音」で、一行目の音を複数組み合わせたもの。さらに四行目は「鼻母音」と言って、日本人にはなかなか難しい発音です。
そして入門レベルのクラスでは、これを2,3日連続で延々と言わされます。徹底的に身体に覚えさせて、今後の中国語学習の基礎にするのです。
この母音を習い始めた初日。
例に漏れず私たちも延々と音読し続けていました。
先生
はい、じゃあ1人ずつ全部音読してみて
前の席から順番に読んでいく。
全員そこそこできる。
先生もニコニコしながら音読を見守る。
がしかし、唯一の日本人である私の順番が来た時に事件が起こります。
前半は順調に進んでいたのに、「an」を読むと突然手を叩いてSTOP!!!!!
先生:もう一回言ってみて
私:あん
先生:違う!真似してみて!「an」
私:あん
先生:違う違う!それは「ang」!今言わなきゃいけないのは「an」!!
私:何が違うんじゃい!!
クラスメイトたちが心配そうにこちらを見ています。
落ちこぼれたくない一心の私は、彼らの視線を感じながら何度も繰り返します。
私:あん。あん?あん!あん…
みんな:あ、言えた!それそれそれ!!!
私:どどどどどれ!?!?!
見かねた先生から「家で練習してきなさい」と言われてその場は収まりました。
そんなこんなで放課後。
いつものように学校内のベンチでおしゃべりしていたら。
「さうさん、anとangを言ってみてください」
韓国人のジュンさんが切り出しました。
私
あん…。あん…。
ジュン
違いますねえ〜 なんでですかねえ。
隣にいた同じく韓国人のサンミンさんも身を乗り出します。
an!! ang!! ほら!簡単だよ!
私の耳にはどちらも「ん」にしか聞こえません。
ジュン
もしかして、日本語は区別しないんですか?韓国語、「アンニョンハセヨ」の「アン」と「ニョン」は違う音ですよ。
アンと…ニョン…??????
さらにここに、先輩留学生のJ(日韓どっちも母語レベル)が登場。日本語で私に革命的なアドバイスをしてくれました。
日本語の「案内」の「あん」と「案外」の「あん」って違うだろ。それだよ。
ほ、ほほーん…?
案内と案外をそれぞれゆっくり声に出してみます。
アンナイ…アンガイ…annai… angai…
あ…!ああああああ!!!!
ち、違う……!
舌の位置が全然違うううううううううう!!!!
anは舌が上顎にべったりついてて、angのときは舌が下の歯茎に当たってるうううう!!!
すごおおおい!天才!!ありがとうーーー!!
日本語で感動と感謝を述べまくる私を見て韓国勢もどよめきます。
何を言ってたかは分からないけど、多分「日本語はanもangもあるのに、区別せずに話しているらしい…意味分からん…」的な雰囲気だったかと。
そして。
an/ang、in/ing、en/eng、on/ong…
ひと通り言わされました。
しかも。
ジュン
今から私が言う音はnとngのどちらか当ててください。「あん」
はい!n!!
サンミン
ぶーー!今のはangでしたー!
知るかああああ!!もういっかい!!
発音の理屈を理解したとはいえ、今までそんな能力は必要のない日本語の世界で生きてきた私が突然聴き取りなんて出来るわけもなく。
え、じゃあさ、これは?
次はこれ!
違うよー!ほら自分でも言ってごらんよ!
楽しそうに次々と問題を出してくる韓国勢。
そしてこの特訓のおかげで私はそこそこnとngの区別が出来るようになります。
悔しいけどありがたい時間。
外国人同士で教え合うなんて、海外留学の醍醐味でもあるのだけど。
でも、私のためを思って練習に付き合ってくれた韓国チームには悪いけど、こんなことに勝ちも負けもないことは分かっていたけど、それでも、いつか絶対勝つ!!と心に誓った瞬間でした。
海外留学には負けず嫌いの精神も大切。
発音(勝手に)日韓戦の第一試合、母音編。
勝者は韓国!!!!
つづく。