可愛いおばあちゃんに、恋焦がれて。
痛い。とにもかくにも、首が痛い。
今朝は、そんな好ましくない目覚めだった。
右に曲げても、左に曲げても首が痛む。
後ろに重心をかければ、ピシーッと大きな稲妻が落ちる。
こりゃいかん。
隣で寝ている夫を叩き起こし、助けを求める。
どうしようもないので、湿布を貼ってほしいと。
数週間前、夫が原因不明の背中の痛みに悩まされていた。頑なに病院に行かないと意地を張る夫。不憫に思った妻は、そこら辺の薬局で湿布を調達してきた。冷たいとかわいそうかと思って、ぬくぬくタイプの温感湿布。
それが、的中。安上がりな治療である。
貼った時のわずかな冷たさをグッと堪えれば、あとは体温に任せて、じわじわと効いてくる。まるで温泉に入ってるかのような錯覚に陥る。(決して危ない妄想ではない。)
先ほどの痛みは何処へ。
こんな良いものを開発してくださった方にお礼状を送りたい、そんな気持ちでいっぱい。
もちろん、湿布を的確な位置に導いてくれた夫にも。
「ありがとう」の気持ちを伝えて。
・・・
夫に湿布を貼ってとお願いすることに、夢もロマンもないなあと反省する一方で、湿布を貼ってもらえる関係っていいなあと思ったりもする。
そう言えば、私の祖母も祖父に湿布貼ってもらってたな、とふと思い出した。
私は、なぜか20歳前後の頃から、無性におばあちゃんへの憧れがある。自分の祖母に限ったことではない。街を颯爽と歩くオシャレなマダムから、よぼよぼと一生懸命に歩くおばあちゃんらしいお婆さんまで。多種多様に、だ。
白髪の綺麗な髪を風にふわふわとなびかせて、
しわくちゃの顔に白いお粉をぽんぽんとはたき、唇に赤い紅をさす。
女性である品格を保ちながら、時折り大胆な愛らしい笑顔を魅せる。これがずるい。
そのくせ、飛んでいる虫なんかを素手で捕まえちゃうくらい、図太くて勇敢で逞しくて。
そんな、おばあちゃんに私はずっと憧れている。
それでそれで、
しわくちゃになったおじいちゃん夫と
手を繋いで公園をデートしたり、畑を耕したり、、、
なんて今からドキドキわくわくで。
・・
10年ほど前、この憧れる想いを友人に話したことがある。
「その前に良い旦那さん見つけて、今を仲良く過ごさなくちゃね。」
と言われた。
ごもっとも!
その当時私は未婚だったし、若者世代をすっ飛ばして、勝手に良い老後ばっかり想像してたもんだから。想像力の果てしなさ、よ。
あの頃から、10年経ったからって、
おばあちゃんになることは到底想像ができない。
雲のうえみたいな、憧れの領域にある。
さらに、10年経てばどうだろうか。
今よりも近づいている気がするのだろうか。
いや、きっと、まだまだなんだろうな。
・
今は、嬉し恥ずかしで貼ってもらった湿布と夫に感謝をしながら、
ただただ毎日を過ごしていく。
そしたら
少しずつ歳を重ねたことを噛み締めて、
深い皺もチャームポイントになるような
可愛いおばあちゃんになっていきたいのです。