顧客インタビューで成功のヒントを見つけた、マンション事業のブランディング事例
思い出深い仕事の一つとして、マンション事業のブランディングについて振り返ってみようと思います。ブランド名は言えないので、ぼかしながらになること、ご容赦ください。
営業さんに怒られた
開始早々、営業さんから「マンションにブランドなんて要らないんだ!マンションは立地と仕様と価格なんだから。」と恫喝されたことは未だに忘れられません。もちろん、「なにを!(心の中で)」と闘志につながりましたけどね。
始まりのきっかけ
当時は都心回帰の流れがあり、マンション事業者は都心で土地仕入れの競り合いをしていました。当然高い価格で売れるマンションは資金が潤沢となり、土地も強気で購入、クライアントは負け続きという状況でした。
マンションがブランド化していないと土地も買えないという背水の陣で、ご相談にいらっしゃいました。ちなみに余談ですが、こういう背水の陣の時って、ブランディングが上手くいくことが多いです。
最初にしたこと
現状分析という、「今このブランドどうなってんの?」を知るためにあれこれしたのですが、この時は「関係者インタビュー」「現地視察ミステリーショッパー」「競合企業の契約ルーム見学」「マンション購入顧客サーベイ(競合他社も含めて)」などなど、多角的に情報収集をしていきました。
この中でいくつも語れることがあるのですが、特に「関係者インタビュー」と「顧客サーベイ」について取り上げてみたいと思います。長くなるので、今回は「関係者インタビュー」についてをお話しします。
インタビューは宝石箱(や!)
私はプロジェクトの最初に行うインタビューをとても大切にしています。20代半ば駆け出しの経営コンサルタントの時から数えたら、実施したインタビューの数は軽く1,000人は超えていることでしょう。
なぜ大切にしているか。それは、ブランディングのヒント、時には答えがそこにあるからです。
コンサルタントは探偵のような仕事だと常々思っているのですが、なぜなら集めた事実から徐々に仮説を組み立て、さらに情報を集めてその仮説を磨いていくからです。いつも笑っちゃうんですが、自分の頭の中でアタック25のパネルが思い浮かんできます(古すぎます)。
そして、時に突然、「あ、これだ!(ピーン)」とくる瞬間があるのです。
営業さんから大いなるヒントが
この時は、ある営業さんをインタビューしていた時でした。前述のコワモテさんではなく、腰の低い方だったと記憶しています。その方がこう言われました。
「クレームがあり、お客様にお詫びいった際にこう言われたのが忘れらないんですよ。400万で買った車より、4,000万で買ったマンションの方がサービスが悪いじゃないか!と。」
確かに!!!💡💡💡💡💡
確かに!!!!!💡💡💡💡💡💡💡
ここはヒントどころかそのまま答えとして、サービス改善に活用させていただきました。
車と比較してみるとマンションを買うとは、ほぼ一生に一度のお買い物ですよね。そのお買い物を、車ほどにもセレブレーションしていないなんてあり得ないことだったのです。
しかし、当時この会社は(他の会社も似たようなものだったと思います)、契約会などにお客様を呼んで、パイプ机とパイプ椅子の席を手続きで順々に周し、最後に契約書にハンコを押してもらい、そして1,000円くらいのビニールのトートバックをあげてさようなら、という状況でした。
この時に聞いた別のエピソードも忘れられません。多くのお父さんは、ハンコを押す手が震えているというのです😭 それはそうですよね。この方の、このご家族の一生がほぼこれで決まってしまうのですから。。
このようなお話から、何をどう改善していったらいいのかを見つけていくのがインタビューの良さです。「ブランドは現場で起こってるんだ!(また古い)」と、私はいつも頭で連呼しています。
数々の施策を打つ
このように得られたヒントから、そしてそれ以外にも収集した情報をベースに、このプロジェクトでは多くの施策を打ちました。例えば、ブランド名も刷新、ロゴも開発、改善のストーリーをブランドブックに、契約センターも改装し、さらには販売センターのデザインガイドを作り、最終的にはモデルケースとしての販売センターまで作ることとなりました。
ブランドネームの集約=情報効率UP
その中で最初のターニングポイントとなるのが、ブランドネームです。ブランドの始まりはネーミングからとも言われるほど、ネーミング体系は非常に肝です。後戻りもできづらいですから。しかし、ここって意外に無視されてブランディングが始まっちゃってることも多いです。このネーミングについても、追って記事にしていきたいと思います。
この時は、以前5つに分かれていたブランド名を1つに集約し、コミュニケーション効率の向上も目指しました。企業ブランドが弱い上に、事業ブランドも弱いならばいつまで経ってもブランドは上昇していきません。ザルに水を注いでいるようなものです。
当時は「マンション名=ブランド名」という社会認識も弱く、チラシにあるブランドロゴと実際のマンションについているロゴが違ったり、意味もなく川を越えたら価格が安くなるから違うブランド名に…など、セオリーを無視した状況が当たり前の時代でした。
トヨタや日産の車種の多さに対し、BMWやメルセデスはほぼ統一ブランドで打ち出し、あとは記号であることから分かるように、ブランド名は集約した方がコミュニケーション効率が良い場合が多いです(事情により違う場合もありますが)。
冒頭の営業さんの話にも象徴されるように、マンションにブランドなんてという時代だったからこそ、できることも沢山ありました。
今では首都圏では知らない人が居なくなったとも言える某マンションブランドですが、このような地道な努力の積み重ねから始まりました。
次回の内容について
このPJTについてはいくらでも語れるのですが、長くなるので今回はこれくらいにして、次回はさらに大いなるヒントを導き出した「顧客サーベイ調査」について語ってみたいと思います。この時も「あ!!」という瞬間があったのですが、私ま今でも、その時の机の様子、見ていた本、周りの風景が忘れられません。それほど窮地に陥っていた時に見つけたヒントのありがたさを、お伝えしたいと思います。
最初の記事をお読みいただき、ありがとうございました。