誤訳のパターン1 数字
間違っている翻訳、つまり誤訳にはいくつかパターンがある。今日からはそれを紹介していこう。
今日は「間違いといえばこれ」というくらい、スタンダードな誤訳「数字」について2例の訳文を挙げる。
hundreds ofは
Next to the beautiful garden, pathways tunnel through hundreds of torii or shrine gates.
美しい庭園のかたわらには百基の鳥居が建ち並び、中をくぐって通り抜けることができる。
→美しい庭園のかたわらには数百基の鳥居が建ち並び、中をくぐって通り抜けることができる。
hundreds ofは「百」ではない。翻訳者なら誰でも知っている。テストや翻訳会社のトライアルでは、こういうところを間違える人はいない。
だが実際の仕事となると多くなる。納期が厳しいなか、セルフチェックもできずに納品するとこうなってしまうのだろう。
では、次はどうだろう。
「.(ポイント)」と「million」
The company’s annual revenue was just £15.5 million ($22 million; €18 million) shortly before XX acquired it for £130 million in 2015.
2015年、1億3,000万ポンドでXXに買収される直前には、同社の年間収益は155万ポンド(220万ドル、180万ユーロ)にすぎなかった。
→2015年、1億3,000万ポンドでXXに買収される直前には、同社の年間収益は1,550万ポンド(2,200万ドル、1,800万ユーロ)にすぎなかった。
先日も書いたが、「.(ポイント)」と「million」が両方ある数字は間違っている確率がかなり高い。1000人以上の訳を見てきた翻訳校閲者の体感で言うと、5分の1(20%)くらいは間違っている。
こういうのは、翻訳者が自分で(セルフチェックで)拾ってほしいけれど、チェッカー・翻訳校閲者も「うっかり」見落としがちなミスである。
翻訳支援ツールを使っていたら、こういう間違いはあまりないと思う。だが、そうでない場合、とくにpdf原稿を訳出していく出版翻訳ならば「印刷」して確認するのが一番だ。
拡大プリントして蛍光ペンでハイライト、照合
文字が小さい場合には、原稿と訳文を両方、140%くらいに拡大プリントする。原稿と訳文の数字の箇所を蛍光ペンでハイライトしてひとつずつ指差しながら照合していく。これで数字の間違いは激減する。実践しているわたしが請け合おう。