プラグマティックな古典文法 3:実戦~英語ではよくやる読解方法だけれど。
まず、日本古典文学を専門にしたい方向けではありません。
あくまで趣味として、古文を読む際に、気軽にお安く習得できる方法です。
この意味でプラグマティック(実用的)としています。
大学受験対策にも使えるかもしれませんけど、高校生が好む方法ではないかも。
わたしは理系ですし、高校生の頃に古文の意義を認識しておらず、国語・古典の授業は数学・物理の内職ばかりしていました。
こういう人が書いています。
古文を読むモチベーションを、あえて書きません。本を読んでいると古文に稀に出会うため、古文を読めるように維持しているだけです。
どのように古文を読み込んでいるのか、専門家さん、大学の日本古典を学ばれた方が、このような記事を書いてくれると嬉しいのだけれど。
の続きです。
いよいよ実戦!読み込んでいきます。
以下で述べる方法は、英語などの外国語の文書を読む際に、使う方法です。
わたしは上記の立場を取ります。わたしたちは現代人であり、ほとんどの方が日本古典の専攻でもなく研究者でもありません。自分にとっての職や専門分野があり、その合間に古典に触れるのであって、「古典」から吸収したい事柄は、日本古典の専門家とは異なります。何から何まで、すべて古文で読むべきだとは考えません。
「源氏物語は原文が美しい。やっぱり原文で読まないと」という人がいます。「そうですか。ではあなたはミケランジェロやラファエロの絵画を見るために世界各地の美術館に行かれるのですね。お時間と資産があって羨ましいです。」とわたしは応えます。
ところで単語帳は?
やらなくてもいいです。ペーバーバックを読むのに、「ペーバーバックのための単語帳」で単語を覚えませんよね。必要になってから実施する。タイミングは自ずとわかるはずです。
用意するもの
まず、読みたい古典作品を限定します。というか、ここまで読まれた方は読みたいと感じている作品を持たれているはず。
わたしは歴史書・説話集・物語を古文で読む必要がない、と考えています。専門家ではないので、物語は現代語で楽しめればいいです。敢えて、辞書をひきつつ、ゆっくりと読まなくてもいいです。
わたしが読みたいのは、徒然草・風姿花伝・和歌(歌物語・歌集)に限られています。
と、人それぞれに古典を読む様々なモチベーションがあります。その動機を尊重して、読みたい作品をひとつ選びます。
買う本
旧版、新装版があります。いずれも古本で格安で入手できます。
旧・新版で内容はほぼ変わりません。外見の違いは、旧版は箱入り、新版の方が紙質がいい、です。刷で細々した修正が入っているかもしれません。
頭注(上部1/3)に注、解説が載っています。
原文が2/3を占めており、意味が捉えにくい箇所には赤字ルビで訳が添えられています。
現代語訳は載っていません。
和歌は頭注に訳(赤字)が載っている場合があります。
『小学館 新編日本古典文学全集』シリーズも有名です。
ただ、頭注(上部1/5)に注、3/5本文、脚注(1/5)に現代語訳の構成。内容は十分ですが、それだけに本がデカイ・重い。
『集成』シリーズは、一般的な小説ハードカバーサイズの四六判で、持ち運びしやすいです。
イメージが湧きませんよね。Googleで「新潮 集成」で検索して、画像検索に切替えてください。メルカリやヤフオクで中身の写真を挙げている方がいます。
現代語訳は?
現代語訳の本を持っていると、現代語訳を読んでしまいます。図書館で借ります。読み進めつつ、上記の「集成」に書き込みします。もちろん現代語訳付きの書籍を所持してもいいです。ただ、有名古典作品はネットでも現代語訳を見つけられます。一周目の副読本としての現代語訳の本です。
角川ソフィア文庫、ちくま学芸文庫より、現代語訳付きの文庫が多く出版されています。比較的近刊が占めており、それだけ新学説を取り込み、それぞれ読み物・解説としても読み応えがあります。「集成」の解説では大家が担当されており、出版当初の1970~80年代の説に留まります。
角川ソフィア文庫
たとえば、『和泉式部日記 現代語訳付き(近藤みゆき 訳・注)』『紫式部日記 現代語訳付き(山本淳子 訳・注)』『徒然草 現代語訳付き(小川剛生 訳・注)』
角川文庫(旧版)では、全訳が掲載されていない場合があります。コンパクトなんですけどね。
ちくま学芸文庫
『更級日記(江國香織 訳)』『源氏物語(角田光代)』など、作家さんによる現代語訳シリーズです。ご存知方も多いでしょう。
過去にもっと豊富な現代語訳のシリーズがありました。しかし、情報がネットに少なく調べにくいのです。図書館のレファレンスの方に探してもらってください。
河出書房『日本古典文学全集』シリーズ
1950年代に出版されていました。井上靖さんが「更級日記」を担当されていたり、と戦後記念碑的な現代語訳シリーズ。いまでも手に取りたい古典作品が多くあります。『日本古典文庫』シリーズとして再版されていました(古本で入手可能)。『徒然草(佐藤春夫訳)』など、いくつかは河出文庫などで入手できます。
このシリーズに収録されている佐藤春夫 訳『徒然草』は、与謝野晶子 訳『源氏物語』と同じく1930年代の非凡閣からの出版が初出のようです。
筑摩書房『古典日本文学全集』シリーズ
1960年代に出版されていました。多くの古典作品を作家が現代語訳しています。「第18巻 宇治拾遺物語」では、福永武彦さん、谷崎潤一郎さんなどが担当されています。『蜻蛉日記・和泉式部日記(円地文子)』など、いくつかは"ちくま文庫"として再版されています。
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