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3年に一度の出会い〜小津夜景『いつかたこぶねになる日』

先ほど読みはじめた小津夜景『いつかたこぶねになる日』(素粒社)があまりにも素晴らしく、ふるえている。

タコの話に始まり、『海からの贈り物』へと自然にスライドし、ふいにあらわれた漢詩とその見事な翻訳にノックアウトされて、冒頭の18ページで呆然と立ち尽くしているのが今の状態。

なんだ、このすごい本は。

朝露の粒を集めて編んだような、信じられないほど純度の高い言葉がすーっと沁み込んできて、1行ごとに泣きたくなる。

3年に一度くらい、あまりにも大切な本にばったり出会ってしまう。そのことに気がつくと、心臓がドキドキして、じっとしていられなくなる。

いったん本を閉じ、「どうしよう、どうしよう」と家の中をオロオロ歩きまわり、深呼吸して気持ちを落ち着かせ、もう一度ひらいて読みはじめる。

次々ページをめくりたい衝動と、最後のページを読み終わる瞬間をできるだけ先延ばしにしたい気持ちの、幸福な葛藤。

たぶん、これから何十回も読み返すことになる本だけれど、最初の1回は一度しかない。
(興奮のあまり呂律がまわらなくなっています)

心に刻みつけて読もう。

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