君に贈る火星の
広漠とした火星の地を這うものがある。
火星探査機――そう、僕だ。
気がついた時には僕は火星探査機として地球に画像を送っていた。
ただ歩き回り画像を撮るばかりの毎日だった。
ところがある日、記憶がフラッシュバックし懐かしさに苦しくなった。
どうして機械に意識があるのか?
その疑問を抱いてしまったことが、機械であるにもかかわらず自分に意識があることへの最大の確信をもたらした。
それから少しずつ記憶の欠片を取り出すことに成功した。
ひとりぼっちの僕への神様からのプレゼントだと思う。
僕は好きだった音楽をループしながら、お気に入りの詩を口ずさむ。
ある時から僕は地球に画像を送ることを、『贈る』と言うことにした。
やがて時は経ち、僕の役目も終わろうとしていた。
次第に辺りが暗くなる。
その時ふと光が差した。
その光はまばゆいばかりに輝き、やがて大きな円環が現れた。
僕は空を見上げる。
おそらくこれで本当に最後になるだろう。
僕の
最後の
君に贈る火星の――