『NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版』

心理学者、マーシャル・B・ローゼンバーグの提唱する、NVC(非暴力コミュニケーション)の紹介と事例と具体的なエクササイズがまとめられた一冊。

深刻な暴力的紛争や、政治的な緊張と対立から、夫婦家族間のトラブルまで、双方ともに妥協ではなく満足した合意を実現できるなんて、信じられるだろうか?

しかしこの本を読めば、それが適うことを理解することができる。どうやら人類は、富の所有や格差が発生しつつあった8000年前ほどから、当時の人類に決して悪気はないのだろうけれど、独特の暴力的なコミュニケーション方法を育ててしまったらしい。

信じる正義に反するものには、罰を与え
時に反しなければ、褒美を与え
罪悪感や恥の意識に訴え、従わせ
懲罰やしつけでコントロールする
宗教や道徳や歴史を持ち出し、今ここで起こっていることに目を向けず
他律的(人のせいにして)に振る舞う

自分がそれをしてない思う?なだめすかされ叱られご褒美をもらい罰を受けず一度も評価比較されず自分も人と比べずに大人になった人は少ないと思う。だからこそ一度もそれを使わないわけがない。先祖代々受け継いでいるのだ。

それが、現代において、富の所有や格差やを前提にせず、対立や暴力ではない問題解決をしようとするとき、その独特のコミュニケーション方法は機能しづらいということらしい。戦争もしたくないし、親友を殺したいわけではないし、親子関係をぶち壊したくもないのに、別の方法を知らないとはなんと不幸なことだろう。

ではどうしたら良いか。NVCでは4つのステップがある。

観察、感情、ニーズ(本当に必要としていること)、要求だ。

それらを混同せず、自分と相手に対し、しっかりと自分の責任を引き受け表現する。

例えば
「あなたが挨拶してくれないと、私は無視されたみたいに感じる」
無視されたみたいに感じる、は感情ではない
状況の観察と感情を分けるならば、
「あなたが戸口のところで挨拶をしてくれなかったとき、私は寂しかった」
”してくれなかった”もちょっと依存的な感じがするなら、
「あなたが戸口のところで挨拶をしないで出かけたので、私は寂しかった。出かけるときは声をかけて挨拶をしてほしい」
回りくどいようだけど、責めているわけでも、評価するわけでも、罪悪感に訴えるわけでもなく、率直な表現こそ伝わる。

なぜならば、責められ、評価され、罪悪感に訴えられというノイズが多すぎると、聞き手は、身を守り、反発し、不快な感情に忙しく、要求に気づくことができない。(自分もそうなりませんか?)

こんな風に思う人もいるかもしれない。
”上司にはうんざりしているのに、ここまで自分がやらなくちゃいけないのか?””夫は私の話を聞きやしないのに、なぜ私ばかりが思いやりを持たないといけないの””自分にはできっこない、やりたくもない”

それこそ、難しいメッセージを突き付けられたときの4つの選択肢を思い出すといいだろう。
1.自分を責める(できない自分を責める)
2.相手を責める(もううんざりさせたのは相手)
3.自分の感情と自分が必要としていること(ニーズ)を感じ取る
4.相手の感情と相手が必要としていること(ニーズ)を感じ取る

1も2も心の中で沸き起こっていい。それでこそ3に進むことができる。そして十分に3ができたあとに初めて、4に進むことができるはずだ。

そして自分の本当のニーズに長年蓋をしてきた人には、難しい場合もあるだろうと思う。そんな事例も多く出てくるので、作者のマーシャルに感情とニーズを感じ取ってもらったつもりで、読んでみて欲しい。あなたは政治的緊張で対立する二つの片方にいて、とても怒っている。そのあなたは、マーシャルが問いかけられたことをどう感じるだろう。事例にあるようなことはあり得ないと思うだろうか?あり得ないは、感情ではない。そこにどんなあなたの感情があるだろう。

読みやすく、事例も面白く、コミュニケーションの参考になる実用書としてもおすすめできる。

そして人によっては、自分の人生を取り戻す読書にもなるかもしれない。暴力的なコミュニケーションを手放すことは、自分自身に思いやりと尊敬を与えることだと思うから。



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