見出し画像

夏着物でお出かけ〜お茶の稽古から「徳川美術館展 尾張徳川家の至宝」展(サントリー美術館)

8月最後のお茶の稽古。

半世紀前、母が着ていた夏着物に、紅葉の名古屋帯を合わせました。

着物の生地はシャリ感のある素材で、おそらく正絹100%ではないのですが、麻にしてはやわらか。
素材は母にもわからないそうですが、きっと、昭和の頃に流行したサマーウールや、化繊と綿や絹の混紡に類する着物ではないかなと推測しています。
いずれにしても、現代ではなかなか出会えない楽しいお着物。大切に着てゆきたいです。

お稽古は水差しや柄杓を使わず、お盆の上で点てる盆点前。
正式なお点前を簡略化した、肩のこらない気楽なおもてなしです。

今日は、めずらしく先生とふたりのお稽古。
先生が点ててくださるお茶はなめらかで、雑味がなくて、身体の疲れや心に引っかかっているあれこれが、すっと引いていくお薬のよう。
お茶のこと、家族のことなどしみじみお話して、幸せな時間でした。

お稽古の後はサントリー美術館で、「徳川美術館展 尾張徳川家の至宝」展を鑑賞しました。

国宝「源氏物語絵巻」をはじめ、尾張徳川家に代々伝わる宝物の数々を東京で観ることができる展覧会。
姫君のお嫁入りのため整えられた豪華絢爛な調度品や、金糸で鳳凰が刺繍された能装束など、贅を尽くした展示品にため息が出ます。

個人的に心惹かれたのは、尾張家の十二代・斉荘が知人、友人とやりとりした短冊や色紙のコレクション『短冊色紙貼交帖「言葉の林」』。
色とりどり、意匠を凝らした料紙に流麗な文字で和歌など書き散らされ、この歌を詠んだのはどんな人物だったのかと想像をふくらませずにはいられません。

展覧会場には、素敵な夏着物、浴衣姿の方々がたくさん。
「わあ、素敵な有松絞りですね! なんて綺麗なグラデーション」
「小千谷ですか? 見ているだけで涼しいです。眼福をありがとうございます」
などと話しかけたくなる衝動をこらえるのが大変でした。
しかし、三歩歩けば和装の方に出会うという頻度で、いくら何でも多すぎる。
六本木では着物が大流行なの?と思い調べてみたら、界隈でお祭りがあったようです。

展覧会場を出て、お隣の不室屋さんでお麩のフレンチトーストをいただきつつひとやすみしていたら、隣の席のご婦人が「暑いのにお着物、えらいわね」と声をかけてくれました。
青森からいらしたそうで、しばし会話が弾み、思いがけず楽しいお茶の時間となりました。
着物はときどき、こうやって主人の代わりに社交をしてくれます。
着ているだけで会話が生まれ、ひとりのお出かけも楽しくなるのです。

お土産は、焼き麩の中にお吸い物の出汁や具をとじこめた、不室屋さんの「宝の麩」
子どもたちの大好物で、「サントリー美術館に行くなら絶対買ってきて!」と毎回頼まれます。
お湯を注ぐと外側のお麩がふやけて、中からあらわれる色とりどりのお麩のお花が楽しいです。


この記事が参加している募集

読んでいただきありがとうございます! ほっとひと息つけるお茶のような文章を目指しています。 よかったら、またお越しくださいね。