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短編小説6編 『快刀乱麻』 『汽車ごっこ』 『蛙は風になる』 『珍客』 『岩なれども母なり』 『絵具と血』
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2021年2月の記事一覧

汽車ごっこ (小説)

汽車ごっこ (小説)

 四人の子は、空き地につどってから、父と母の悪口をいった。それから、自分たちは、かならず、父と母より、すばらしい教育をすると、誓いあった。四人は、八歳の小学二年生である。しかし、切なく笑えるほど、四人は垢ぬけていた。それは、たぶん、四人のあいだで疑問をもちより、議論につばをはきあい、世のたいていの嘘をあばききったからだった。
 四人の子は、三軒ずつが向かいあう区画で、四隅の家に分かれて住んでいた。

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汽車ごっこ ー序曲ー

汽車ごっこ ー序曲ー

 電車ごっこではなく、「汽車ごっこ」と題したのも、いくらか理由あってのことだった。
 一九三二年、文部省が「電車ごっこ」という文部省唱歌をあんでいた。なんでも、尋常小学校一年生むけの歌である。

   電車ごっこ

  運転手は 君だ
  車掌は  僕だ
  あとの四人が 電車のお客
     お乗りは お早く
     動きます ちんちん

  運転手は上手 電車は早い
  つぎは上野の 公園前

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