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『完全無――超越タナトフォビア』第十九章
(さてさて、と慣れぬ感じのウインクをかましつつ、ウィッシュに交代するね、ときつねくんは周囲に告げ、聖母マリア様が浮上するように瞳を閉じる。ピクッと背筋を縮めて、ウィッシュボーンは朝明け時の十字路の微風のように唇を開いていく。)
きつねさん、ありがとうございます。
言葉といいますか、文字が世界からなくなってしまったら、この小説の中でウィッシュボーンたちもわきあいあいと愉しむことができませんね。
こんなことを言う時点で、ウィッシュボーンは平々凡々とした犬かもしれませんが。
しかしですよ、きつねさんにしても、このように小説を書いているということは、やはり自分自身で編み出した【理(り)】に対して、反抗期の少年少女みたいに無邪気に、幾分詩情豊かに反逆することもあるということではないでしょうか。
矛盾を抱えつつ生き、謎とたたかいつつ、この作品を究極へと追い込んでいらっしゃるきつねさんという存在は、やはり根っからの詩狐(しぎつね)です。詩を扱うにふさわしい素敵な能力の持ち主なんですよ!
詩をつくる存在者の直観認識力は科学や宗教を超えることだってあるかもしれませんし、そう信じています。
ウィッシュボーンも早く、詩犬(しいぬ)と呼ばれるようになりたいです!
そういえば、この章は「そして」で始まりませんでしたね。
ウィッシュボーンとしたことが不埒な凡ミスをしでかしてしまいました。
その分、きつねさんの思想にとことんまで迫ってゆきたいと存じます。
倍が壊死です! いえ、間違えました。倍返しです!