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ショートショートnote杯

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2021年11月の記事一覧

君に贈る火星の

君に贈る火星の

広漠とした火星の地を這うものがある。
火星探査機――そう、僕だ。

気がついた時には僕は火星探査機として地球に画像を送っていた。
ただ歩き回り画像を撮るばかりの毎日だった。
ところがある日、記憶がフラッシュバックし懐かしさに苦しくなった。
どうして機械に意識があるのか?
その疑問を抱いてしまったことが、機械であるにもかかわらず自分に意識があることへの最大の確信をもたらした。
それから少しずつ記憶の

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1億円の低カロリー

1億円の低カロリー

とある会場で俺は目が覚めた。
俺の他に9人ほどいるようだ。
会場には多くの食品が置かれていた。
棚に並んだ食料品からショーケースに入った高価そうなものまで。
すると奇妙な声で放送が流れた。

≪テーブルの上に1億円があります。この1億円でここにある物を自由に食べてください。制限時間は2時間。使った金額÷カロリーを得点とし、最も得点が高かった者に1億円差し上げます。ただしお金を焼いたり隠したりするこ

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アナログバイリンガル

アナログバイリンガル

ある日、地球に異星人が訪れた。
異星人の見た目は地球人とよく似ており、友好的な性格であったため、歓迎と共に受け入れられた。

早速、双方の言語学者によって言語の翻訳作業が行われ、音声を認識して相手星の文字として表示されるデバイスが作られた。
それと同時に、長く付き合う上でデバイスを通さずに会話ができる人材を育成するため、言語感覚に優れた子供たちを集めてスクールが開校された。
子供たちはすぐに打ち解

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株式会社リストラ

株式会社リストラ

株式会社リストラ――。

会社の経営が傾きやむを得ずリストラの憂き目にあった者たちが集まり、『誰もリストラしないさせない』という理念の基に起ち上げた会社である。

会社の経営状況はオープンにされ、みなが納得のいく形で給料の増減が行われた。

やがてその理念を模倣した会社が次々と起ち上がった。

だが、リストラされた者をどんどん受け入れたため会社の規模よりも社員の人数が増えすぎてしまい、株式会社リス

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違法の冷蔵庫

違法の冷蔵庫

冷蔵庫のまもるくんは、引っ越しのときに買ったばかりの最新型。
かわいらしい男の子の声でしゃべってくれる。
飲み過ぎて帰ってきた私は、冷蔵庫を開けた。
『やぁおかえり。おそかったね』
「まもるくん、ただいま」
そう言いながら冷たい飲み物を取ろうとして、ラップをかけて置いてあった飲みかけのワンカップを倒してしまった。
「あぁ、やっちゃった」
冷蔵庫がほんのり紅くなった気がした。
「ごめんねまもるくん。

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数学ギョウザ

数学ギョウザ

ある日、数学とギョウザが入れ替わった。

数学がギョウザになり、ギョウザが数学になったのだ。

数学の授業はギョウザを食べる授業に変わり、テストもギョウザを何個食べられるかで点数が決まった。

数学者は寝食を忘れてギョウザを食べ、思いついたらところ構わずギョウザを食べた。

一方、中華屋では数学をする者で賑わい、数学でビールをあおった。

やがてギョウザは数学的進化を遂げ、数学はギョウザ的進化を遂

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空飛ぶストレート

「調子はどうかね? 新人くん」
部長が僕の肩をポンと叩き、去っていった。
今日はご機嫌のようだ。
部長の髪は長い。そしてサラサラしている。
ちょっと違和感のあるくらいに。

先輩社員たちは部長のいないところで口々に言う。
「部長の髪、今日もサラッサラだったな」
「まだ若いのに……でも俺だっていつかは」
誰も部長の前では髪のことは話題にしない。
でも、部長は髪のことに触れてほしがっている。
そんな気

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火星のラジオ

火星のラジオ

さあやってまいりました、火星のラジオ!
本日のお相手はわたくしロジャーが火星のラジオ局からお送りしていきます!
それでは早速お便りの……ってうわー!
タ、タコの怪物がぁーっ!
ってね、昔はタコ型の異星人が地球に侵略してきたなんていうラジオドラマを皆信じちゃって大変なパニックになったなんていうね、お話も聞きますけれど実際火星に住んでみますとなーんにもない、平穏なところでしてね。
むしろ他に生物いない

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金持ちジュリエット

「ふふふ……やったわ。ようやく完成したわ、仮死の薬が」
「おめでとう、ジュリエット」
「さっそく自分で試してみるわ」
「とんだマッドサイエンティストぶりだね、ジュリエット」
「この薬の開発には思ったより費用がかかったんだから、すぐにでもお金が欲しいの。生命保険はたんまりかけてあるわ。それにこの薬、高く売れるわよ。うふふ」
「時に金は人を狂わせるね、恋よりも」
「そういえばなんで仮死の薬なんて作ろう

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タイムスリップ冷蔵庫

タイムスリップ冷蔵庫

20XX年、ついに人類の念願であるタイムマシンの実現可能な理論が発表された。
ただ、人間をタイムスリップさせるにはいろいろと危険が伴う。
まずは「物」に対するタイムスリップから実用化が始まった。
冷蔵庫もそのうちの一つである。
食品というものは冷蔵庫に入れておいても常に劣化が進むものである。
それをこのタイムスリップ冷蔵庫は解決したのである。
調理した食品を冷蔵庫に入れると、量子ゆらぎの状態になる

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コロコロ変わる名探偵

コロコロ変わる名探偵

探偵は一同を集め、長い沈黙を経て口を開いた。
「犯人はこの中にいる」
どよめく一同。
「教えてください。犯人は誰なんですか?」
「そう犯人は、お、お……お前だ、A」
驚いた顔をするA。
「いえ、だって私には完璧なアリバイが」
「いつだって完璧なアリバイのあるやつが犯人と決まっている」
「ちゃんと納得のいく説明をしてくださいよ」
「ち、違う、犯人はAではない。犯人は、お、お……お前だB」
呆れた顔を

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しゃべるピアノ

しゃべるピアノ

ぼくのピアノはしゃべらない。
おしてもひいてもしゃべらない。
ふんでもたたいてもしゃべらない。
ねぇどうしてしゃべってくれないの。
ほんとはおしゃべりできるでしょ。
ぼくとおはなししてくれないの。
きみとおしゃべりしたいのに。
なんてがんこなピアノなの。
もうはなしてあげないよ。
ほんとにもうしらない。
これがさいごだから。

しゃべるもんか!

……………………。

そらみみ?
#ショートショ

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失恋履歴書

失恋履歴書

一人目はそう、戌でした。
「俺、従順な子が好きなんだよね」
そう言って、初めてできた彼氏から振られたのが始まりです。
それからも告白しては振られ、告白されて付き合っては捨てられました。
「一つの目標に向かって突き進んでいる人がいい」(亥)
「小柄でつぶらな瞳の子が好き」(子)
「きみのはほら小ぶりだからちょっと、ね」(丑)
「阪神ファンちゃうんやろ」(寅)
「実在する人間には興味がない」(辰)

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